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第二章 日記帳のスティア
閑話 時計の針が逆に進むことはない
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「アリーヤさまぁ~やっと着きましたわね!」
「ああ、先触れもなく来てしまったが迷惑ではないか?」
「大丈夫ですよぉ、今日はお父さまもお兄さまもいる日なので~」
ストロベリーブロンドの髪が揺れる。
蜂蜜色の瞳が私を捉えて嬉しそうに笑う。
脅威となる存在が消え、あの愛らしい笑顔が取り戻せて本当に良かった。
それにしても、いくら妹といえどあんな醜い女を庇うとはレオンも馬鹿なことを…
普段は冷静な男があのパーティーの日は声を荒げて突っかかって来た。
まあ、日が経った今、きっと反省しているに違いない。会ったらお茶でもしながら仲直りをしよう。
「これはこれは、アリーヤ王子殿下!
お越しになると分かっていればもっと盛大に歓迎出来ましたのに…」
玄関ホールで出迎えたのは現アストンフォーゲル夫人でミラの母上だ。
前妻のソフィアとは系統の違う美人だ。
ソフィア様はスティア嬢と同じ薄い蜂蜜色の髪に翡翠の瞳を持った儚げで優しい雰囲気を持った美人だ。
一方、現アストンフォーゲル夫人であるナタリー様は豪奢なドレスを身にまとい、意思をはっきりと持っている様な雰囲気の強い美人だ。
「いや、こちらこそ先触れもなく申し訳ない。
アストンフォーゲル辺境伯はいるか?
少し、話がしたいのだが。」
「ええ、勿論ですとも!
直ぐ主人に伝えますわ。どうぞ、サロンでお待ち下さいませ。」
「お待たせ致しました。」
しばらくして辺境伯がサロンへやってきた。
辺境伯夫妻が揃ったところで本題を切り出す。
「急の訪問すまなかった。
本日はミラ嬢との婚約を許可して頂きたく参った。
この様な時期にとは思ったが一刻も早く婚約をし恋人としてではなく婚約者としてミラ嬢を守りたいと思ったのだ。」
実はこの話はまだ父上と母上にはしていない。
だが、ミラ嬢であれば両親も反対しないだろう。
「失礼。少し席を外します。」
アフタヌーンティーを合わせた話し合いにひと段落がついた頃、尿意を催し離席を告げる。
案内を申し出る執事を手で制し、部屋を出た。
それにしても、女主人である夫人の交代で随分と屋敷のイメージも変わった様に感じる。
ソフィア様が御存命だった頃はもっと落ち着いたカントリー風な中にも気品あふれる上品な雰囲気だった。
今は、豪華絢爛な雰囲気だ。
流石は王国一の港を持つアストンフォーゲル家だ。
財と富を表す様な屋敷だな。
ミラや夫人の身に付けるドレスや宝飾品も一級品ばかり…同じドレスは着ないミラを見ていればどれだけ財政が潤っているのか手に取るように分かるな。
屋敷の長い廊下を歩きながら豪奢な内装や美術品にしみじみと感じ入る。
『それにしても…スティア様だけでなくレオン様まで出て行かれてしまうなんて…
この屋敷も終わりね。転職先をさがないと。』
『ええ、ソフィア様が亡くなられてから散々だわ…
スティア様もお可哀想に…ナタリー様とミラ様にまんまと嵌められたわね。』
廊下の隅からメイドたちが話す声が聞こえる。
穏やかではない内容に聞き耳を立てる。
『今まではスティア様に向けられていたものが今度は私たちに向く様になるわよ。
今まで以上に虐げられるなんて耐えられないわ!
スティア様も良く耐えられたものだわ…』
『ご主人様もご主人様よ!後妻のナタリー様とミラ様だけ可愛がって…!
スティア様やレオン様があまりにもお可哀想だわ!』
一体、どう言うことだ?
ミラはずっとスティア嬢に虐められていたのではないのか?だが、メイドたちの話からすると虐められていたのはスティア嬢の方…?
それに、レオンが出て行っただと…?
まさか…学園でのことは本当に冤罪だったのか…?
