ワンナイトラブの相手は彼氏の弟でした

羽月咲羅

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「傷つけるすべてのもんから、俺が守ってやるよ」

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「…羽琉、あの…」

 その先の言葉を言おうとする前に、そっと軽く唇を重ねられた。
 琉生と同じ軽いキスなのに、琉生にされた時よりも気持ちいい。
 額や頬にも落ちる唇がくすぐったく感じるほど、羽琉のそれは優しすぎた。

「キスしてほしいって顔してる気がしたんだけど、違った?」
「…な、んでわかったの」
「紗奈のことはなんでもわかるよ。今までたくさん触れてきたしね」
「………」
「まだしてあげよっか? なんて、俺がしたいからするんだけど」

 何度も重なる唇はやっぱり優しくて、紗奈はそれを受け入れる。
 でも、軽く触れるだけなのが物足りなくて、自分から舌を割り込ませた。
 羽琉はそれに一瞬だけ驚きの表情を浮かべたけど、拒絶は見せない。
 それどころか応えてくれて、舌を激しく絡み取られた。

「紗奈、もっと口開けて?」

 言われたとおりにすると、脳がとろけそうなキスが降ってきた。
 それに夢中になって、目の前の羽琉しか見えない。

「…んっ……はぁ…」

 本当に癖になるほどに羽琉が与えてくれるものは気持ちよすぎて、琉生とのキスが掻き消されてしまうほど他のものは見えなくなる。
 ずっとこうして触れていたいと思うなんて、重症かもしれない。
 だって羽琉は、いつも望むことをなんでもしてくれるから。

「とろけた顔してんね。まだする?」
「…っうん」
「ふ、素直でかわい。止まんなくなっても知んないよ?」

 琉生がいるのに、ここで最後までするわけにいかない。
 わかっているのに、羽琉とのキスが気持ちよすぎて欲しくなる。
 セックスとかじゃなくて、ただ温もりを感じられるならいい。
 こうして触れ合うだけで満たされる感覚があって、ずっとキスしていたかった。

「…っだって、羽琉のキス、気持ちい…っ」

 思いのままに言うと、羽琉の動きが一瞬だけ止まった。
 まだ触れてほしいと思っていた自分としては、それが物足りない。

「…羽琉? もうキス終わり?」

 しゅんと落ち込んだ顔で聞くと、また甘いキスが落ちてくる。
 それが優しくて、キスの合間に「…もっと」と求めた。
 羽琉のキスはいつも癖になるほどに気持ちよくて、狂わされそうになる。
 こんなふうに誰かを求めたことなんてないのに、羽琉はそういう気持ちにさせる。
 キスしてほしくて、触れてほしくて、なにより抱いてほしくなる。

「紗奈、俺にするみたいに兄貴にこんなふうに煽ったりしてねえよな?」
「えっ?」
「紗奈にそんな誘われたら、さすがの兄貴も抱きたくなるかもしんないじゃん」
「………」
「俺、紗奈のそういう顔とか、兄貴にも誰にも見せたくないって思ってんだけど」

 羽琉はほんの少し眉尻を下げて、至近距離で見つめてきた。
 何度もキスしてセックスもしてるのに、吐息が触れるだけで胸が高鳴る。

「――紗奈、俺だけ見ろよ」

 まるで体だけじゃなく心まで欲しがってるような言い方をする。
 そうやっていつもいつも人を振り回すんだ、この男は。

 羽琉がこんなことを言うのは、琉生が嫌いだから?
 当てつけに私を抱いて、琉生から奪おうとしているの?
 そこに気持ちがないのに?

 だって、羽琉は言った。
 誰からも愛されてこなかった自分が愛なんて不確かなものを信じられるわけがない、と。
 それって誰にも本気にならないって、そういうことでしょう?
 どれだけ甘いキスをしてくれても優しい言葉をかけてくれても、羽琉が向けてくるものは恋じゃない。
 最初からわかっていたのに、どうしてそれに悲しくなるんだろう。
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