63 / 82
「傷つけるすべてのもんから、俺が守ってやるよ」
(4)
しおりを挟む
「じゃあ羽琉も、私だけを見てくれるの?」
なに言ってるんだろう。
琉生と付き合ってるのに、羽琉を特別な目で見るわけにはいかないのに。
でも、羽琉が自分以外の女を抱いたりするのは考えただけでも嫌だ。
こんな嫉妬なんて、まるで羽琉のことが好きみたいじゃない。
「ーー見てるよ、とっくに」
もうなんなの、この男は。
肝心なことはなにも言ってくれないくせして、気を持たせることばかり。
こんなふうに甘いキスと優しい言葉で心を持っていこうとするんだから、本当にズルい。
触れてくる手は温かくて、まるで自分のためだけにあるような錯覚に陥る。
だから、卑怯だとわかっていながらもつい思わずにはいられなくなる。
羽琉が抱くのは自分だけがいい、なんて。
そう思ってしまうのは、幾度となく繰り返されたセックスのせいか。
こんなことを思う自分はひどく汚れてるみたいで、そして狂ってる。
「紗奈、なんかあったら言えよ。傷つけるすべてのもんから、俺が守ってやるよ」
きゅんとしてしまった。
そんなこと琉生ですらも言ってくれたことはないのに、羽琉が言うなんて。
ーーねえ羽琉、そんなこと言ったら本当に自惚れちゃうよ?
「……それ、私のことが好きって言ってるみたいに聞こえるよ?」
ギュッと羽琉の服の裾を掴んで言うと、彼は切れ長の瞳を柔らかく細めた。
その眼差しで身動き取れなくなって、心まで捕らわれる気になる。
「もし俺がそういう気持ちになったら変? 紗奈は嫌?」
「……そんなことないけど、でも羽琉は誰かを好きにはならないでしょ?」
「まあね、今まではそうだったね」
「えっ?」
「けど、これからはわからない。どうなるかなんて俺にもわかんねえよ?」
それは……そうなるかもしれないって、そういうこと?
どうして、そんな心を揺さぶるようなことを言うの?
自惚れたくないのに、勘違いしたくないのに、期待してしまう。
琉生という彼氏がいるのにそうだったらいい、なんて、思ってしまう。
だから、これ以上そんなふうに心に入ってこようとしないで。
「俺だけじゃない、紗奈だってそうだろ?」
えっ、と戸惑いの声を上げるのを見て、「ずっと兄貴といるとは限らない」とはっきりと言われてしまった。
そんなことない、ずっと一緒にーーそう言えなかったのが悲しかった。
少し前まではたとえ体の繋がりがなくても、心は繋がっていると思えたのに。
今は信じていたものが崩れているようで、きっと紗奈も琉生も同じものを見ていない。
不変なんてないのに、少しずつ変わっていくものに物悲しさを覚えていた。
「人の気持ちは変わる。だから、過去とか未来じゃなくて今を見なきゃいけない。現実から目を逸らしたらダメなんだよ」
その言葉は、やけに胸に突き刺さった。
琉生との関係に怠けてるわけじゃない、でも今の状態じゃ未来は見れない。
だって二人して同じ方向を見ているふりして、本当は交錯してないんだから。
それはちゃんとわかってるけど、現実をちゃんと見るのがつらい。
琉生が浮気してるかもしれない、という疑惑が確証に変わるのが怖い。
もし本当に紅音と特別な関係だったとしたらーーそう思うと、胸の奥がキリキリと痛む。
なに言ってるんだろう。
琉生と付き合ってるのに、羽琉を特別な目で見るわけにはいかないのに。
でも、羽琉が自分以外の女を抱いたりするのは考えただけでも嫌だ。
こんな嫉妬なんて、まるで羽琉のことが好きみたいじゃない。
「ーー見てるよ、とっくに」
もうなんなの、この男は。
肝心なことはなにも言ってくれないくせして、気を持たせることばかり。
こんなふうに甘いキスと優しい言葉で心を持っていこうとするんだから、本当にズルい。
触れてくる手は温かくて、まるで自分のためだけにあるような錯覚に陥る。
だから、卑怯だとわかっていながらもつい思わずにはいられなくなる。
羽琉が抱くのは自分だけがいい、なんて。
そう思ってしまうのは、幾度となく繰り返されたセックスのせいか。
こんなことを思う自分はひどく汚れてるみたいで、そして狂ってる。
「紗奈、なんかあったら言えよ。傷つけるすべてのもんから、俺が守ってやるよ」
きゅんとしてしまった。
そんなこと琉生ですらも言ってくれたことはないのに、羽琉が言うなんて。
ーーねえ羽琉、そんなこと言ったら本当に自惚れちゃうよ?
「……それ、私のことが好きって言ってるみたいに聞こえるよ?」
ギュッと羽琉の服の裾を掴んで言うと、彼は切れ長の瞳を柔らかく細めた。
その眼差しで身動き取れなくなって、心まで捕らわれる気になる。
「もし俺がそういう気持ちになったら変? 紗奈は嫌?」
「……そんなことないけど、でも羽琉は誰かを好きにはならないでしょ?」
「まあね、今まではそうだったね」
「えっ?」
「けど、これからはわからない。どうなるかなんて俺にもわかんねえよ?」
それは……そうなるかもしれないって、そういうこと?
どうして、そんな心を揺さぶるようなことを言うの?
自惚れたくないのに、勘違いしたくないのに、期待してしまう。
琉生という彼氏がいるのにそうだったらいい、なんて、思ってしまう。
だから、これ以上そんなふうに心に入ってこようとしないで。
「俺だけじゃない、紗奈だってそうだろ?」
えっ、と戸惑いの声を上げるのを見て、「ずっと兄貴といるとは限らない」とはっきりと言われてしまった。
そんなことない、ずっと一緒にーーそう言えなかったのが悲しかった。
少し前まではたとえ体の繋がりがなくても、心は繋がっていると思えたのに。
今は信じていたものが崩れているようで、きっと紗奈も琉生も同じものを見ていない。
不変なんてないのに、少しずつ変わっていくものに物悲しさを覚えていた。
「人の気持ちは変わる。だから、過去とか未来じゃなくて今を見なきゃいけない。現実から目を逸らしたらダメなんだよ」
その言葉は、やけに胸に突き刺さった。
琉生との関係に怠けてるわけじゃない、でも今の状態じゃ未来は見れない。
だって二人して同じ方向を見ているふりして、本当は交錯してないんだから。
それはちゃんとわかってるけど、現実をちゃんと見るのがつらい。
琉生が浮気してるかもしれない、という疑惑が確証に変わるのが怖い。
もし本当に紅音と特別な関係だったとしたらーーそう思うと、胸の奥がキリキリと痛む。
0
あなたにおすすめの小説
俺にお前の心をくれ〜若頭はこの純愛を諦められない
ラヴ KAZU
恋愛
西園寺組若頭、西園寺健吾は夕凪由梨に惚れた。
由梨を自分の物にしたいと、いきなり由梨のアパートへおしかけ、プロポーズをする。
初対面のヤクザにプロポーズされ、戸惑う由梨。
由梨は父の残した莫大な借金を返さなければいけない。
そのため、東條ホールディングス社長東條優馬の婚約者になる契約を優馬の父親と交わした。
優馬は女癖が悪く、すべての婚約が解消されてしまう。
困り果てた優馬の父親は由梨に目をつけ、永年勤務を約束する代わりに優馬の婚約者になることになった。
由梨は健吾に惹かれ始めていた。でも健吾のプロポーズを受けるわけにはいかない。
由梨はわざと健吾に嫌われるように、ある提案をした。
「私を欲しいなら、相手になります、その代わりお金頂けますか」
由梨は健吾に囲われた。
愛のないはずの優馬の嫉妬、愛のない素振りをする健吾、健吾への気持ちに気づいた由梨。
三人三様のお互いへの愛。そんな中由梨に病魔が迫っていた。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
お見合いから本気の恋をしてもいいですか
濘-NEI-
恋愛
元カレと破局して半年が経った頃、母から勧められたお見合いを受けることにした涼葉を待っていたのは、あの日出逢った彼でした。
高橋涼葉、28歳。
元カレとは彼の転勤を機に破局。
恋が苦手な涼葉は人恋しさから出逢いを求めてバーに来たものの、人生で初めてのナンパはやっぱり怖くて逃げ出したくなる。そんな危機から救ってくれたのはうっとりするようなイケメンだった。 優しい彼と意気投合して飲み直すことになったけれど、名前も知らない彼に惹かれてしまう気がするのにブレーキはかけられない。
雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
和泉 花奈
恋愛
主人公の観月 奈緒(25)は、ある日突然仕事に行けなくなり、ずっとお家の中に引きこもっている。
そんな自分を変えたくて足掻き苦しんでいるが、なかなかあと一歩が踏み出せずにいる。
勇気を出して家から出た奈緒は、たまたまぶつかった須藤 悠翔という男に出会い、運命が大きく揺れ動く。
※突然で申し訳ないのですが、投稿方式を変えました。
これまで1〜3話をまとめて1話にしておりますが、各話1話ずつそれぞれで公開することにしました。
急な変更に伴い、読者の皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
これからも引き続き作品の応援をよろしくお願い致します。
2025/10/21 和泉 花奈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる