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第三章 鉱山都市マリザン
3-2 ぶらりマリザン
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追加でもう一日、デオルによって安静を言い渡され、あの事件から三日目、ようやくセインは外出の許可が出た。
メイドが用意した衣服が、いかにも貴族御用達だったので、なんとかそれを拒否してシャツとズボンだけ借りることにした。
デオル曰く、セインのために用意したので返してもらっても困る、と結局は押し付けれたが。
――よし、金に困ったときに売ろう!
そんな弟甲斐のないことを思いながら、セインは以前に買ったフードつき上着を羽織った。埃まみれだったが、綺麗に洗ってくれていたらしい。
ちょっと上品そうなシャツも、このアイテム一つで庶民的になるから不思議だ。
髪はそのままだが、この辺りなら、すぐさまロルシー家と結びつけることもないだろう。多種族が行き交う大きな町では、灰色の髪も珍しくはあるがそれなりにいるからだ。
「ここは、少し暖かい土地だな」
ぶらぶらとゆっくり歩きながら、セインは雲一つない空を見上げた。
改めて、行く手に広がる街並みを見回す。鉱山都市として発展しているだけあって、すごく大きな街だ。
なにしろ、膨大にある有力な鉱山の大半が、未開発の洞窟や、岩窟だ。しかも、ハンターギルドがわざわざ買取って、商業化しないものまである。
なので、ロルシー領の鉱山都市マリザンは、新人のハンターの狩場としても有名なのだ。ハンターの憂いの原因の一つである穢れにも、ギルドに併設された診療所で対応できるので、至れり尽くせりである。
「すごく発展してるし、活気があって……拠点としては言うことなしだな」
大通りにはいろいろな店が並び、人々が忙しなく行き交っていた。
種族としては人間が多いが、もともとロルシー領の平民の大半は人間なのだから当然だ。そして人間の社会では、奴隷として獣人を労働力として置いていることが多いので、獣人の姿もちらほら見える。
大抵はどこかの家に仕えているが、ハンターの中には獣人も多い。このあたりで獣人が、身を立てることができる数少ない方法である。
実際に、あの騎馬護衛の二人も、ハンターギルド所属だった。
「お昼が近いからか、飲食店はどこも満員だな。あっ、そうか。かえってギルドは空いてたりするか」
そう思い立ったセインは、お昼は後にして、デオルに聞いたハンターギルドへの道に足を向けた。途中、何度となく美味しそうな匂いに引き寄せられそうになりながら、大きな建造物の前に立った。
「うちの屋敷とくらべると小さいが、なんだか建物の質が違うな」
木造でもなく、石造りでもなく、のっぺりとした建物だった。窓がいくつかあったが、屋敷にあったようなガラスは嵌められておらず、ものすごく風通しがよさそうだった。
――温暖な地域だから、かな? もっとも、ガラスが高価だからかもしれないが。
貴族や、大きな商家の屋敷には、窓にはガラスが嵌っているが、一般的な家の場合はあまり見かけない。ガラスは鉱物からとれる貴重な材料で作るため、目が飛び出るほど高いのだ。
大きく開けられた扉もない入り口を進むと、そこは食堂のようにテーブルがいくつかあり、その先にカウンターが設置されていた。二か所あるうちの一つには、酒場のように木製カップや皿などが置いてあり、いまは人がいない。
もう一つの方は、いくつかの窓口があり、今も数人のハンターらしき人達の対応をしている。
セインは空いている窓口へと行き、そこで書類に目を通してたらしき女性に声を掛けた。
「……デオル・ロルシーの紹介で来ました、よろしいですか?」
その声に気が付いたのか、落ちてきた前髪を中指と薬指で掬い上げるようにして、髪の長い若い女性が顔を上げた。いつものようにカウンターの上を見て、あれ? という顔で左右を確認する。
「あっ、こっちです。この指輪のことで……」
ちょっと恰好つかないが、セインはカウンターから顔が全部出ないので、腕を目一杯上げて例の指輪を見せた。
「デオ……ル? えっ、あ……あっ、はい! 伺っております、はい。セイン・ロ………」
「わっ、あの、声が大きいから! それに、セインとだけ呼んでください」
目立つのは、正直なところ勘弁願いたかった。これ以上の面倒ごとは、ほんとにお腹いっぱいだった。
この件を解決したら、もう絶対、金輪際、余計なことに首を突っ込むのはやめようと、決意を新たにしてきたのだ。普通にハンターとして鉱山探索することだけに集中しようと。
もっともゆらは、こっそりため息をついて小さく首を振っていたけれど。
メイドが用意した衣服が、いかにも貴族御用達だったので、なんとかそれを拒否してシャツとズボンだけ借りることにした。
デオル曰く、セインのために用意したので返してもらっても困る、と結局は押し付けれたが。
――よし、金に困ったときに売ろう!
