115 / 137
第六章 守り神
6-20 初めての国外へ
しおりを挟む
慣れない潮の香り、より近く感じる照り付ける太陽。
なにより、とんでもない人の数に圧倒された。
「国境を越えてすぐだから、距離的には近いはずだけど、本当に外国って気がするね」
セインたちは、隣国ピスコ王国の港町マリンに来ていた。国境を越える許可が下りるまでの時間、通信にてマリザンの穀倉帯の現状の連絡を受けた。あれから無事ウーセが到着して、穢れ払いの式典が行われたという。
本当の意味で解決はしていないが、守護樹は呪い状態からは解放され、なんとか収穫まで持ちそうとのこと。
ただ守護樹に無理をさせたままだし、このままでは次の種は植えられない。
引き続き調査をするように、とのことだった。
ちなみに、この世界の遠距離通信は、早馬と伝書魔鳥が使われている。王侯貴族のみが使える、上位魔獣クラスの魔核を使った通信魔具もあるが、ロルシー侯爵家でも、当主のみが限定的に使える代物だ。
そこでセインは、式神を使った通信の術をこの世界に合わせてアレンジした。簡単に言えば手紙を紙飛行機で飛ばすような仕組みで、ある程度の妖力があれば作ることが出来る。
ただし、決まった相手にしか読めないようロックしたり、より遠くへ飛ばすのには、それなりの妖力や技術がいるので、穢れ祓いの札と同じように、修業と訓練が必要だった。
セインは、こういう繊細な術こそ得意分野なので、いろいろ改良するのは楽しかった。余談ではあるが、この通信の技法と、使いきりの汎用式神は、のちにロルシー家の新たな稼ぎ頭となった。
貴重な魔核や、魔獣の管理、飼育が必要ないので、庶民にも手軽な通信手段として瞬く間に浸透することになる。もちろん文書の量や、秘匿性など、使用する式神によりピンキリとなるので、重要な秘密文書などには、これまで同様、魔核を使った通信は必要となるだろう。
ともかくそれは、少し先のことだ。今現在、式神を使えるのは直接伝授した家族のみである。
「よし、とりあえずの心配事は一つ減ったな。でも、それほど猶予がないのも事実だね」
『そうじゃな、このままでは収穫のあとの土地の滋養も不十分じゃ。来期の収穫に確実に影響するからの』
ツクの言葉に頷いて、セインは改めて港町を眺めた。
とにかく潮の香がものすごい。内陸育ちのセインはちょっと慣れないが、人々に活気がある雰囲気はとても気分が上がる。
「ここはそれほど大きな町じゃないけど、確かハンターギルドや商業組合の支部があるって言ってたな」
町の大きさは、オアシスの町フラムとそれほど変わらない。けれど、ここは各地への玄関口でもあり、また鉱山都市を有するロルシー領への入り口にもなっているため、ハンターや旅商人たちが行き交う活気ある港町でもあった。
ピスコ王国は、この港町から肉眼でも見える位置にある大きな島に王都を置く海洋国家である。帝国の属国になるという条件で、この港町を所有することを許されているのだ。
『この港の海底のどこかに、こけら族の集落への道があるのですね』
ゆらが、ふわふわと海の方を眺めて浮いている。彼女にとって、海は属性と深い関わりを持つので、特別に感慨深いのだろう。
「まあ、すべてが噂程度の情報だけどね。ともかく今は、こけら族のことより、ここに拠点を置く準備をしよう」
周りにはゆらの声は聞こえないので、ほとんどセインの独り言のように聞こえただろう。そして、そんな何気ない言葉に、群衆のひとりが小さく反応した。それは、雑踏のほんのささやかな動きで、実際にセインが気が付くことはなかった。
唯一、セインのフードからコウキがぴょこっと顔出し、身体を伸ばして首に巻きついていたハクも頭を出して、二匹が同時に小さく首を傾げただけである。
なにより、とんでもない人の数に圧倒された。
「国境を越えてすぐだから、距離的には近いはずだけど、本当に外国って気がするね」
セインたちは、隣国ピスコ王国の港町マリンに来ていた。国境を越える許可が下りるまでの時間、通信にてマリザンの穀倉帯の現状の連絡を受けた。あれから無事ウーセが到着して、穢れ払いの式典が行われたという。
本当の意味で解決はしていないが、守護樹は呪い状態からは解放され、なんとか収穫まで持ちそうとのこと。
ただ守護樹に無理をさせたままだし、このままでは次の種は植えられない。
引き続き調査をするように、とのことだった。
ちなみに、この世界の遠距離通信は、早馬と伝書魔鳥が使われている。王侯貴族のみが使える、上位魔獣クラスの魔核を使った通信魔具もあるが、ロルシー侯爵家でも、当主のみが限定的に使える代物だ。