いや、そんなはずは…目撃者だっていて…
そう言えば、スティア嬢はいつも同じドレスを着回していた様な気がする…
それで、他の令嬢たちが噂をしていた…
《親から見放された可哀想な令嬢だと…》
もし、嫉妬からミラ嬢を虐めるような女が悪口を言われて黙っているわけがない。
だが、スティア嬢がミラ嬢以外を虐めたという証言はなかった。
じわじわと身体の芯から冷えていくのを感じる。
「アリーヤ王子殿下!!王宮より使者です!直ぐにアストンフォーゲル辺境伯を連れて帰城せよ!とのことです!」
馬車を用意しています!お早く!と考えも纏まらぬうちに急かされ馬車に乗せられる。
目の前には同じ様に状況を読みきれない辺境伯が座っていた。
「アリーヤ。お前は何てことをしてくれた!」
謁見の間に入ると顔色の悪い母上と、怒りに顔を赤くした父上に出迎えられ、開口一番に怒鳴られる。
「お前が勝手に国外追放にしたスティア嬢は冤罪だった!ろくに事実を調べずに国外追放にしたとは言わないだろうな!」
スティア嬢が冤罪…
頭を鈍器で殴られた様な衝撃に気が遠くなる。
「ですが…スティア嬢がミラを虐めたと言う証言もあり…目撃者も…」
「本当に信用の出来るものだったのか!?その証言をした子息たちはミラ嬢に想いを寄せておったと有名だったそうじゃないか!
ミラ嬢に有利になる証言をしたとは思わなかったのか?」
そう言われて何も答えられない。
確かに、その目撃者以外、スティア嬢がミラ嬢を突き飛ばす瞬間を見た者はいなかった。
「スティア嬢はミラ嬢を虐めたりなんてしていない。
むしろ、その逆だ。ミラ嬢がスティア嬢を虐げていたのだ。ミラ嬢は、虐めを自作自演しあたかもスティア嬢がやったかのようにしていたと言う。
スティア嬢は素晴らしい生徒だっと聞いている。
成績優秀で心優しく、困っている者がいればどんな者にも手を貸したそうだ。
スティア嬢は姉として何度も未熟なミラ嬢を諫めていた。
しかし、我が愚息はあろうことかミラ嬢の言う事を鵜呑みにしてスティア嬢を断罪した。
スティア嬢は最後まで無実を訴えていたのに話も聞かずに!
アストンフォーゲル辺境伯よ本当に申し訳ない。」
父上と母上が頭を下げる。
母上は、顔面蒼白で今にも倒れそうだ。
「直ぐにスティア嬢を連れ戻すのだ!」
辺境伯からスティア嬢の居場所を聞いた父上がすぐに命じる。
命を受けた騎士団が慌ただしく謁見の間を出て行く。
「これは、我が諜報部とレオン殿が調べてくれた全ての顛末が書かれた書物だ。
王宮に部屋を用意した。ゆっくり休まれよ。
そなたが言っていた村ならそう遠くない。
明日の朝にはスティア嬢に会えるだろう。
スティア嬢が揃ってから愚息も交えて謝罪の場を設けさせてくれ。」
辺境伯とともに受け取った書類には所狭しとスティア嬢が冤罪である証拠とミラの自作自演であったことが書かれていた。
さらに、ミラは辺境伯の子ではなかった。
ナタリー様と違う男との間に生まれた子だった。
ナタリー様はあろうことか辺境伯の子だと騙すためにミラの瞳を変える薬を飲ませていた。
今になってことの重大さに気づいた。
あの時はミラや周りの話を聞いて感情的になり、国外追放にした。
しかし、スティア嬢は無罪だった。
決して許されることではないが、明日スティア嬢が帰ってきたら誠心誠意謝ろう。
私に出来ることはそれくらいしかない。
「落ち着いて聞いて下さい。
スティア嬢は我々がお迎えに上がった時には既に息を引き取っていらっしゃいました。」
しかし、そんな機会は来なかった。
翌日、謁見の間に呼び出された私はスティア嬢の死を告げられたのだ。
「なんてことなの…!」
母上が崩れ落ちる。
「ああ!なんてことだ!何故そのような事になる!3ヶ月ちょっとであろう!?」
「はい。まず、手切金として辺境伯が渡したお金ですが、道中山賊に襲われて全て奪われてしまったようです。
それに、国境近くということもあり村では既にアリーヤ王子の恋人を虐めた女が来ると噂になっていたようです。
そんなスティア嬢に手を貸す村人はおらず雇ってくれないばかりか物すら売らなかったようです。
唯一スティア嬢に手を差し伸べていたステラという老婆は先月お亡くなりになり、スティア嬢はステラという老婆に教わった家庭菜園というものをやっていたようですが…先日の台風で壊滅し、食料が尽きた事で餓死したのだと推測されます。
死体の腐敗が進んでおらず、亡くなられた直後であると思われます。」
簡易的な棺に納められたスティア嬢は、目も当てられないほど痩せ細っていて、あれだけ輝いていた自慢の薄い蜂蜜色の髪もバサバサになっていた。
今さら後悔しても遅い。
スティア嬢はもう戻ってはこない。
この口で破門を言い渡した。
スティア嬢は最後まで否定していたと言うのに…!
