貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田

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星と月の下で

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カチッ!カチッ!と小気味よい音とともに小さな火花が散る。

火花は真下に置かれた枯葉に着地すると、間もなく小さな炎になった。

そこに小枝を加え、小枝が燃えたら更に太めの枝を上にのせて着火させると夜を照らし温もりをもたらす焚火の出来上がりである。

「よしよし、いい感じね」

フィリアは火打石を懐にしまいながら呟いた。

サドゥーク帝国の宮殿を去ってから1週間。

フィリアは未体験の環境に順調に適応していた。

「だいぶ手馴れてきましたねフィリア様。もう火の番は任せてしまってもよさそうです」

少し離れたところから手頃な木に白馬をつなぎ留めながらアベルが声をかけてきた。

「そうね・・・そういえばもうこの服にも違和感を感じないわ。動きやすくてドレスよりも好みかも」


そう言ってフィリアは服の袖に触れる。

今フィリアが身に着けているのはドレスではなく平民の女性が着るごくありふれたエプロンつきの洋服だった。

出発した翌日にフィリアが着ていたドレスは通りがかった質屋で売り払い、代わりに動きやすさ重視の服を購入していた。


フィリアにろくな財産がなく、さらにアベルが皇帝の『身一つで出ていけ』という言葉を素直に実践したので、2人の旅路はそれなりに金欠だった。

今日も宿に泊まるのは避けて、道から少し外れた場所での野宿。


それでもフィリアは幸せだった。

たとえ贅沢や華美とは無縁でも心通じた相手と一緒にいられることの方が遥かに良い。

(とはいえ西方に到着したら仕事とか住む所とか探さなきゃいけないから忙しくなるでしょうね・・・)

そんなことを思いながら焚火にあたる。

一方でアベルは馬を撫でながら背にのせていた鞍を外している。

その時だった。

「えっ?!」

アベルが素っ頓狂な声をあげる。

フィリアが見ると鞍のヒモがちぎれてバラバラに分解してしまっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻、サドゥーク帝国宮殿では皇帝が私室に設けられたバルコニーから夜空を眺めていた。

酒の入ったグラスを揺らしながらニヤニヤ悪戯めいた笑みを浮かべている。

「陛下、先ほどからどうかされたのですか?」

そばにいた侍女が不審に思い皇帝に問いかけた。

「いやなに、そろそろ仕掛けておいたアレが出てくるころだろうと思ってな・・・」

皇帝はそれだけ言うと、また可笑しそうに唇をゆがめてグラスをあおった。
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