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第二章 日記帳のスティア
十四話
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「レオお兄さま!御卒業おめでとうございます!」
レオお兄さまと過ごした2年間は、今まであまりお会い出来なかった日々を埋めるようでとても楽しい時間だったわ。
レオお兄さまが御卒業されてまた、離れる日々が続くのだと思うととても寂しいけれどレオお兄さまの未来を邪魔する訳にはいかないものね…
「ありがとう、ティア。
ティアが入学して来てからの2年間はあっという間に過ぎてしまった気がするよ。
卒業すれば、在学時のように会えなくなるのがとても寂しいよ。」
レオお兄さまが御祝いの花束を受け取りながら眉を下げる。
「私もですわ。
レオお兄さまのおかげでとても素晴らしい時間を過ごすことができました。」
卒業パーティーが開かれている会場では、コサージュをつけた卒業生と在学生が楽しそうに談笑している。
離れ離れになってしまう憧れの卒業生を勇気を絞って誘う姿や別れを惜しんで涙を流す姿が見える。
アリーヤ様にはきっと嫌われてしまったけれど最後にお話ししたかったわ。
出来ることなら誤解を解いてから御別れしたかったものね…
「…アリーヤ様のことは忘れた方が良い。
いつか必ずティアを理解してくれる運命の一人が現れるよ。」
「まあ…!それは、レオお兄さまのことかしら?」
「…ははっ、そうだと嬉しいね。」
きっとレオお兄さまには全てお見通しなのね。
私がアリーヤ様とのことで落ち込んでいることも何もかも…
『皆のもの!こちらに注目して欲しい!』
突如、響いた声に会場が水を打った様に静まり返る。
壇上には、アリーヤ様とミラの姿があった。
『…卒業に際し、皆の前でハッキリさせたいことがある。我が恋人ミラがとある者から虐げられていたことに関してだ。』
サッと血の気が引くのが分かる。
何故なら、アリーヤ様の目はしっかりと私を捉えていたから。
『身に覚えのある者が居るのではないか?
正直に申し出るのであれば今のうちだ。』
ザワザワと会場が揺れる。
皆一応にこちらを見ている。
レオお兄さまが視線から私を庇う様に立つ。
『卑怯者め。
そこにいるスティア嬢は、あろうことか妹であるミラに対し幼少期より様々な嫌がらせをして来た。
そして、学院に入学してからは、醜い理由でミラに対し執拗な虐めを行った。
間違えないな?』
「恐れながらアリーヤ王子殿下に対して発言させて頂きます。
私は、ミラに対し虐めなど断じて行っておりません。」
『この期に及んでまだその様なことを…!!
証拠も上がっている。スティア嬢がミラを虐げているところを見たという目撃者がいる。』
「御言葉ですが殿下!その目撃者は本当に信用できる者でしょうか?
その目撃者を証拠とするには足りないのではないですか?」
『その様なことは断じてない!
スティア嬢がミラを虐げていたと言うのは事実!妹のことを思うなら庇うのではなく罪を認めさせろ!
…スティア・アストンフォーゲル!そなたはこの学院…いや、この国に相応しくない!
よって!国外追放とする!
直ちに荷物をまとめこの学院ひいてはこの国から出て行け!』
私を傘に入れて下さり楽しく話をしたアリーヤ様はそこにはなく、ただただ私を軽蔑した目で怒鳴るアリーヤ様がいた。
「ティア!!」
私は、アリーヤ様とミラに背を向けて逃げ出すことしかできなかった。
「スティア様!?どうされたのですか?
まだ、パーティーの途中では?」
いきなり部屋に飛び込んできた私にララは驚いた様に目を見開いている。
「ララ、直ぐに私の荷物をまとめて…」
「え…?」
「私はもうここにはいられないの!早く!」
思ったより大声が出て驚く。
ララも、同じで急いで荷物をまとめ始めた。
「ララ、先程は怒鳴ってごめんなさい。
学院での生活は辛いことも多かったけれどララがいてくれたおかげで楽しく過ごせたわ。
こんな御別れになってしまったけれどララに出会えて良かった。本当にありがとう。
どうか、身体には気をつけて。幸せになってね。」
それだけ伝えるとアリーヤ様が用意したであろう馬車に乗り込む。
馬の鳴き声と共に馬車が発車して学院もララの姿も遠くなっていく。
さようなら、ララ…
どうか、私のせいでララが不幸な目に遭いません様に…
その後、学院を追われたスティアは、事の沙汰を知ったアストンフォーゲル辺境伯から破門を言い渡され国外追放となった。
山中で山賊に襲われながらも何とか辿り着いた街でも邪気にされ、唯一助けてくれた老婆ステラの死後、天からも見放されたスティアは16年の短い受難の人生に終止符を打ったのだった。
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最後までお読み頂きありがとうございます!
更新が遅くなり申し訳ございません。
御指摘により訂正箇所が判明致しました。
大変、申し訳ございません。
詳しくは『お詫びとご説明』をご覧下さい。
今回は、卒業パーティーだけを書く予定だったのですが、マンドラゴラの力が尽きたためスティアの最期まで書きました。
また、機会があれば追放後のエトセトラを書きたいと思います!
こちらで長かった第二章本編は終了となります。
この後、別視点の閑話が数話入りまして、第三章へと進みます。是非、お楽しみに!