思えば、スティア嬢がやったなんて証拠はひとつもなかった。
ああ、私はなんてことをしてしまったんだ…!
俺がスティア嬢を殺したんだ…!
「ごめん…ごめんな…スティア嬢…!どうして私は話も聞かずに調べもせずにこんな酷い事を…!」
「本当に申し訳ない!謝ってどうなるものでないのは分かっている!本当に申し訳ない!」
父上と母上はスティア嬢の棺の前でひたすら辺境伯に謝り続けた。
スティア嬢の頬に触れれば冷たくもう、息をしていないことが容易に伝わる。
私は、ふと共に傘をさして歩いた日のことを思い出した。あの様に優しい笑顔をする人間が虐めなどする筈がないのに…!
私が罵倒した時、スティア嬢は決まって泣きそうな顔をした。私は…なんてひどいことを!
どんなに悔もうともどんなに願おうとももうスティア嬢は戻ってはこない。
時計の針は逆には進まない…
時計の針は絶対に逆には進まないのだ…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただきありがとうございます!
今回はアリーヤ王子視点です。
恋は盲目だとよく言ったものですが、実際もこんな風に盲目的になってしまうのでしょうか。
覆水盆には帰らずと言うことわざがあるように世の中には一度起こってしまったことは取り返しがつかなくなることが多くあります。
死んだ人が生き返ることがないのもその一つであるとマンドラゴラは思います。
この後、アリーヤ王子は焼けつく様な後悔を抱きながらもどうする事のできない現状に嘆き苦しみ続けることになるでしょう。
それでも、スティアが救われる訳ではありません。
権力が持つ力は恐ろしく、取り返しのつかない事態を巻き起こし、後悔しても時間が巻き戻ることはないと言う話でした。
何か良く分からないことを長々とすみません。
「ああ、先触れもなく来てしまったが迷惑ではないか?」
「大丈夫ですよぉ、今日はお父さまもお兄さまもいる日なので~」
ストロベリーブロンドの髪が揺れる。
蜂蜜色の瞳が私を捉えて嬉しそうに笑う。
脅威となる存在が消え、あの愛らしい笑顔が取り戻せて本当に良かった。
それにしても、いくら妹といえどあんな醜い女を庇うとはレオンも馬鹿なことを…
普段は冷静な男があのパーティーの日は声を荒げて突っかかって来た。
まあ、日が経った今、きっと反省しているに違いない。会ったらお茶でもしながら仲直りをしよう。
「これはこれは、アリーヤ王子殿下!
お越しになると分かっていればもっと盛大に歓迎出来ましたのに…」
玄関ホールで出迎えたのは現アストンフォーゲル夫人でミラの母上だ。
前妻のソフィアとは系統の違う美人だ。
ソフィア様はスティア嬢と同じ薄い蜂蜜色の髪に翡翠の瞳を持った儚げで優しい雰囲気を持った美人だ。
一方、現アストンフォーゲル夫人であるナタリー様は豪奢なドレスを身にまとい、意思をはっきりと持っている様な雰囲気の強い美人だ。
「いや、こちらこそ先触れもなく申し訳ない。
アストンフォーゲル辺境伯はいるか?
少し、話がしたいのだが。」
「ええ、勿論ですとも!
