【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

文字の大きさ
378 / 418
第26章 楽しいばかりが人生ではないそうですよ⁉︎

374話 共通の敵

しおりを挟む
 ベルフェル司教は、大罪教教皇と会う為に、各地の大罪教教会を回っていた。
 そして現在、大司教であるモーガンが訪れていると聞いたガーベルク領の大罪教教会に足を運んでいた。

「これはこれは、ベルフェル司教殿。オモカツタから遠路はるばるよく来たね?」

 モーガン大司教は、歓迎というよりは怪訝そうな顔を見せた。
 彼の記憶が無事なら、ベルフェルは既に亡くなり葬儀を済ませている筈なのだから、怪しんで当然だ。

「何ゆえに、私を探していたのかね?」

「実は、教皇様に御目通りさせていただきたく…」

 喋っている最中だというのに、ベルフェルの喉元には背後から現れた団員によりナイフが突き付けられていた。

「先ずは要件を聞こう」

「大まかに申し上げますと、報告と提案でございます」

「何に対しての報告と提案だね?」

「スニス大陸全土で起きたであります」

「……。…良かろう。ついて来なさい」

 ナイフが離され、ベルフェルはモーガンの後について行く。
 彼は礼拝堂の奥に進むと、個室へと入った。

「杖等の装備品は全て、ここで預からせてもらう」

 個室に入る前に、団員達に杖や短剣、魔道具類は預けるのが決まりらしい。

 個室に入ると、中は扉以外は石壁で、壁一面に術式文字が刻まれていた。
 床石には魔法陣が描かれており、これが転移用魔法陣だと分かる。

「では行くとしよう」

 テレポートやゲートとは異なり、グニャリと身体がゆっくり溶けていく感覚が起こる。
 一瞬で移動するテレポートと違い、およそ10秒程掛けて転移が完了した。

「…おお、ここは…」

 以前、アラヤの仮想未来に巻き込まれた時に、初めに大罪教教皇と居た場所だ。

 辺りは絶壁に囲まれていて、カルデラのような場所なのだと推測できる。
 ただ土地は豊かな様で、草木には花が咲きほこっている。
 それ等は管理されていて、教皇の庭園なのだろう。
 少し先に建物が見えているが、東屋の様な日本家屋に似た建物だ。

「教皇様、連れて参りました」

 玄関先でモーガンがそう言うと、入り口の引き戸がスッと開いた。

「中にお入りなさい」

 教皇の優しい声が聞こえ、2人は家屋に入る。
 室内には囲炉裏があり、鍋が火に当てられていた。

「フフ、本当にみたいね?」

 フードを外して笑う教皇は、ベルフェルよりも高齢の祖母様に見える。

「ということは、やはりオモカツタでの死は偽装であったか」

 ベルフェルは、背後からモーガンに杖を当てられた。ピリッと杖先に魔力が集まっているのが分かる。
 抵抗する意思は無いと、ベルフェルは両腕を上げた。

「アレは、アラヤ殿の世界では生前葬という行いらしいですよ?」

「そうなの?しかし、その偽装も今や無駄になってしまいましたね?」

「いえいえ、逆に覚えておいでの様子で、安心致しました」

 教皇様とモーガン大司教は、どうやら記憶喪失では無いようだ。

「それで、貴方は今、どの立場に居るのかしら?」

 背中に当たる杖先に更に力が加えられる。どうやらモーガンへの疑いは晴れていないらしい。

「今の私は、フレイア大罪教団でも、ヌル虚無教団でもありません。空中公国大公のアラヤ殿に依頼されて参った使者に過ぎません」

「アラヤ大公に?」

「はい。教皇様の記憶が喪失していないかの確認と、今後の対応を話したいとの事です」

「それならば、通信機を直に使用してくれば良い話だっただろう?」

「大司教様、もしも記憶喪失していた相手に連絡を入れた場合、まともな会話が成立するとお思いですか?」

「…難しいだろうな。だが、何故に其方が来たのだ?」

「モーガン、それは保険でしょう。仮に私達が記憶喪失であれば、大罪教団の司教たる彼であれば警戒心が薄れ、魔王を伏せたままの公国容認の協力を得られ易いと考えたのでしょう」

(アラヤ殿、教皇様にはどうやら全て見透かされていますよ?)

「まぁ、我々はこの地に居た為に助かったに過ぎませんが、暴食の悪魔の力、やはり恐ろしいものでしたね…」

 教皇等に記憶があるという事は、この地には結界らしきものが張ってあるのだろう。
 場所も、転移陣の移動だからスニス大陸にあるとも限らない。確認したいところだな。

「創造神ヌルの召喚を阻止するには、仕方の無い処置だったとアラヤ殿は仰っていました」

「我々は初め、彼からベルフェゴールの討伐を持ち掛けられました。その目的が、創造神召喚の阻止とは聞かされていなかった。確かに、召喚魔法陣を阻止する為には、暴食の悪魔の力が必要だったのでしょう。ですが、彼は何処からその情報を得たのでしょう?暴食の悪魔の存在は、我々フレイア大罪教の史録でも神殿の所在すら判明していなかったのに…」

「それは、本人に尋ねるべき内容かと。ただ、貴女様はあの時、既に暴食の悪魔が必要だと理解していたのではありませんか?」

 ベルフェルには仮想未来で教皇から暴食の悪魔の話を聞いている。
 その上で、見つからないならばアラヤを殺すのも止むを得ないとも言われた。
 あの時の教皇の判断は、知り得ていた情報を出し渋った為に間に合わず、強行手段を考えたのではないのだろうか?

