【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第11章 故郷は設定なので新天地ですよ⁉︎

157話 分かち合い

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「おや、本当に帰って来たね」

 アヤコのテレポートにより、クララと連れて来られた場所はサトカランの街に残る唯一の宿屋だった。

「準備は済んでるよ。13人泊まるんだろ?他はどうしたんだい?」

 ドワーフの女主人が、まさかの3人じゃないだろうねと、アラヤ達の背後を確認する。

「心配せずとも今から呼びに戻ります。それよりも、この街にまともに馬車を預けれる所はあるんですか?」

「それならウチに運びなよ。駐車場よりもまだ先に、街への他の入り口がある。そこからこの宿へと来れば良い」

「でも、また馬達を狙う輩が現れないかしら?貴女達ドワーフは、普段の移動手段はどうされているんですか?」

「普段は岩大蜥蜴に荷車を引かせてるね。速度は無いけど力はあるし、アイツらはどこにでも居るからね」

 だとすれば、馬達の姿を岩大蜥蜴にジャミングすれば良い。

「分かりました。では私とクララが皆を迎えに向かいますので、アラヤ君はここで宿泊手続きをお願いします」

「分かった」

 直ぐにテレポートでアヤコ達が消えると、女主人がアラヤの前に来て顔を覗き込む。どうせまた、子供扱いされるのだろうと思っていたら、何故か匂いを嗅いで渋い表情を見せる。

「…なるほど、アンタか」

「はい?」

「…代金は2人部屋一泊、金貨じ、5枚だよ。トイレは一階奥、裏庭の小屋が浴室で共同だ。飯は準備出来なかったから無しだ。良心的な飲食店を後で教えてやるよ」

 女主人の渋い表情は一瞬だけで、直ぐに営業スマイルに一転させた。しかも、言い直したが最初に10枚とか言おうとしたな?

「13人なら、7部屋で良いね。何泊するんだい?」

「今回は一泊で良いです。なので金貨35枚ですね」

 アラヤが金貨を取り出して渡すと、2、3度数え確認してから確かにと頷いた。少し疑り深いな。

「部屋は二階だよ。鍵を持ってくるよ」

「ご主人様、只今戻りました」

 そこへ、テレポートの光がロビーに現れた。クララとイシルウェ親子、サナエとファブリカンテとアフティが戻って来たのだ。

「あれ?アヤコさんが馬車移動班?」

「うん、アヤ達に任せたわ。私達には先に部屋分けを決めて置いてって。アラヤも気分は大丈夫?」

「う~ん、まだ記憶が曖昧でちょっとモヤモヤしてるけどね…」

 サナエの体調も回復した様だが、イシルウェと2人してアラヤを心配そうな表情で見ている。

「荷物、あるか?」

 そこへ髭の短い若いドワーフが3人荷物運びに現れた。しかし、誰一人として荷物を持っていないと分かると、残念そうに女主人の下に歩いて行く。

「母ちゃん、俺らの仕事無いみたいだよ?」

「きっと馬車に積んでるんだよ」

「今のうちに襲っちゃう?」

「馬鹿を言うんじゃないよ。あの子達はジジィ共から馬を取り返して来るぐらいの子だよ?アンタ達じゃ話にならないよ。だから、ちゃんと客として接しな。仕事無いなら、掃除するか食糧を狩りに行っといで」

「「「は~い」」」

 会話は超聴覚で聞こえているが、アラヤ達は聞こえて無いフリで通している。
 3人がバラバラに持ち場に向かったのを確認した後で、営業スマイルの女主人が、7部屋分の鍵を持ってアラヤ達を呼ぶ。

「部屋に案内するよ」

 二階へと上がると、廊下には凝った造りの扉や燭台が見える。ロビーでも思ったが、宿屋と言うよりもホテルを連想させる。
 二階も客室は8部屋有り、フロア事ほぼ貸し切り状態だ。他に客が居なければ、宿屋事貸し切りだけどね。

「とりあえず、イシルウェとチャコは同じ部屋ね」

「ああ、ありがとう」

 2人は初めから確定だから考えるまでも無い。ファブリカンテとアフティも一緒で問題無いだろう。
 2人に鍵を渡していると、女主人が窓から外を見て呟いた。

「えらい早く着いたね」

 外を見ると二台の馬車が宿屋の前に着いたところだった。先程とは違う若いドワーフが、アヤコから馬車を預かり宿屋の裏へと移動させている。

「分かっていると思いますが、貴女達は馬を…」

 サナエが忠告しようとすると、女主人はその必要は無いと手を振った。

「ああ、分かってるよ。息子達にも言って聞かせるさ。私達は勝てないと分かった勝負はしないからね。問題は道中で馬を見たドワーフ共だが、客を長年護り抜いてる実績があるからね。ちゃんと馬を守ってやるから安心しな?」

