晴明、異世界に転生する!

るう

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第七章 海への道

7-21 玄武誕生

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「いっ、痛たた!? え、なに」

 その日の深夜、セインはコウキのつつき攻撃でたたき起こされた。びっくりして目を覚ますと、ゆらが窓際に置かれた卵を指さしている。
 もふもふのハクに上に乗ったそれは、今や普通の卵のように白い球体になっている。中の様子はわからないが、耳を澄ますとカリカリと固い物をひっかく微かな音がする。

「え、うそ。もしかして……」

 セインは慌ててテーブルの上のランプに灯をつけた。
 すると、間を置かず、ぱりっと軽い音がして卵の一部が盛り上がった。そのヒビはやがて大きく割れて、初めに亀らしき甲羅が見えた。身体を回転させているのか卵はカタカタ揺れて、殻の一部が剥がれ落ちた。
 隙間から、真っ黒なその姿がようやく見える。

「……間違いない、玄武だ」

 大きさは、セインの両の手のひらに乗るくらい。身体が半分出たところで、巻き付いた蛇が引っかかったのか、ジタバタして殻と格闘している。

「ちょっと待って、暴れなくていい」

 甲羅と蛇にかぶさっていた殻を、セインは笑いながら外してやった。
 少し光沢のある漆黒の甲羅、そして巻き付いている蛇も黒いので、一見すると蛇ではなく亀の一部とも見える。もちろん、玄武の身体の一部なので、実際間違ってはいないけれど。

『ふう……、あたしもようやく目が覚めたわ。久しぶりね、晴明さま』
「えっ?」

 目の前の亀が喋ったのかと思ってびっくりしたが、その声はすぐ横から聞こえた。ベッドに座り、片腕を上げて伸びをしつつ、大きなあくびをしている少女。
 金色の大きな瞳に、小ぶりな鼻、ちょっと不機嫌そうな赤い唇。襟は着物風だが、リボンとフリルの付いたワンピースに、足元は鼻緒の付いた下駄のようなハイヒールというキテレツないで立ちである。
 ちなみに髪は黒髪だが、腰まで届くほどの長さのツインテールである。

「前衛的な格好だね……勾陳、だよね? そうか、前世で君は金色の蛇の姿だったか」
『ええ、そう。その方が都合がよかったからよ。でも、こっちではどのみち精神体みたいだし、好きな恰好でいいかなって』

 主に結界の守護を任せていたため、ほとんど動くことなく、大地のごとく京の町を守ってとぐろを巻いていた。重要な役割だったが、なにしろ退屈だったに違いないので、ここへ来て、はっちゃけちゃった感がある。

「ま、いいけどね」

 そう答えて、セインはふと思い出したように続けた。

「あれ? そういえば、騰蛇は? たしか、起きてたよね」
『騰蛇って……そうなの? あたしは気が付かなかったけど』

 他の式たちも、辺りを見回し首を振っている。ゆらも先日、セインとともに声は聞いたが、今は感じないようである。
 それにしても、勾陳がちょっと表情を曇らせたのを見ると、相変わらず皆とは馬が合わないようである。他の式たちより能力は高いが、とにかく恐ろしく我が強い。頼りになる主戦力ではあったが、力任せで自分勝手な行動をとることが多く、知将であるツクや、守護を主体とするゆら、勾陳などとは、とくに気が合わないようだった。
 どのみち気まぐれな奴なので、すでに目覚めているが、ただ姿を見せないだけという可能性もある。

「今はともかく、こっちだね」

 セインは生まれたばかりの玄武の甲羅を撫でた。
 すると、亀の頭と蛇の頭が同時にこちらを向く。どことなく愛嬌のあるその仕草に、思わず笑みがこぼれる。

「さて、まずは名前かな」

 セインの呟きに気が付いたのか、それまでゆら達と話していた勾陳が、玄武との間に顔を割り込ませてきた。

『ねえっ、セイ様、セイ様! あたしにも名前つけてね』
「せ、せいさま?!」
『ゆらが晴明さまって呼んじゃダメって、だから、セイ様! それより、あたしの名前もちゃんとつけてよね』
「あ、ああ……名前ね。ごめんちょっと待って、玄武にもつけなきゃだし、すぐには無理だから」

 すでにハク、テンあたりから、名前の付け方が短絡的になってきた感があり、セインは自分のボキャブラリーのなさに苦笑いするしかなかった。
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