百合厨な私は『悪役令嬢×クール令嬢』を成就させたいのに攻略男子が邪魔してくる~シンメトリカル・ロマンス

裏乃つむぐ

文字の大きさ
15 / 21

悪役令嬢のしがらみ

しおりを挟む
「…………………………………………」
「ヴェネッサ様」
「……ハッ!」

 ヴェネッサが固まってしまったので、お付きのクール令嬢ノエルが声をかけた。

 いつもヴェネッサは公爵家という権力の傘の元、高飛車たかびしゃな態度でアルフレッド王子につく悪い虫を排除してきた。彼女は、強く出れば虫を追っ払えると思っているのだろうけど、斜め上どころか真逆の答えに思考が追いついていないようだ。

「聞き違いかしら? あなた、何と言いましたの?」
「私のことを叱ってくださいと言いました♡ 私はヴェネッサ様がだーい好きなただの平民で、この学園に来てからヴェネッサ様のことをいつも考えています。あっ、でもごめんなさい。ヴェネッサ様だけじゃなくてノエルちゃんのことも大好きで……ああ、嫉妬しないでください。私は二人のことを平等に愛していますので!!!」

 発言の許可を得た私は水を得た魚のように告白した。ノエルの方を見るとなんか顔が引きつっている。

「…………………………………………」
「ヴェ、ヴェネッサ様!」
「…………ハッ!」

 再びヴェネッサは固まってしまったようだ。聞き違いじゃないことを理解してくれただろうか。ノエルも少し動揺しているようだ。なんでだろう?

「わたくしたちは初対面のはずです。なぜそんな貴方あなたが好意を寄せているのかわかりませんわ」

(あっ、やばい。まだ彼女たちとは初対面だった……何かしらの理由を答えないと)

「えーと……そ、そうです! 初めて見たときに一目惚れしました!! 私はヴェネッサ様とノエルちゃんの美しさに魅了されました! それに、いつも気になっていてこっそり見てたんですよ♡」

 一目惚れしたというよりかはゲームをプレイして好きになったけれど、そんなことは言えないので別の理由を告げるしかない。

 ちなみにこっそり見ていたのは本当だ。

「ヴェネッサ様。この方が見ていたのは事実です。視線を感じたときは大抵この方でした」
「……」

 ヴェネッサはどういう態度を取ればいいのかわからない様子だ。ノエルは……私のことに気付いてたのね。嬉しい。

「……それこそ、なぜアルフレッド様とお話していたのかしら? わたくしのかんさわると思いませんでしたの?」
「そ、それは……」

 ヴェネッサの言う通りで私が好意を寄せているとしたら、アルフレッド王子と話す理由なんてないしむしろ嫌われる行為だ。

 私はゲームのシナリオ通りに進めている。その方が目的を達成できそうだし、一番の理由は安心できるからだ。こういう風に動けばこうなると未来を知っているのならその通りに動いた方が確実だ。

「やはり、嘘をついてらして? だっておかしいもの。女の子が女の子を好きになるなんて……わたくしをだましてまでアルフレッド王子と親密になりたいのかしら?」
「ち、ちが……」

 ヴェネッサたちとこうして会えた私は、もうオレンジヘタレ王子と仲良くなる必要はない。ヴェネッサとノエルが末永くくっついてもらうには王子が邪魔だし婚約破棄して欲しいほど憎たらしい。

 ……ならば、王子を落として、ヴェネッサを擁護ようごするしかない。


「私は……アルフレッド王子がヴェネッサ様に合っていないと思います。だから婚約破棄して欲しいんです! あんなヘタレで、優柔不断で、女の子が苦手で、自分のことを何にも決められない王子と結婚してはダメです!! ヴェネッサ様にはもっと素敵な方がいるはずです。例えばそう、意外と近くにいる方とか……私はアルフレッド王子の方がヴェネッサ様の悪い虫だと思っています!!!」

 私は思い切り心中を吐露とろした。

 ヴェネッサとアルフレッドは実際に上手くいっていない。

 それが彼女の悩みの種となっていることを私は知っている。

 そんな彼女に別の道を提示してあげたかった。

 彼女をそんなから解放してあげたかった。


 しかし。


 しかし。


 パシッ


 私の頭が揺れる。

 じんわりとほおが赤くなり、ヒリヒリとした痛みを感じ出す。

 ……ヴェネッサは私に平手打ちしていた。

 彼女の顔は、怒りというよりも苦々しく辛そうなそんな表情で、目頭には涙が溜まっているように見えた。

 呆気あっけに取られた私に、ヴェネッサは小さな声で吐き捨てる。

「(あの方のことはよくわかっています)」

 ヴェネッサは私を背にして振り返る。

「いいこと、もうアルフレッド様に近づくことは許しません」

 そう言うとそのまま去っていった。ノエルは私を軽蔑けいべつするような目で一睨ひとにらみし、ヴェネッサに付いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...