 思わず、襲撃有りが当たり前なのかとツッコミを入れたくなったが、ジャミングで馬と認知させなくしているので大丈夫だろう。

「物騒な街ですね」

「ん?これは日常茶飯事だし、この街に限った事じゃないよ?何だ、知らずにこの領に来たのかい?呆れたね!」

「他領には、この領の話は情報が流れて来ないんですよ。できれば、教えていただけませんか?」

 アフティが優しく女主人に問い掛けると、しょうがないねと機嫌良く話し始めた。

「モザンピア領主様はね、この領内には2つのルールだけで良いとお決めになったんだよ。1つ、奪いたいものは奪って良し!1つ、奪われたく無い者は略奪者に対して交換条件を提示して、条件を呑んだ者は手出しをしてはならない。以上、後は好きに生きなってね」

「何それ、ほぼ無法地帯じゃない」

「強欲ドワーフにゃ、合理的で良いのさ。最初は確かに無法地帯だったさ。だがドワーフ達だって馬鹿じゃない。強者が街を支配し、弱者は身を守る為に交換条件に見合う技術や物作りを身につけ、少なからずの秩序が生まれた。街々は発展し、廃れていた領内は復活を遂げた。ドワーフの人生は短い。多くの法を作って社会に添った生き方を強いたら、かつてのモザンピアに戻って、ドワーフはあっという間に廃れちまうよ」

「だからって、他領からの来訪者を襲っても良いわけ無いだろう?」

「言ったろ?領内では欲しいものは奪って良いって。まぁ、しくじって返り討ちあったとしても自己責任さ。罪には問われないよ、例えとしてもね?」

「え?」

 その視線は真っ直ぐにアラヤに向けられている。知らないうちにアラヤは後退っていた。
 何故か宿屋に来る前を思い浮かべて、その少し前の記憶がボヤけている事に焦りを覚える。

「あ、あれ?確か、馬を取り返しに向かって…馬泥棒を見つけたら、…そこはオークだらけで…大量の肉ゲットだって…。盾持ちのトロルまで現れて…。あれ?え?どういう事?」

 帯剣している竜爪剣を痕跡視認して見ると、そこにはボヤけていた記憶とは違う事実が映し出されていた。

「アンタはまだ、微かだが血の匂いが抜けて無いよ。だが安心しな、この領では罪には問われない。ジジイ達が命乞いの交換条件を出してないならね?」

 女主人はアヤコを迎えに下りて行く。
 アラヤは、自身とクララがドワーフ達を追い詰めて襲う様を繰り返し見ている。その手は小刻みに震え、目線は焦点が合わなくなってきた。

「お、俺、喰う為に…殺し…た?」

「それは違いますよ、アラヤ君」

 そこへ、アヤコ達が階段を上がってきた。
ハウン達も少し疲れた様子で後をついてくる。

「あの時のアラヤ君は、闇精霊によって幻覚を見せられていた。イシルウェさん、そうですよね?」

「ああ、正常な判断はできない状態だったのは事実だな」

「で、でも、腕や足を斬ったり噛み付いたのも事実だ。そのまま…」

「あの時、まだ彼等はかろうじて生きていましたよ。残った私とオードリーで確認しましたから」

「え、それじゃあ…?」

「ええ、大丈夫です。アラヤ君は誰一人殺めていません」

 アラヤは、ハッとアヤコを見る。彼女は助けたとは言っていない。ただ、俺が殺めていないと言っただけだ。
 ハウン達を見ても、大丈夫ですという態度を見せているだけだ。

「まさか…」



『オードリー、決してアラヤ君だけに負わせちゃダメですよ!』

『はい!手を汚すのは我々の仕事です。お任せを!』

 数刻前、洞窟に引き返したアヤコとオードリーは、確かにまだ生きているドワーフ達を見ていた。
 その後、洞窟内で粉塵爆発が起こる事となる。

「証拠となるものが一切残らない様にしますよ」

 そして馬車を移動する際に、アヤコ達はドワーフ達が居た洞窟を完全に隠蔽していたのだった。



「ち、違うよ、違うよ、アヤコさん!俺はそんな事をして欲しいなんて思わないよ!やったのは俺で、君達にはっ…!」

 全てを察したアラヤのその手を、サナエがギュッと握り締める。

「アラヤ、皆んな考えてる事は一緒さ。私達だって、アラヤ1人に背負って欲しくない。それに、悪いのはアラヤじゃないよ?」

「そうです。それに、この領内…いえ、この世界に、前世界の法は有りません。この世界で生きる為には、それ相応の覚悟が必要だと思うんです」

 アヤコももう片方の手を取り、ギュッと握りしめた。
 …そうだ。彼女達もまた、訳も分からずこの世界に飛ばされて、理不尽の死を見てきたのだ。
 自分達は強いと自惚れ、人を殺すには抵抗があるから俺は殺さない戦い方を覚えると、俺は勝手に勘違いしていた。
 俺はこの世界に来てから、今回の様なドワーフや、獣人や魔人相手のいざという時の事をちゃんと考えていなかった。
 彼女達は既に覚悟を決めていたというのに。

「そうだね…。俺は、俺達が生きる為には、善人ではいられない。家族や仲間を守る為には手も汚すさ」

 フゥーと長い溜め息を吐くと、アラヤはイシルウェに向き直る。早急に対応しなければならない事があるのだ。

「精霊について詳しく教えてくれ」

 闇精霊による暴走。土精霊による魔法阻害。
 きっと精霊という存在が、この領内では影響が強く、情報が必要不可欠なのだ。
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