そんな弟甲斐のないことを思いながら、セインは以前に買ったフードつき上着を羽織った。埃まみれだったが、綺麗に洗ってくれていたらしい。
ちょっと上品そうなシャツも、このアイテム一つで庶民的になるから不思議だ。
髪はそのままだが、この辺りなら、すぐさまロルシー家と結びつけることもないだろう。多種族が行き交う大きな町では、灰色の髪も珍しくはあるがそれなりにいるからだ。
「ここは、少し暖かい土地だな」
ぶらぶらとゆっくり歩きながら、セインは雲一つない空を見上げた。
改めて、行く手に広がる街並みを見回す。鉱山都市として発展しているだけあって、すごく大きな街だ。
なにしろ、膨大にある有力な鉱山の大半が、未開発の洞窟や、岩窟だ。しかも、ハンターギルドがわざわざ買取って、商業化しないものまである。
なので、ロルシー領の鉱山都市マリザンは、新人のハンターの狩場としても有名なのだ。ハンターの憂いの原因の一つである穢れにも、ギルドに併設された診療所で対応できるので、至れり尽くせりである。
「すごく発展してるし、活気があって……拠点としては言うことなしだな」
大通りにはいろいろな店が並び、人々が忙しなく行き交っていた。
種族としては人間が多いが、もともとロルシー領の平民の大半は人間なのだから当然だ。そして人間の社会では、奴隷として獣人を労働力として置いていることが多いので、獣人の姿もちらほら見える。
大抵はどこかの家に仕えているが、ハンターの中には獣人も多い。このあたりで獣人が、身を立てることができる数少ない方法である。
実際に、あの騎馬護衛の二人も、ハンターギルド所属だった。
「お昼が近いからか、飲食店はどこも満員だな。あっ、そうか。かえってギルドは空いてたりするか」
そう思い立ったセインは、お昼は後にして、デオルに聞いたハンターギルドへの道に足を向けた。途中、何度となく美味しそうな匂いに引き寄せられそうになりながら、大きな建造物の前に立った。
「うちの屋敷とくらべると小さいが、なんだか建物の質が違うな」
木造でもなく、石造りでもなく、のっぺりとした建物だった。窓がいくつかあったが、屋敷にあったようなガラスは嵌められておらず、ものすごく風通しがよさそうだった。
――温暖な地域だから、かな? もっとも、ガラスが高価だからかもしれないが。
貴族や、大きな商家の屋敷には、窓にはガラスが嵌っているが、一般的な家の場合はあまり見かけない。ガラスは鉱物からとれる貴重な材料で作るため、目が飛び出るほど高いのだ。
大きく開けられた扉もない入り口を進むと、そこは食堂のようにテーブルがいくつかあり、その先にカウンターが設置されていた。二か所あるうちの一つには、酒場のように木製カップや皿などが置いてあり、いまは人がいない。
もう一つの方は、いくつかの窓口があり、今も数人のハンターらしき人達の対応をしている。
セインは空いている窓口へと行き、そこで書類に目を通してたらしき女性に声を掛けた。
「……デオル・ロルシーの紹介で来ました、よろしいですか?」
その声に気が付いたのか、落ちてきた前髪を中指と薬指で掬い上げるようにして、髪の長い若い女性が顔を上げた。いつものようにカウンターの上を見て、あれ? という顔で左右を確認する。
「あっ、こっちです。この指輪のことで……」
ちょっと恰好つかないが、セインはカウンターから顔が全部出ないので、腕を目一杯上げて例の指輪を見せた。
「デオ……ル? えっ、あ……あっ、はい! 伺っております、はい。セイン・ロ………」
「わっ、あの、声が大きいから! それに、セインとだけ呼んでください」
目立つのは、正直なところ勘弁願いたかった。これ以上の面倒ごとは、ほんとにお腹いっぱいだった。
この件を解決したら、もう絶対、金輪際、余計なことに首を突っ込むのはやめようと、決意を新たにしてきたのだ。普通にハンターとして鉱山探索することだけに集中しようと。
もっともゆらは、こっそりため息をついて小さく首を振っていたけれど。
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