晴明、異世界に転生する!

るう

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第三章 鉱山都市マリザン

3-6 指輪

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 マリーは、セインの許可のもと独房の鍵を開けた。
 まだコウキを手に持ったままの少女は、一度下がって慌てて跪いた。

「コウキをありがとう」

 まるで捧げるようにして持っていたコウキを、セインはお礼を言って受け取った。コウキはその腕をよじ登っていつもの肩に落ち着くと、ぶるぶると身体を震わせて火の粉を飛ばしている。
 
 ――熱くはないんだけど、周りの人が驚くのでやめてほしい……。

 案の定、マリーや看守はちょっと引き気味でこちらを見ている。
 少女の方はというと、ぽかんとしたまま顔を上げていたが、セインが視線を戻すと慌ててうつ向いた。

「僕のこと、覚えてる? 一応、君の所有者ってことになっている」

 少女は、コクコクと何度も頷いた。

「覚えてる……助けてくれた、人だから」

 ――ん? 助けたって……、取っ組み合いになったんだけど。

 セインは一瞬首を傾げたが、すぐに何時のことを言っているのかわかった。出発する前、あの商人にムチで打たれているのを助けて、穢れを祓ったことを言っているのだ。
 穢れ者になりかけた辺りは、おそらく記憶が飛んでいるのだろう。

「ま、そんなわけで……と」

 冷たい床にいつまでも跪かせているのも何なので、セインは少女の腕を掬うようにして、ひょいっと持ち上げて、そのまま立たせた。
 それほど力持ちでもないセインでも、軽々と持ち上げられるほど少女は小さかった。

「あ、あ? え、あの」

 慌ててまた座ろうとするので、そのまま両手を掴んで、少し屈んで目を合わせる。どうしていいかわからず戸惑う彼女に、セインはそっと手を放して、人差し指の指輪を見せた。
 彼女はその動作に、思わずビクッと肩を震わせる。
 咄嗟に胸の前で組んだ手が、白く血の気がなくなるほど力が入っていた。指輪には、奴隷の行動を制御、すなわち行動を制止するための魔法が仕込まれている。

「とりあえず僕が、指輪の持ち主ってことで、いい?」
「……あ、…………え?」

 奴隷に許可を取る主人など普通はいない。
 先ほどコウキを渡した時も、セインに礼を言われて呆然としたが、今回も彼女は負けず劣らず驚き戸惑って、口を開けたまましばらく固まってしまった。

「ええと、僕ってまだ未成年なんだよね。だから、当面は仮扱いなんだけど、君さえよければ僕と一緒に来ないか、ってこと」

 あの時のちょっとしたおせっかいが、まさかこんな結果になろうとはセインも思いもよらなかった。
 簡単に彼女を自由にようと考えていたわけだが、彼女は自分の名前さえわからない、まだ保護者が必要な小さな女の子だった。
 それならもう毒を食らわば皿まで、といった気分でセインは受け止めることにした。

「い……い……く」

 胸の前で手を組んだままの少女は、聞き取れないほどの小さな声で答えた。
 最初は状況がつかめなかったようだが、やっと意味が分かったのか、少女は思わず泣き出しそうな顔をした。ずっと、怖くて寂しかったのだろう、そして誰に買われるのか不安で仕方がなかったに違いない。

「行く……、行きます、行きたい」

 思わず身を乗り出すように言って、すぐにうつ向いて何度も頷いた。コウキが飛び乗って、彼女の頭の上をぴょんぴょん飛び跳ねている。

 ――まあ、コウキとの相性もいいみたいだし。

 もっともあの態度をみると、コウキは子分が出来たとでも思っているのかもしれない。
 正式にハンター登録をすれば、セインが未成年でも奴隷の所有はできる。そして、ハンター付きの奴隷は、犯罪奴隷でも、準ハンター登録ができる。
 その後、貢献度と贖罪ポイントを積んでいけば、犯罪奴隷からも解放できるだろう。
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