直ぐ主人に伝えますわ。どうぞ、サロンでお待ち下さいませ。」
「お待たせ致しました。」
しばらくして辺境伯がサロンへやってきた。
辺境伯夫妻が揃ったところで本題を切り出す。
「急の訪問すまなかった。
本日はミラ嬢との婚約を許可して頂きたく参った。
この様な時期にとは思ったが一刻も早く婚約をし恋人としてではなく婚約者としてミラ嬢を守りたいと思ったのだ。」
実はこの話はまだ父上と母上にはしていない。
だが、ミラ嬢であれば両親も反対しないだろう。
「失礼。少し席を外します。」
アフタヌーンティーを合わせた話し合いにひと段落がついた頃、尿意を催し離席を告げる。
案内を申し出る執事を手で制し、部屋を出た。
それにしても、女主人である夫人の交代で随分と屋敷のイメージも変わった様に感じる。
ソフィア様が御存命だった頃はもっと落ち着いたカントリー風な中にも気品あふれる上品な雰囲気だった。
今は、豪華絢爛な雰囲気だ。
流石は王国一の港を持つアストンフォーゲル家だ。
財と富を表す様な屋敷だな。
ミラや夫人の身に付けるドレスや宝飾品も一級品ばかり…同じドレスは着ないミラを見ていればどれだけ財政が潤っているのか手に取るように分かるな。
屋敷の長い廊下を歩きながら豪奢な内装や美術品にしみじみと感じ入る。
『それにしても…スティア様だけでなくレオン様まで出て行かれてしまうなんて…
この屋敷も終わりね。転職先をさがないと。』
『ええ、ソフィア様が亡くなられてから散々だわ…
スティア様もお可哀想に…ナタリー様とミラ様にまんまと嵌められたわね。』
廊下の隅からメイドたちが話す声が聞こえる。
穏やかではない内容に聞き耳を立てる。
『今まではスティア様に向けられていたものが今度は私たちに向く様になるわよ。
今まで以上に虐げられるなんて耐えられないわ!
スティア様も良く耐えられたものだわ…』
『ご主人様もご主人様よ!後妻のナタリー様とミラ様だけ可愛がって…!
スティア様やレオン様があまりにもお可哀想だわ!』
一体、どう言うことだ?
ミラはずっとスティア嬢に虐められていたのではないのか?だが、メイドたちの話からすると虐められていたのはスティア嬢の方…?
それに、レオンが出て行っただと…?
まさか…学園でのことは本当に冤罪だったのか…?
いや、そんなはずは…目撃者だっていて…
そう言えば、スティア嬢はいつも同じドレスを着回していた様な気がする…
それで、他の令嬢たちが噂をしていた…
《親から見放された可哀想な令嬢だと…》
もし、嫉妬からミラ嬢を虐めるような女が悪口を言われて黙っているわけがない。
だが、スティア嬢がミラ嬢以外を虐めたという証言はなかった。
じわじわと身体の芯から冷えていくのを感じる。
「アリーヤ王子殿下!!王宮より使者です!直ぐにアストンフォーゲル辺境伯を連れて帰城せよ!とのことです!」
馬車を用意しています!お早く!と考えも纏まらぬうちに急かされ馬車に乗せられる。
目の前には同じ様に状況を読みきれない辺境伯が座っていた。
「アリーヤ。お前は何てことをしてくれた!」
謁見の間に入ると顔色の悪い母上と、怒りに顔を赤くした父上に出迎えられ、開口一番に怒鳴られる。
「お前が勝手に国外追放にしたスティア嬢は冤罪だった!ろくに事実を調べずに国外追放にしたとは言わないだろうな!」
スティア嬢が冤罪…
頭を鈍器で殴られた様な衝撃に気が遠くなる。
「ですが…スティア嬢がミラを虐めたと言う証言もあり…目撃者も…」
「本当に信用の出来るものだったのか!?その証言をした子息たちはミラ嬢に想いを寄せておったと有名だったそうじゃないか!
ミラ嬢に有利になる証言をしたとは思わなかったのか?」
そう言われて何も答えられない。
確かに、その目撃者以外、スティア嬢がミラ嬢を突き飛ばす瞬間を見た者はいなかった。
「スティア嬢はミラ嬢を虐めたりなんてしていない。
むしろ、その逆だ。ミラ嬢がスティア嬢を虐げていたのだ。ミラ嬢は、虐めを自作自演しあたかもスティア嬢がやったかのようにしていたと言う。
スティア嬢は素晴らしい生徒だっと聞いている。
成績優秀で心優しく、困っている者がいればどんな者にも手を貸したそうだ。
スティア嬢は姉として何度も未熟なミラ嬢を諫めていた。
しかし、我が愚息はあろうことかミラ嬢の言う事を鵜呑みにしてスティア嬢を断罪した。
スティア嬢は最後まで無実を訴えていたのに話も聞かずに!
