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第七章 海への道
7-4 宿屋にて
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ギルドで紹介された宿屋に向かう道すがら、この町の札の流通状況を確かめた。
「おかしいな、ここまで流通が滞るなんて」
ハンターギルドには、プロ用の高額な札はそこそこ揃えられていたものの、一般向けの札は、雑貨屋、武器防具屋、はては商業組合まで、購入における枚数制限、または品切れになっていた。
稀にではあるが、転売されたと思しき代物が、露店で倍額ほどの価格で平然と売られていた。帝国なら、もちろんその場で捕まり、転売業者への罰はもちろん、横流した者は容赦なく市民権が奪われるだろう。どうやら他国では、それほど厳しく取り締まってはいないらしく、そのため度々札の過剰流通や、逆に今回みたいな不足するような事態になったりもするようだ。
ちなみに、商業組合に加入している店舗は、決められた価格以上で販売すると一発アウトで、これは共通事項のようである。
『正規品じゃない札は、たくさん見たよな』
頭の後ろで手を組み、きょろきょろと辺りを見学しながらテンが皮肉たっぷりで呟いた。
「質、悪い札、以前からよくある。けど、ここのはなにか、変……」
粗悪品を何度も使われた本人として、サキは札に対する知識はなくとも感覚でわかるのだろう。
もちろん、能力者ではない者が作成した何の効果のない偽物も問題だ。けれど、それよりも質が悪いのは、中途半端な能力者による見掛け倒しの似非札や、使用限度を超えた呪い札である。
『そうじゃな、効果がないだけならまだしも、どんな作用が起こるか分らんのが厄介じゃからの』
今回の調査は飽くまで守護樹復活がお題なので、札のことをそこまで掘り下げて調べる必要はない。それでも、家業に関わることなので、なにかわかったら報告しておいた方がいいだろう。
セインは紹介された宿屋に着くと、一週間ほどの滞在する旨を伝え、やっと落ち着くことが出来た。
「やっぱり魚料理が多いんだな」
お腹がすいていたセインは、さっそく宿屋で食事を頼んだ。
白身魚を揚げ煮したような料理と、ハーブで黄色く色づけされたご飯が提供された。思ったより少しスパイシーではあるが、魚料理はセインの口に合った。器用に箸で骨をよけながら、ほろほろの柔らかい身を、慣れた手つきで口に運ぶ。
ちなみにこの世界では、フォークとスプーンで食事を取ることが多いが、地域によっては箸もよく使われる。この港町では、外国人も多いので、フォークや箸など臨機応変に使われるようだ。
「お兄さん、帝国の人のようだけど、箸の使い方上手だね」
宿屋の女将は少女のように年若い女性だった。年齢こそ聞かなかったが、十五歳にもなる息子がいるというのだから、それなりに年齢はいっているはずだ。
「家では箸を使ってたから、慣れてるんだ」
最近まで過ごしていたボロ屋での二年間、当然ながら屋敷で使っていた銀のカトラリーなどを使えたわけはない。ベンが持ってくる食事には、使用人が使うような粗末なスプーンさえついてなかった。子供じみたイゼルの嫌がらせの一環で、おそらく手掴みで食べろとでも言いたかったのだろう。
以前のセインは、イゼルの思惑通り泣きべそをかいて手掴みしていたようだが、当然今のセインはちゃっかり食堂から箸を失敬してそれを使っていた。
それからというもの、セインは正式な食事以外ではずっと箸を使っていた。齢を重ねた前世の記憶の影響は、やはりそれなりにあるようだ。
サキも同じ料理を食べていたが、どうやら箸は使ったことがないらしい。基本の持ち方は教えたものの、上手く使えず四苦八苦していた。
明日はいよいよこの地での初めてのクエストである。
考えてみれば、初っ端からここまで、厄介なクエストばかり受けてきた。初めての依頼は、簡単な依頼のつもりだったのに、気が付けば大事に巻き込まれ、最終的にはとんだ大騒ぎに発展した。
