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第五章 本多瑞季の場合
七 ◯本多 瑞季【 1月9日 午後1時40分 】
しおりを挟むいてもたってもいられず、その日のうちに私は件のペットボトルを回収するため、地下鉄西街駅に赴いた。檜山さんからのメッセージにあったコインロッカーは、改札真横で見つけることができた。あまり意識したことが無いので、そんな目立つところにあるというのに、見つけた時は場所が場所で驚いたものだ。
確か、指定されたロッカーのナンバーは。…すぐに頭に出てこない。メッセージを読んだのは午前中の事だというのに。全く、この物忘れの多さには自分でも腹が立つ。仕方なく携帯電話を取り出し、メッセージ本文を読み返す。そうだ、「1」だ。ナンバーワンのワンだ。
「よし…」携帯電話を仕舞う。そのままナンバー「1」のロッカーの前に立ち、テンキーで解除キーである番号を打ち込んでいく。
(あれ?なんで私、こんなにすんなり…)
ピー、と音が鳴った。どうやら無事に認証されたようだ。
取手に手をかけ、扉を開ける。中にはペットボトルが一本置かれていた。スーパーでよく販売されている、全体が薄茶色、英字で「milk tea」の製品名が書かれたラベル。開封はされていないように見える。ロッカーに手を入れ、ペットボトルを掴む。それをそのまま、バッグの中に入れた。とりあえず、十日以降これをちづるの鞄に入れるだけ。私がやることは、それだけ。
いつのタイミングが良いか。一番は、彼女と同じシフトの時、面と向かって渡すか、それか更衣室の彼女のロッカーの番号を盗み見る形で覚え、密かに扉を開けて入れるか。
とりあえず、彼女にこれが行き渡りさえすればそれで良い。別に私が渡したと分かる必要は無い。そこまで、檜山さんからの連絡には入っていなかった。
——まあ、後で考えればそれで良いだろう。そのまま私は、コインロッカーを後にした。
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