俺魔王だけど、悪魔の執事に溺愛されてたくさんエッチなことされて美味いもんたらふく食わされてます

第十八話 ニンゲンちゃん飼う！

　セバスチャンに焼きおにぎりの作り方を教えるために、俺も厨房に向かった。

「まず普通におにぎりを作ってくれ。俺も食いたいから二つ」

　セバスチャンが塩おにぎりを握ってくれる。

「それからおにぎりを焼く。フライパンでいいや」

　セバスチャンがおにぎりを焼いている間に醤油と道具を用意する。

「両面にこの刷毛で醤油を塗ってくれ」
「ショウユ……この液体ですか」

　セバスチャンがおにぎりに醤油を塗っていくと、おにぎりに美味しそうな焼き色が付いていく。

「美味しそう……」

　醤油の焼ける匂いだけでじゅるりと涎が出てしまう。

「ふふ。魔王様の食べ物にかける情熱はほんとに可愛らしいですね」

　セバスチャンが微笑ましそうにしている。


　焼きおにぎりが出来たのでニンゲンちゃんのところに持っていく。
　二個のおにぎりをそれぞれ別の皿に載せてセバスチャンがトレーで運んでくれている。

「チチチチ、ニンゲンちゃん！　ご飯持ってきたよ！」
「魔王様、気になっていたのですがその『チチチチ』と言うのは何ですか？」
「チチチチって言うと猫が寄って来るんだよ」
「人間は猫ではありませんよ魔王様」

　ニンゲンちゃんは檻の隅っこに座り込んでいた。
　怖くて震えているのかな。可哀そうにね。

　セバスチャンが焼きおにぎりの載った皿を差し入れ口から牢屋の中に入れる。
　それだけでニンゲンちゃんはびくりと身体を竦ませた。まるで大きな物音を聞いた臆病な猫のようだった。

「さあ、食べて！」
「……」

　ニンゲンちゃんは動かない。
　疑わしげに焼きおにぎりと俺たちとを交互に睨み付けている。
　毒かもしれないとでも思っているのかもしれない。

「しょうがないな。まずは俺が毒見してやるとしよう」

　俺も焼きおにぎりを食べたくて堪らなかった。
　セバスチャンの手料理なのだ、絶対に美味しいに決まっている。

「どうぞ」

　セバスチャンが皿を差し出してくれたので、俺は焼きおにぎりを手に取った。
　それから大きく口を開けて、焼きおにぎりを頬張った。

「ん！」

　焼けた醤油の香ばしい味が口の中に広がる。
　少し硬いお米を噛み締めると甘味を感じる。
　いくらでも食べれてしまう。俺はむしゃむしゃと焼きおにぎりを食べる。
　セバスチャンも俺の食べっぷりに嬉しそうにしてくれている。

　ぐきゅるるるるる。

　不意に大きな音が響き渡った。
　人間の発した音だった。
　見るとニンゲンちゃんは今にも涎を垂らしそうな表情で羨ましそうに俺が焼きおにぎりを食っているのを見つめていた。

「ほら、美味しいから食べな？」

　人間はごくりと生唾を飲む。
　それから恐る恐る牢の中に差し入れられた皿に近づいていく。
　そっと焼きおにぎりを手に取り、匂いを嗅いでいる。ふんふんという鼻息が聞こえてきそうだ。
　ニンゲンちゃんはやっぱりワンちゃんやネコちゃんに似ていると思う。

　匂いを嗅いでみた瞬間、食欲を誘う香りを感じたのか人間はすぐにおにぎりに喰らいついた。
　喉に詰まりそうな勢いでバクバクと食べている。

「う、うまい……！　うますぎる……！」

　人間は涙をぼろぼろ零しながら鳴き声をあげている。
　こんなに喜んでもらえるとご飯をあげた甲斐があったというものだ。
　人間はあっという間におにぎりを食べてしまった。どうやらお腹が空いていたみたいだ。
　おにぎりを食べ終わってしまった人間は名残惜しそうにしている。

「セバスチャン、追加でもう二個くらいおにぎりを作ってきてくれないか。普通の塩おにぎりでいい。水差しとカップも頼む」
「かしこまりました」

　セバスチャンは頭を下げると地下から去っていく。

「ふふ。ご飯もっと持ってくるからね」

　にこりと微笑むと、ニンゲンちゃんは不思議そうなくりくりとした瞳で俺を見上げたのだった。