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「だから、また会えるって言っただろ?」
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「紗奈」
よく通る声で名前を呼ばれた。
あの日と同じ声色で、体の奥に響くような湿った色のある声で。
それがあのセックスを嫌でも思い起こして、体が熱を含んでいく。
そこにいた羽琉は、大人びた顔で底意地が悪そうに笑っていた。
「……え、あ、琉生は?」
さっきまでいたはずなのに、今は気配を感じない。
そう聞くと、羽琉は妖しく笑って「実家」と一言だけ答えた。
「車で来たんだけど免許証忘れたかもって行ったら、取りに行くって。さすがに免許証不携帯で運転させるわけにいかないって」
そう言いながら羽琉がピラッと見せたのは、紛れもなく免許証だった。
適当なことを言って、琉生をこの部屋から追い出したらしい。
なんのために?
そんなの決まってる、強引にでも二人きりになるため以外にあるわけがない。
「兄貴もバカだねえ。いくらなんでも免許証なしで運転とか、危ないことするわけないのに」
羽琉はそう言った後、紗奈の頭を優しく撫でて「2週間ぶりだね」と笑った。
それがあまりにも無邪気で、あの日の彼と違ったふうに見えた。
あの日は夜だったからか、もっと大人っぽく見えていたのに。
「……私が琉生の彼女だって知ってて、あんなことしたの?」
睨みつけるように羽琉を見て聞くと、彼は笑った。
少しも悪びれた様子もなく、それがどこか憎らしくも見える。
琉生と少し似た目が紗奈を捕らえて、妖しく歪んだような気がした。
「だから、また会えるって言っただろ?」
「………」
「ちゃんと約束を守りに来たんだから、もっと嬉しそうにしろよ」
「……約束?」
「帰り際に言ったの忘れた? 跡が消えるまでに会いに行くって」
羽琉の手がなぞるように鎖骨に触れて、そっと服を軽くずらす。
そこについていたはずのキスマークはほとんど消えて、微かに跡が見える程度だ。
羽琉の手を振り払う仕草で「……やめて」と言うと、反対に掴まれて強く抱き寄せられた。
そのまま唇を重ねられて、それに抵抗のひとつもできなかった。
「…っ私、琉生と付き合ってるんだよ?」
一瞬のキスの後でそう言うと、なにを今さら、と言うように羽琉は笑った。
そんなことは最初から、体を重ねる前から彼は知っていた。
求めたのは自分もそうだけど、羽琉はどうして抱いたんだろう。
琉生の彼女だと知りつつ、なぜ。
「なにも兄貴と別れろって言ってないし、言うつもりもない」
「えっ?」
「兄貴が付き合う彼女がどんななのか興味があった。それになにより、アイツから大事な彼女を奪ってやりたかった」
羽琉はさっきとは違うどこか冷たい目をして、はっきりとそう言った。
ここにいない琉生を見るような瞳には、暗いものがあるようだった。
そして、迷いも偽りもない様子で言葉を放った。
「――俺、兄貴のこと大っ嫌いだから」
どうしてそこまで琉生を嫌うのかわからない。
でも、優しかったはずの瞳が歪むのを見るのはなんだか嫌だった。
「……じゃあ私を抱いたのは琉生を見返すためとか、そういうこと?」
そう聞くと、口元を緩めて羽琉は小さく笑った。
そこにはもうさっきまでの暗い瞳はなく、優しい色が滲んでいた。
「もしそうだって言ったらどう思う? 紗奈はショックを受ける?」
……どう、だろう。
あの日に抱いた理由が欲望だけじゃなく、琉生を嫌っていたからだとしたら。
そんなのは関係ないしどうでもいい、と思う気持ちの傍ら、ほんの少し落ち込んでしまう。
あんなに満たされたセックスが、とても空っぽのように思えた。
「なんてね、もしそれだけだったらあんなに何度も抱いたりしない」
「えっ?」
「一度で済まなかったのは、紗奈の体がよかったから。俺が夢中にさせられた」
「………」
「会いに来たのも、一夜限りにしたくなかったからだ」
羽琉は熱の篭った声で「忘れられなかったんだよ」と呟き、また強引に唇を重ねた。
よく通る声で名前を呼ばれた。
あの日と同じ声色で、体の奥に響くような湿った色のある声で。
それがあのセックスを嫌でも思い起こして、体が熱を含んでいく。
そこにいた羽琉は、大人びた顔で底意地が悪そうに笑っていた。
「……え、あ、琉生は?」
さっきまでいたはずなのに、今は気配を感じない。
そう聞くと、羽琉は妖しく笑って「実家」と一言だけ答えた。
「車で来たんだけど免許証忘れたかもって行ったら、取りに行くって。さすがに免許証不携帯で運転させるわけにいかないって」
そう言いながら羽琉がピラッと見せたのは、紛れもなく免許証だった。
適当なことを言って、琉生をこの部屋から追い出したらしい。
なんのために?
そんなの決まってる、強引にでも二人きりになるため以外にあるわけがない。
「兄貴もバカだねえ。いくらなんでも免許証なしで運転とか、危ないことするわけないのに」
羽琉はそう言った後、紗奈の頭を優しく撫でて「2週間ぶりだね」と笑った。
それがあまりにも無邪気で、あの日の彼と違ったふうに見えた。
あの日は夜だったからか、もっと大人っぽく見えていたのに。
「……私が琉生の彼女だって知ってて、あんなことしたの?」
睨みつけるように羽琉を見て聞くと、彼は笑った。
少しも悪びれた様子もなく、それがどこか憎らしくも見える。
琉生と少し似た目が紗奈を捕らえて、妖しく歪んだような気がした。
「だから、また会えるって言っただろ?」
「………」
「ちゃんと約束を守りに来たんだから、もっと嬉しそうにしろよ」
「……約束?」
「帰り際に言ったの忘れた? 跡が消えるまでに会いに行くって」
羽琉の手がなぞるように鎖骨に触れて、そっと服を軽くずらす。
そこについていたはずのキスマークはほとんど消えて、微かに跡が見える程度だ。
羽琉の手を振り払う仕草で「……やめて」と言うと、反対に掴まれて強く抱き寄せられた。
そのまま唇を重ねられて、それに抵抗のひとつもできなかった。
「…っ私、琉生と付き合ってるんだよ?」
一瞬のキスの後でそう言うと、なにを今さら、と言うように羽琉は笑った。
そんなことは最初から、体を重ねる前から彼は知っていた。
求めたのは自分もそうだけど、羽琉はどうして抱いたんだろう。
琉生の彼女だと知りつつ、なぜ。
「なにも兄貴と別れろって言ってないし、言うつもりもない」
「えっ?」
「兄貴が付き合う彼女がどんななのか興味があった。それになにより、アイツから大事な彼女を奪ってやりたかった」
羽琉はさっきとは違うどこか冷たい目をして、はっきりとそう言った。
ここにいない琉生を見るような瞳には、暗いものがあるようだった。
そして、迷いも偽りもない様子で言葉を放った。
「――俺、兄貴のこと大っ嫌いだから」
どうしてそこまで琉生を嫌うのかわからない。
でも、優しかったはずの瞳が歪むのを見るのはなんだか嫌だった。
「……じゃあ私を抱いたのは琉生を見返すためとか、そういうこと?」
そう聞くと、口元を緩めて羽琉は小さく笑った。
そこにはもうさっきまでの暗い瞳はなく、優しい色が滲んでいた。
「もしそうだって言ったらどう思う? 紗奈はショックを受ける?」
……どう、だろう。
あの日に抱いた理由が欲望だけじゃなく、琉生を嫌っていたからだとしたら。
そんなのは関係ないしどうでもいい、と思う気持ちの傍ら、ほんの少し落ち込んでしまう。
あんなに満たされたセックスが、とても空っぽのように思えた。
「なんてね、もしそれだけだったらあんなに何度も抱いたりしない」
「えっ?」
「一度で済まなかったのは、紗奈の体がよかったから。俺が夢中にさせられた」
「………」
「会いに来たのも、一夜限りにしたくなかったからだ」
羽琉は熱の篭った声で「忘れられなかったんだよ」と呟き、また強引に唇を重ねた。
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