レオお兄さまと過ごした2年間は、今まであまりお会い出来なかった日々を埋めるようでとても楽しい時間だったわ。
レオお兄さまが御卒業されてまた、離れる日々が続くのだと思うととても寂しいけれどレオお兄さまの未来を邪魔する訳にはいかないものね…
「ありがとう、ティア。
ティアが入学して来てからの2年間はあっという間に過ぎてしまった気がするよ。
卒業すれば、在学時のように会えなくなるのがとても寂しいよ。」
レオお兄さまが御祝いの花束を受け取りながら眉を下げる。
「私もですわ。
レオお兄さまのおかげでとても素晴らしい時間を過ごすことができました。」
卒業パーティーが開かれている会場では、コサージュをつけた卒業生と在学生が楽しそうに談笑している。
離れ離れになってしまう憧れの卒業生を勇気を絞って誘う姿や別れを惜しんで涙を流す姿が見える。
アリーヤ様にはきっと嫌われてしまったけれど最後にお話ししたかったわ。
出来ることなら誤解を解いてから御別れしたかったものね…
「…アリーヤ様のことは忘れた方が良い。
いつか必ずティアを理解してくれる運命の一人が現れるよ。」
「まあ…!それは、レオお兄さまのことかしら?」
「…ははっ、そうだと嬉しいね。」
きっとレオお兄さまには全てお見通しなのね。
私がアリーヤ様とのことで落ち込んでいることも何もかも…
『皆のもの!こちらに注目して欲しい!』
突如、響いた声に会場が水を打った様に静まり返る。
壇上には、アリーヤ様とミラの姿があった。
『…卒業に際し、皆の前でハッキリさせたいことがある。我が恋人ミラがとある者から虐げられていたことに関してだ。』
サッと血の気が引くのが分かる。
何故なら、アリーヤ様の目はしっかりと私を捉えていたから。
『身に覚えのある者が居るのではないか?
正直に申し出るのであれば今のうちだ。』
ザワザワと会場が揺れる。
皆一応にこちらを見ている。
レオお兄さまが視線から私を庇う様に立つ。
『卑怯者め。
そこにいるスティア嬢は、あろうことか妹であるミラに対し幼少期より様々な嫌がらせをして来た。
そして、学院に入学してからは、醜い理由でミラに対し執拗な虐めを行った。
間違えないな?』
「恐れながらアリーヤ王子殿下に対して発言させて頂きます。
私は、ミラに対し虐めなど断じて行っておりません。」
『この期に及んでまだその様なことを…!!
証拠も上がっている。スティア嬢がミラを虐げているところを見たという目撃者がいる。』
「御言葉ですが殿下!その目撃者は本当に信用できる者でしょうか?
その目撃者を証拠とするには足りないのではないですか?」
『その様なことは断じてない!
スティア嬢がミラを虐げていたと言うのは事実!妹のことを思うなら庇うのではなく罪を認めさせろ!
…スティア・アストンフォーゲル!そなたはこの学院…いや、この国に相応しくない!
よって!国外追放とする!
直ちに荷物をまとめこの学院ひいてはこの国から出て行け!』
私を傘に入れて下さり楽しく話をしたアリーヤ様はそこにはなく、ただただ私を軽蔑した目で怒鳴るアリーヤ様がいた。
「ティア!!」
私は、アリーヤ様とミラに背を向けて逃げ出すことしかできなかった。
「スティア様!?どうされたのですか?
まだ、パーティーの途中では?」
いきなり部屋に飛び込んできた私にララは驚いた様に目を見開いている。
「ララ、直ぐに私の荷物をまとめて…」
「え…?」
「私はもうここにはいられないの!早く!」
思ったより大声が出て驚く。
ララも、同じで急いで荷物をまとめ始めた。
「ララ、先程は怒鳴ってごめんなさい。
学院での生活は辛いことも多かったけれどララがいてくれたおかげで楽しく過ごせたわ。
こんな御別れになってしまったけれどララに出会えて良かった。本当にありがとう。
どうか、身体には気をつけて。幸せになってね。」
それだけ伝えるとアリーヤ様が用意したであろう馬車に乗り込む。
馬の鳴き声と共に馬車が発車して学院もララの姿も遠くなっていく。
さようなら、ララ…
どうか、私のせいでララが不幸な目に遭いません様に…
その後、学院を追われたスティアは、事の沙汰を知ったアストンフォーゲル辺境伯から破門を言い渡され国外追放となった。
山中で山賊に襲われながらも何とか辿り着いた街でも邪気にされ、唯一助けてくれた老婆ステラの死後、天からも見放されたスティアは16年の短い受難の人生に終止符を打ったのだった。
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最後までお読み頂きありがとうございます!
更新が遅くなり申し訳ございません。
御指摘により訂正箇所が判明致しました。
大変、申し訳ございません。
詳しくは『お詫びとご説明』をご覧下さい。
今回は、卒業パーティーだけを書く予定だったのですが、マンドラゴラの力が尽きたためスティアの最期まで書きました。
また、機会があれば追放後のエトセトラを書きたいと思います!
こちらで長かった第二章本編は終了となります。
この後、別視点の閑話が数話入りまして、第三章へと進みます。是非、お楽しみに!
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