晴明、異世界に転生する!

るう

文字の大きさ
45 / 137
第三章 鉱山都市マリザン

3-7 花

しおりを挟む
「……すみません、兄上。結局、引き取ることになってしまって」

 屋敷に帰ってきて、まず奴隷の少女をメイドたちに預けた。なにしろ髪の毛は埃で固まってるし、肌は正常なターンオーバーがされてないのか、ガサガサのうえ、場所によっては皮膚がめくれている。
 小さな手の爪も、戦闘の際にはがれたり折れたりしていた。下手をすると指の形や、爪の形が悪くなる。戦闘奴隷としても、いいことはなにもない。
 風呂に連れていかれる猫のごとく、慌てふためく彼女をちょっと可哀そうに思ったセインだったが、少なくともこの屋敷に入れるには、あんな恰好のままにしておくわけにもいかない。

「仕方がないね。もっとも、君が奴隷を持つこと自体には反対しないよ。お付きの召使いを失ったって聞いたし、ここにいる間も護衛は必要だしね」

 彼女を護衛として側に置く気はなかったが、セインは特に反論せずに頷いた。

「ありがとうございます。今日はいろいろあってハンター登録ができなかったので、明日改めて行ってきます」

 デオルへの報告を終えると、セインは客間へと戻った。
 この屋敷で、セインが与えられた部屋である。豪華すぎて落ち着かなかったが、今はありがたく使わせてもらっている。
 すると、しばらくして扉がノックされた。メイドが少女を連れて戻ってきたのだ。

「ご苦労様、もういいよ」
「こちらは、お手荷物でございます」

 彼女が身に着けていたものらしく、花の模様の書かれた髪留めだった。あのぼさぼさの髪と、大きな角に隠れて見えなかったのだろう。メイドを下がらせると、受け取ったそれを見た。

 ――花、ちょっと桔梗に似てるな……それが三つ並んで……何かの意匠のようだが。いや、ただの飾りかな。

「桔梗は紫の花だが、この髪飾りは銀色だから、色はわからないな。あれ、これって髪飾りじゃなくて、ひょっとして……」

 少女はちょっともじもじしながら、そこに立っていた。
 質素ではあるが、薄い藤色のワンピースを身に着けていた。髪も綺麗に切りそろえられていた。短いところがあったりとめちゃくちゃな切り方だったのが、可愛いショートカットになっていた。

「これ、角飾りだね」

 少女は、コクリと頷く。

「前の、その前のご主人様、これ隠しておけって、私が攫われた時、持ってたものだって」

 商人の前の主人は、寂れた大きな屋敷に住む老人だったらしい。まだ乳飲み子だった彼女を奴隷としてではなく、肉親のように育ててくれたが、六年ほど前に亡くなったとのことだ。その際、その角飾りを見つからないように持っておくようにと言われたらしい。
 老人の意図はわからないが、ともかく彼女に害意があった人ではなかったようだ。

「つけてあげるよ、そこに屈んで」

 とっさにに跪こうとするので、セインは彼女の手を引いてソファーに座らせた。留め金らしきものはなかったが、ゆるくカーブになっているところを角に沿わせてみた。

「あれ、ちょっと緩いかな……えっ、わっ?」

 すると、金属がぐにゃっと曲がって角にピッタリと嵌った。少しではあるが、妖力が抜けるような感覚があったので、もしかしたら魔力などに感応する金属なのかもしれない。

「そうか桔梗か、ムラサキ……長いな、サキかな。ちょっとこの辺じゃない名前だけど……」
「サキ……?」
「名前だ、今日から君の名前はサキだ」

 ぼーっとした顔でこちらをみているので、嫌なのかと思っていたらぱっと笑顔がはじけた。

「サキ! ありがとうございます、ご主人様」

 セインは、少女の本当の笑顔を始めて見たような気がした。ちょっと驚いた顔をしたセインに、何を勘違いしたのか、彼女はソファーから飛び上がるように立ち上がり、そのまま床に膝まづいた。

「す、すみま……申し訳ありません、お、大きな声を……」

 ――まずは、これを辞めさせないとな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない

戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――! 現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、 中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。 怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として 荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。 だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、 貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。 『良領主様』――いや、『天才王子』と。 領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、 引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい! 「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく! ――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚! こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています 是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

超能力者なので、特別なスキルはいりません!

ごぢう だい
ファンタジー
 十歳の頃に落雷の直撃を受けた不遇の薫子は、超能力に目覚める。その後十六歳の時に二度目の落雷により、女神テテュースの導きにより、異世界へ転移してしまう。ソード&マジックの世界で、薫子が使えるのは超能力だけ。  剣も魔法も全く使えない薫子の冒険譚が始まる……。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。 ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。 そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。 しかも精霊の力に満たされた異世界。 さて…主人公の人生はどうなることやら。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

処理中です...