アストンフォーゲル辺境伯よ本当に申し訳ない。」
父上と母上が頭を下げる。
母上は、顔面蒼白で今にも倒れそうだ。
「直ぐにスティア嬢を連れ戻すのだ!」
辺境伯からスティア嬢の居場所を聞いた父上がすぐに命じる。
命を受けた騎士団が慌ただしく謁見の間を出て行く。
「これは、我が諜報部とレオン殿が調べてくれた全ての顛末が書かれた書物だ。
王宮に部屋を用意した。ゆっくり休まれよ。
そなたが言っていた村ならそう遠くない。
明日の朝にはスティア嬢に会えるだろう。
スティア嬢が揃ってから愚息も交えて謝罪の場を設けさせてくれ。」
辺境伯とともに受け取った書類には所狭しとスティア嬢が冤罪である証拠とミラの自作自演であったことが書かれていた。
さらに、ミラは辺境伯の子ではなかった。
ナタリー様と違う男との間に生まれた子だった。
ナタリー様はあろうことか辺境伯の子だと騙すためにミラの瞳を変える薬を飲ませていた。
今になってことの重大さに気づいた。
あの時はミラや周りの話を聞いて感情的になり、国外追放にした。
しかし、スティア嬢は無罪だった。
決して許されることではないが、明日スティア嬢が帰ってきたら誠心誠意謝ろう。
私に出来ることはそれくらいしかない。
「落ち着いて聞いて下さい。
スティア嬢は我々がお迎えに上がった時には既に息を引き取っていらっしゃいました。」
しかし、そんな機会は来なかった。
翌日、謁見の間に呼び出された私はスティア嬢の死を告げられたのだ。
「なんてことなの…!」
母上が崩れ落ちる。
「ああ!なんてことだ!何故そのような事になる!3ヶ月ちょっとであろう!?」
「はい。まず、手切金として辺境伯が渡したお金ですが、道中山賊に襲われて全て奪われてしまったようです。
それに、国境近くということもあり村では既にアリーヤ王子の恋人を虐めた女が来ると噂になっていたようです。
そんなスティア嬢に手を貸す村人はおらず雇ってくれないばかりか物すら売らなかったようです。
唯一スティア嬢に手を差し伸べていたステラという老婆は先月お亡くなりになり、スティア嬢はステラという老婆に教わった家庭菜園というものをやっていたようですが…先日の台風で壊滅し、食料が尽きた事で餓死したのだと推測されます。
死体の腐敗が進んでおらず、亡くなられた直後であると思われます。」
簡易的な棺に納められたスティア嬢は、目も当てられないほど痩せ細っていて、あれだけ輝いていた自慢の薄い蜂蜜色の髪もバサバサになっていた。
今さら後悔しても遅い。
スティア嬢はもう戻ってはこない。
この口で破門を言い渡した。
スティア嬢は最後まで否定していたと言うのに…!
思えば、スティア嬢がやったなんて証拠はひとつもなかった。
ああ、私はなんてことをしてしまったんだ…!
俺がスティア嬢を殺したんだ…!
「ごめん…ごめんな…スティア嬢…!どうして私は話も聞かずに調べもせずにこんな酷い事を…!」
「本当に申し訳ない!謝ってどうなるものでないのは分かっている!本当に申し訳ない!」
父上と母上はスティア嬢の棺の前でひたすら辺境伯に謝り続けた。
スティア嬢の頬に触れれば冷たくもう、息をしていないことが容易に伝わる。
私は、ふと共に傘をさして歩いた日のことを思い出した。あの様に優しい笑顔をする人間が虐めなどする筈がないのに…!
私が罵倒した時、スティア嬢は決まって泣きそうな顔をした。私は…なんてひどいことを!
どんなに悔もうともどんなに願おうとももうスティア嬢は戻ってはこない。
時計の針は逆には進まない…
時計の針は絶対に逆には進まないのだ…
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最後までお読みいただきありがとうございます!
今回はアリーヤ王子視点です。
恋は盲目だとよく言ったものですが、実際もこんな風に盲目的になってしまうのでしょうか。
覆水盆には帰らずと言うことわざがあるように世の中には一度起こってしまったことは取り返しがつかなくなることが多くあります。
死んだ人が生き返ることがないのもその一つであるとマンドラゴラは思います。
この後、アリーヤ王子は焼けつく様な後悔を抱きながらもどうする事のできない現状に嘆き苦しみ続けることになるでしょう。
それでも、スティアが救われる訳ではありません。
権力が持つ力は恐ろしく、取り返しのつかない事態を巻き起こし、後悔しても時間が巻き戻ることはないと言う話でした。
何か良く分からないことを長々とすみません。
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