「それについては、確かに彼と直接対談した方が良さそうですね。モーガン、通信機の用意を」

「はい、直ちに」

 モーガンは部屋奥から羅針盤通信機を持ってきた。
 念話やコールに比べて、羅針盤通信機は繋がる距離が倍以上ある。
 そのかわり、同型機にしか繋ぐ事はできないし、消費する魔力量が高い(魔石の代用も可)のが難点だ。

「もしもし、フレイア大罪教大司教のモーガンだ。大公殿を呼んでもらえるかな?」

 通信機に出たのは、アグリと名乗るアラヤの分身体だったようだ。
 しばらくして、アラヤがホログラムに現れ通信機に出た。

「こんにちは、モーガン大司教。通信機を掛けて来たという事は、ベルフェル司教から説明を受けたという事ですね?」

「いかにも。彼が生きているとは驚かされたよ。私だけでなく、教皇様も記憶は保っておられる。今、教皇様と代わるので待たれよ」

 モーガンが、教皇の前に通信機を移動して通話を代わる。

「教皇様、この度のベルフェゴール討伐の大罪教団の協力、及び各地の暴動の鎮圧等、感謝致します。おかげ様で、ヌル虚無教団の目論見を阻止できました」

「アラヤ大公、貴方の多大なる活躍にフレイア大罪教の代表として敬意を表する。ベルフェル司教から伺いましたが、大陸全土に起こった一斉記憶喪失は、暴食の悪魔を従えた貴方の御力だと。それはまことですか?」

「はい。創造神ヌルによる世界消滅を防ぐ為とはいえ、スニス大陸全土に与えてしまった影響は大き過ぎました」

「その、ヌル虚無教団とベルフェゴールの思惑が創造神ヌルの召喚だったという話、貴方はどうやって知り得たのですか?しかも、その解決策として暴食の悪魔バアルゼブルを利用するという発想も…」

「えっと…それについては、説明しづらいんですが…。見たというか、聞いたというか…」

 仮想未来で、美徳教教皇や貴女から聞いたとは説明できないよね。

「…いや、規格外な貴方なら有り得るかもしれませんね。一つお伺いします。アラヤ大公、貴方は【神託】を賜ったのではないですか?」

「ああ、です。そんな感じで知りました」

「やはりそうですか!まさか、私の他にも【神託】を賜れる者が居るとは思いませんでしたが、貴方なら納得ですね」

(やはり教皇は、先に神託を授かっていて、暴食の悪魔を探さないといけない事は知っていたのだな…)

「そこで教皇様、これからについてご相談があるのですが…」

「…伺いましょう」

「今回の記憶喪失の件で、グルケニア帝国、ラエテマ王国、ムシハ連邦国で起きた内乱や暴動は、全て治まっています。むしろ、戦争が起きた事すらも忘れている状況です」

「そうですね。失った者や、残された傷跡はあれども、全く身に覚えが無いという困惑が民衆には広がっているようですね」

「せっかく皆が争いを忘れているのですから、そのまま終息した形を維持したいですよね?」

「まぁ、争いが無いに越した事はないでしょう」

「そこで、今一度ヌル虚無教団を悪役として、教団から公表して頂きたいんです」

「…それは何故でしょう?」

「記憶を無くしたのはスニス大陸全土の民ですが、その中でも結界に入っていた者は無事みたいです。それに、ズータニア大陸のパガヤ王国と魔人国家ソードムは記憶喪失の範囲外でした。つまり、各地に残る被害と記憶喪失の件を、共通する敵としてヌル虚無教団を矢面に立たせます」

 恥ずかしい話、記憶喪失の責任を押し付けようと考えている。だって、今更責任取れないし…。

「しかし、それでは余計にダクネラの活動を煽る事になりませんか?」

「ああ、その点なら大丈夫です。ダクネラは亡くなり、ヌル虚無教団は壊滅したので問題無いかと」

「「…は?」」

 教皇とモーガン大司教は、その言葉の意味の理解に時間が掛かった。

「現在、ダクネラの遺品と団員達を捕らえています。ダクネラの死亡を確認したい場合には、無の大精霊ケイオス様からも証明できますが、そこにいるベルフェル司教も現地で戦っていましたので、詳しい話は聞いて下さい」

 そこで、2人の視線がベルフェルの右手首に向く。

(彼はダクネラとは古き友人だった筈。死の偽装は、その彼との戦いに参加する為?だとしたら、アラヤの下に就いたという事も多少は納得がいく)

「あ、あと、美徳教教皇も記憶は残っていましたので、同様の公表をお願いするつもりです。それと、出来れば我が国の公表もお願いできますか?ラエテマ王国との同盟も忘れられてしまっているので」

「分かりました。承りましょう。但し、条件があります」

「はい。その条件とは何ですか?」

「あのバアルゼブルの力、金輪際、使用をしないという確約です」

「分かりました。フレイア様に誓って、二度とあの記憶を奪う力は使わないと約束しましょう。誓約書は後日作り、複写した物をお送りします。それで宜しいですか?」

「はい、充分です」

 アラヤとしても、あの力の使い方は二度と使わない方が良いと理解していたから、別に問題ない。

 その後も、大罪教との協力関係を話し合い、空中公国月の庭モーントガルテンとしての両教団との関係も修復できそうで、アラヤは安心するのだった。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...