【完結】硬派な殿下は婚約者が気になって仕方がない

らんか

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25.注目の的

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「いや~面白いものが見れたな! あのギアスを制御出来るなんて、素晴らしい令嬢じゃないか! ギアス! 私にも紹介してくれ!」
 
 そう言ってこちらにやって来られたのは、まさかの魔術師団本部団長であり、王弟でもあるサイラス大公様だった。
 
「叔父上」
 
 今まで一連のやり取りを黙って見ていたイアン様が、サイラス大公様に声を掛けた。
 
「お? イアンじゃないか! 此度の遠征はご苦労だったな! お前もギアスを祝いに来てくれたんだな」
 
 笑顔でそう話すサイラス大公様は、とても気さくな人だ。
 
「このギアスは、前から何度も王都に来いと言っていたんだが、全く首を縦に振らなかったんだ。
 しかし、今回ついに王都に来ることを決心はしてくれたんだ! 私も安心して引退出来そうだよ!」
 
「叔父上はまだまだ引退する歳ではないでしょう。知ってますよ? まだ魔力が上がり続けている事を」
 
「いやいや、流石に限界が見えてるよ。
 あ、それで、こちらのお嬢さんは何処のご令嬢なのかな?」
 
 イアン様の横に黙って立っていた私に気付いた大公様は、そう言ってこちらを見る。
 
 
「叔父上、こちらは私の婚約者のエレノア・ファクソン伯爵令嬢です」
 
「え? イアンの婚約者? 前に見た時とは雰囲気が違って見えるんだが……
 そうか、これは失礼した。
 改めて挨拶をしよう。私はニコル・サイラスだ。魔術師団本部の団長をしている」
 
 サイラス大公が名乗ったので、改めて私も挨拶をする。
 
 
「ご無沙汰致しております、サイラス大公様。改めまして、エレノア・ファクソンでございます。以後お見知りおき下さいませ」
 
「いや、本当に悪かったね。でも、もうちゃんと覚えたから。ギアスを制御できる令嬢なんて、君以外は居ないだろうからね」
 
 そう言ってサイラス大公様はまた笑っている。
 ギアス様、相当気難しかったのだろうか?
 私には分からないけど。
 
「しかし、イアン。お前も珍しいな。婚約してから3年も経つというのに、婚約者とパーティに参加など、初めての事じゃないか?」
 
「婚約してから初めて!? 3年も経つのに!?」
 
 サイラス大公様の言葉に、今度はギアス様が反応し、驚いた顔で私達を見る。
 
 待って待って。
 それって、今、触れるべき問題なのかしら?
 
 この団長と副団長は、やはり空気を読まないもの同士なのだろうか。
 
 今、ここでそれを突っ込んだら、この後どう接すればいいのか分からないじゃないのよ。
 
 
 ついジト目でサイラス大公様を見ると、その視線に気付いたのか、ハッとして顔を背ける。
 
 
「そういえば、砦でもあまりイアン殿下とは話してなかったような? あれ? もしかして……」
 
 
「ギアス殿」
 
 
 ギアス様は空気を読まずにまだ話を続けようとして、イアン様に睨まれた。
 
 うん、ギアス様。
 そろそろ大人になろうね。
 
 
「はは、ギアス。私達はそろそろあちらに行こう。他の皆もお前と話したがっているぞ」
 
 サイラス大公様がギアス様を連れて、この場を離れようとするが、
「え? 何故です? 私はまだエレノア嬢と色々話したい事が……」
 とギアス様はまだ空気を読まない。
 
 再度イアン様に睨まれ、大公様に引きずられるようにして、ようやくギアス様は私達の前から居なくなった。
 
 
「エレノア嬢、少し外に出ようか」
 
 
 その提案は有難い。
 先程のやり取りから、周りからの好奇や嫉妬の視線が激しかった。そしてまだその視線が突き刺さってきているのだ。
 この場を少しでも離れたかった。
 
「はい、そうしましょう」
 
 
 私はすぐに同意し、イアン様と共にバルコニーに出た。
 
 
 バルコニーには、ちらほら人がいるが、先程の好奇の視線や悪意の視線など、幾多にも重なって攻撃を受けている気分から解放され、ホッと一息つく。
 
 ここまで注目を浴びるとは思ってもみなかった。
 
 次にギアス様に会った時は覚悟しておいてほしいものだ。
 
 
「大丈夫か?」
 
 
 ふいにイアン様が私の状態を気にして、声を掛けてくれる。
 
 
「はい、連れ出して下さってありがとうございます」
 
 
 あんな視線を受けるのは、前世でもなかった。
 だから流石に怖かったというのが本音だ。
 
 
「いや……。いい機会だったと思う。
 叔父上やギアス殿の指摘はもっともだ。
 確かに私はこの3年間、婚約者である君を蔑ろにした。申し訳ない事をしたと思っている」
 
 
 そう言ってイアン様は頭を下げた。
 
 
「えっ!? お、おやめ下さいませ! どうか頭をお上げ下さい!」
 
 私はびっくりして、慌ててイアン様にそうお願いする。
 
 確かに、私もこのパーティで、イアン様の考えを確かめようと考えていた。
 しかし、いきなり頭を下げられるとは思わなかったのだ。
 
 これ以上、周りからの好奇の視線は避けたい。第二王子に頭を下げさせるなど、とんでもない所業だ。
 
 
「イアン様、わたくしは気にしておりません!」 
 
 
「え!?」
 
 
 こうなれば、早々にこちらの気持ちを伝えて、円満に婚約解消してもらえるようにしておかないと。
 
 そう考えた私は、断罪回避の為、覚悟を決めた。
 
 
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