そこでセインは、式神を使った通信の術をこの世界に合わせてアレンジした。簡単に言えば手紙を紙飛行機で飛ばすような仕組みで、ある程度の妖力があれば作ることが出来る。
ただし、決まった相手にしか読めないようロックしたり、より遠くへ飛ばすのには、それなりの妖力や技術がいるので、穢れ祓いの札と同じように、修業と訓練が必要だった。
セインは、こういう繊細な術こそ得意分野なので、いろいろ改良するのは楽しかった。余談ではあるが、この通信の技法と、使いきりの汎用式神は、のちにロルシー家の新たな稼ぎ頭となった。
貴重な魔核や、魔獣の管理、飼育が必要ないので、庶民にも手軽な通信手段として瞬く間に浸透することになる。もちろん文書の量や、秘匿性など、使用する式神によりピンキリとなるので、重要な秘密文書などには、これまで同様、魔核を使った通信は必要となるだろう。
ともかくそれは、少し先のことだ。今現在、式神を使えるのは直接伝授した家族のみである。
「よし、とりあえずの心配事は一つ減ったな。でも、それほど猶予がないのも事実だね」
『そうじゃな、このままでは収穫のあとの土地の滋養も不十分じゃ。来期の収穫に確実に影響するからの』
ツクの言葉に頷いて、セインは改めて港町を眺めた。
とにかく潮の香がものすごい。内陸育ちのセインはちょっと慣れないが、人々に活気がある雰囲気はとても気分が上がる。
「ここはそれほど大きな町じゃないけど、確かハンターギルドや商業組合の支部があるって言ってたな」
町の大きさは、オアシスの町フラムとそれほど変わらない。けれど、ここは各地への玄関口でもあり、また鉱山都市を有するロルシー領への入り口にもなっているため、ハンターや旅商人たちが行き交う活気ある港町でもあった。
ピスコ王国は、この港町から肉眼でも見える位置にある大きな島に王都を置く海洋国家である。帝国の属国になるという条件で、この港町を所有することを許されているのだ。
『この港の海底のどこかに、こけら族の集落への道があるのですね』
ゆらが、ふわふわと海の方を眺めて浮いている。彼女にとって、海は属性と深い関わりを持つので、特別に感慨深いのだろう。
「まあ、すべてが噂程度の情報だけどね。ともかく今は、こけら族のことより、ここに拠点を置く準備をしよう」
周りにはゆらの声は聞こえないので、ほとんどセインの独り言のように聞こえただろう。そして、そんな何気ない言葉に、群衆のひとりが小さく反応した。それは、雑踏のほんのささやかな動きで、実際にセインが気が付くことはなかった。
唯一、セインのフードからコウキがぴょこっと顔出し、身体を伸ばして首に巻きついていたハクも頭を出して、二匹が同時に小さく首を傾げただけである。
0
あなたにおすすめの小説
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。
さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。
聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。
だが、辺境の村で暮らす中で気づく。
私の力は奇跡を起こすものではなく、
壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。
一方、聖女として祭り上げられた彼女は、
人々の期待に応え続けるうち、
世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。
超能力者なので、特別なスキルはいりません!
ごぢう だい
ファンタジー
十歳の頃に落雷の直撃を受けた不遇の薫子は、超能力に目覚める。その後十六歳の時に二度目の落雷により、女神テテュースの導きにより、異世界へ転移してしまう。ソード&マジックの世界で、薫子が使えるのは超能力だけ。
剣も魔法も全く使えない薫子の冒険譚が始まる……。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~
九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。
ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。
そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。
しかも精霊の力に満たされた異世界。
さて…主人公の人生はどうなることやら。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる