ワンナイトラブの相手は彼氏の弟でした

羽月咲羅

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「同窓会に行って、本当になにもないと思う?」

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「ねえ琉生、元カノとか好きだった人とか、明日の同窓会に来たりするの…?」

 不安そうな顔でそう聞くと、琉生は驚いたように瞬きをしてから小さく笑った。
 その態度に苛立ちを覚えてムッとするも、彼は頭を撫でるだけ。
 それが子供にするみたいなのに、見つめてくる瞳が優しくて文句のひとつも言えなくなる。

「そんなこと考えてたの? だから、こんな甘えてくるんだ?」
「……だって」
「はは、そんな心配しなくても、俺の今の彼女は紗奈でしょ」

 ――今の彼女。
 ってことは、その前にも付き合ってた彼女が他にいたということになる。
 琉生の年齢を考えればそれは当たり前で、出会う前の恋愛遍歴はどうしようもない。
 わかってるのに、自分の知らない琉生を知ってる人がいるのはやっぱり嫌だ。

「……質問の答えになってない」

 可愛くない態度だけど、こればかりは仕方ない。

「関係ないよ、過去のこととか」
「え?」
「俺が好きなのは紗奈だから。他の女のことなんか興味ないから」
「………」
「だから不安に思わなくていいよ。ちゃんと帰ってくるから」

 琉生はまっすぐ見つめて言って、ギュッと優しく抱きしめてくれた。
 紗奈はそれ以上のことは言えず、うん、と頷いて答えるだけ。

 琉生はいつも優しい。
 セックスこそしてくれなくても、こうして抱きしめてキスしてくれる。
 不安だって言えば、『好き』の気持ちをたくさん伝えてくれる。
 そこにある気持ちが本当に恋愛感情としてのものなのかわかりかねるけど、それでも琉生はいつも自分の元に帰ってきてくれる。
 明日だって、ちゃんと。

「約束、ね?」

 幾度となくキスを繰り返した後、「風呂に入ってくる」と言って琉生は離れていってしまった。


 バスルームへと向かう琉生の背中を見送り、紗奈は息を吐いた。
 明日のこととか紅音のこととか、気にしないでいようと思うのにそうできない。
 そう思うだけ気にせずにはいられなくて、どうしても考えてしまう。

「はー…」

 ため息が漏れる。
 琉生のことを疑ってるわけじゃなく、二人で過ごした時間があるだけ想いも培ってきたんだって思ってる。
 彼の気持ちの形がはっきり見えなくても、そこにある気持ちは本物だって。
 今まで女の影を感じたことはないし、セックス以外で不安に思うことはなかった。
 嫉妬したりすることもなかったのに、今はこんな些細なことでモヤモヤする。

 その時、ピロンッ、と音が鳴った。
 それはテーブルに置きっぱなしになっていた琉生のスマートフォンからで、つい手が伸びてしまいそうになる。
 その衝動をなんとか必死に抑え、ダメだと自分に言い聞かせた。



「兄貴と仲いーね」

 不意にその声が聞こえたと思ったら、そこには羽琉が立っていた。
 琉生のスマートフォンに手を伸ばそうとしていた時で、思った以上に驚いてしまった。
 紗奈はなんでもないふうを装い、いきなり現れた彼を見つめた。

「あんなふうに兄貴に甘えて、なんだかんだラブラブだなぁ」
「……見てたの?」
「こんなとこでイチャついてたら、見たくないものでも目に入るって」
「………」
「でも、随分ガキみたいなキスすんだね。中学生みてぇ」

 そんなことを言われて、顔が赤くなってしまった。
 軽く唇が触れる程度のキスをしてほしいわけじゃない、それに満足してるわけじゃない。
 もっと求めて食べてしまうような、あの時の羽琉みたいなキスをしてほしい。
 思わず羽琉に抱かれた夜のことを思い出して、体が熱を持つ。
 甘い声が脳裏に響いて、体を疼かせる。
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