そして二度目はこの通り、外国まで来る羽目になっている。
「……今回は変な厄介ごとに巻き込まれないといいけど」
「おかしいな、ここまで流通が滞るなんて」
ハンターギルドには、プロ用の高額な札はそこそこ揃えられていたものの、一般向けの札は、雑貨屋、武器防具屋、はては商業組合まで、購入における枚数制限、または品切れになっていた。
稀にではあるが、転売されたと思しき代物が、露店で倍額ほどの価格で平然と売られていた。帝国なら、もちろんその場で捕まり、転売業者への罰はもちろん、横流した者は容赦なく市民権が奪われるだろう。どうやら他国では、それほど厳しく取り締まってはいないらしく、そのため度々札の過剰流通や、逆に今回みたいな不足するような事態になったりもするようだ。
ちなみに、商業組合に加入している店舗は、決められた価格以上で販売すると一発アウトで、これは共通事項のようである。
『正規品じゃない札は、たくさん見たよな』
頭の後ろで手を組み、きょろきょろと辺りを見学しながらテンが皮肉たっぷりで呟いた。
「質、悪い札、以前からよくある。けど、ここのはなにか、変……」
粗悪品を何度も使われた本人として、サキは札に対する知識はなくとも感覚でわかるのだろう。
もちろん、能力者ではない者が作成した何の効果のない偽物も問題だ。けれど、それよりも質が悪いのは、中途半端な能力者による見掛け倒しの似非札や、使用限度を超えた呪い札である。
『そうじゃな、効果がないだけならまだしも、どんな作用が起こるか分らんのが厄介じゃからの』
今回の調査は飽くまで守護樹復活がお題なので、札のことをそこまで掘り下げて調べる必要はない。それでも、家業に関わることなので、なにかわかったら報告しておいた方がいいだろう。
セインは紹介された宿屋に着くと、一週間ほどの滞在する旨を伝え、やっと落ち着くことが出来た。
「やっぱり魚料理が多いんだな」
お腹がすいていたセインは、さっそく宿屋で食事を頼んだ。
白身魚を揚げ煮したような料理と、ハーブで黄色く色づけされたご飯が提供された。思ったより少しスパイシーではあるが、魚料理はセインの口に合った。器用に箸で骨をよけながら、ほろほろの柔らかい身を、慣れた手つきで口に運ぶ。
ちなみにこの世界では、フォークとスプーンで食事を取ることが多いが、地域によっては箸もよく使われる。この港町では、外国人も多いので、フォークや箸など臨機応変に使われるようだ。
「お兄さん、帝国の人のようだけど、箸の使い方上手だね」
宿屋の女将は少女のように年若い女性だった。年齢こそ聞かなかったが、十五歳にもなる息子がいるというのだから、それなりに年齢はいっているはずだ。
「家では箸を使ってたから、慣れてるんだ」
最近まで過ごしていたボロ屋での二年間、当然ながら屋敷で使っていた銀のカトラリーなどを使えたわけはない。ベンが持ってくる食事には、使用人が使うような粗末なスプーンさえついてなかった。子供じみたイゼルの嫌がらせの一環で、おそらく手掴みで食べろとでも言いたかったのだろう。
以前のセインは、イゼルの思惑通り泣きべそをかいて手掴みしていたようだが、当然今のセインはちゃっかり食堂から箸を失敬してそれを使っていた。
それからというもの、セインは正式な食事以外ではずっと箸を使っていた。齢を重ねた前世の記憶の影響は、やはりそれなりにあるようだ。
サキも同じ料理を食べていたが、どうやら箸は使ったことがないらしい。基本の持ち方は教えたものの、上手く使えず四苦八苦していた。
明日はいよいよこの地での初めてのクエストである。
考えてみれば、初っ端からここまで、厄介なクエストばかり受けてきた。初めての依頼は、簡単な依頼のつもりだったのに、気が付けば大事に巻き込まれ、最終的にはとんだ大騒ぎに発展した。
そして二度目はこの通り、外国まで来る羽目になっている。
「……今回は変な厄介ごとに巻き込まれないといいけど」
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