晴明、異世界に転生する!

るう

文字の大きさ
95 / 137
第五章 拠点

5-12 穀倉帯

しおりを挟む
 鉱山都市マリザンは、その街の外に大きな穀倉帯を持つことで知られている。
 たくさんの鉱山の発見により、近年は鉱山都市として有名になったが、それより以前は、主に農業により発展した複数の村の大集落だった。
 穀倉帯は、鉱山都市を囲む塀からずっと先、一番近い関所あたりまで続いている。収穫期には普段は討伐専門のハンターまでが駆り出され、それが季節の風物詩にもなっていた。
 都市内の集落にも畑や果樹園はあるが、それらは個人の財産であり農作物だ。けれど、穀倉帯の収穫物は、鉱山都市マリザンのものなのだ。
 そのため穀倉帯を統べるのは、当然ながら都主であるデオルだが、過去の大集落から脈々と受け継がれ、今もなお穀倉帯を含む集落を守る首長には、デオルでさえも敬意を示す相手なのである。

『あの双子は、ずいぶん傍若無人に振る舞っておったそうじゃな』
「……そうだね」

 腕を組んだツクの呆れ声に、セインも苦笑いするしかない。
 依頼を受けるつもりなら、その辺りのことを調べていかない方がおかしい。そもそも、自領の、しかも兄が治めている街のことだというのに。

「まあ、あんな二人でも、札づくりや術使いとしては優秀らしいけど……」

 実際に成人も早かったらしく、すぐにもデオルに次ぐ実力者になると、期待もされていたようだ。

『蓋を開けりゃ、問題ばっかおこして自宅謹慎の連続ってか』

 テンがそう言いながら、にやりと悪ガキのように笑う。
 お前が言うか、という視線を全員から受けながらも、テンはすぐに興味を失ったように、猫じゃらしのような草でハクにちょっかいを掛けている。

「姉上とルチアはしばらく帰ってこない、ウーセまで遠征中……で、結局僕のところに戻ってきたというわけだ」

 もとはといえば、セインに任せるつもりだったということだが、あの時とは状況がぜんぜん違う。双子がこれでもかと好き勝手にかき回してくれた後始末がおまけについてくるのだ。
 せっかく完成した別館を堪能する前に、またもや旅に出る羽目になって、セインも少しだけ憂鬱である。

『セイン様、ゆらにお任せください! 今からでもあのうつけ二人にお仕置きしてまいりましょう』
「いや……」

 セインは小さく笑って。

「ほっとけばいいよ。ゆらがしなくても、今頃たっぷりお仕置きされてるから」

 何といっても、今回やらかした失敗は冗談では済まされない。他領への交易優位性を保つための輸出に加え、領地の胃袋のほとんどを、あの穀倉帯が支えていると言っても過言ではないのだ。
 余談だが、穀倉帯の見回りや、稀に発生するモンスターの討伐は、職にあぶれたハンターの貴重な収入源にもなっている。だからこそ常に十分の数のハンターを確保でき、鉱山トラブルなどの大討伐にも人材不足になったりしないという利点さえあった。
 そんな街を支える穀倉帯の守り神、守護樹をあられもない姿にしたのだ。
 双子を見るに、あまり反省している様子ではなかったが、普段は誰にでも優しいデオルとはいえ、とっておきのお仕置きをしてくれるに違いない。
 そしてセインは、哀れな双子の兄の末路を見ることなく、大急ぎで準備を済ませると屋敷を後にした。
 数か月前に訪れたマリザン。農地や果樹園がある集落はもちろん、その壁の向こうの穀倉帯にはまったく足を踏み入れていなかったので、ほとんど初めての場所といっていいかもしれない。
 守護樹。
 ある程度ならモンスターを近づけず、穢れが原因の病気や、呪いさえも防ぐと言われている。
 だからこそ、儀式を伴う祭事、正式の穢れ払いが重要だった。
 守護樹はあらゆる穢れを避けているわけではなく、その身に引き受けてくれているのだ。それをきちんと清浄な状態に戻してあげるのが、本来の穢れ払いのお仕事というわけである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない

戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――! 現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、 中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。 怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として 荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。 だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、 貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。 『良領主様』――いや、『天才王子』と。 領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、 引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい! 「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく! ――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚! こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています 是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

超能力者なので、特別なスキルはいりません!

ごぢう だい
ファンタジー
 十歳の頃に落雷の直撃を受けた不遇の薫子は、超能力に目覚める。その後十六歳の時に二度目の落雷により、女神テテュースの導きにより、異世界へ転移してしまう。ソード&マジックの世界で、薫子が使えるのは超能力だけ。  剣も魔法も全く使えない薫子の冒険譚が始まる……。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。 ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。 そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。 しかも精霊の力に満たされた異世界。 さて…主人公の人生はどうなることやら。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

処理中です...