【完】瓶底メガネの聖女様

らんか

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 驚いた顔をしている元父を見た私は、もう一度はっきりと言う。

「これ以上、私に近寄らないでください。
 私は、貴方達の家族ではありません」

 私の言葉に、ルイーゼがいち早く反応した。

「はぁ!? 何言ってんのよお義姉様!
 もう皆、知っているのよ!?
 学園でもこの噂で持ち切りだって聞いたんだから!」

 ルイーゼがそう叫んで、こちらに手を伸ばしながら近寄ろうとしてくる。

 (だから、何故あなた達はそんなに私に近寄ろうとするの?
 また昔のように、頭から押さえ付けたいのかしら……?
 本当に人の話を聞かないわね)

 私は心の中でそう考えながら、ソッと溜め息を零す。
 そして私は、ルイーゼが伸ばしてきた手をパシッと払い除けた。

「いい加減になさい、ルイーゼ・ルードグラセフ。
 わたくしはモーリスト侯爵家の娘よ?
 立場を弁えなさい」

 そう言った私の両隣りに、ルーク様とヘンリーお義兄様が私を守るように立ち並んだ。

 (もう……。任せてって言ってるのに、心配性なんだから)

 私が軽くルーク様を睨むと、ルーク様は軽く微笑んで、肩を竦めた。
 目の前には、払い除けられた手を押さえながらこちらを睨め付けているルイーゼがいる。
 きっと、またすぐに私に手を出そうとするルイーゼを押さえつける為に待機してくれているんだろう。
 
 私は二人の優しさに心の中で感謝して、そのまま話を進めて行く事にした。

 私に手を払い除けられたルイーゼは、一瞬呆然とするも、すぐに我に返って私を睨みつけてくる。
 そのルイーゼの元にいち早く駆けつけたナタリーが、聞いた事もないような猫なで声で私に話しかけてきた。

「何をするの? オリビア、貴女はこのような事をする人ではなかったわよね?
 こんなにあなたの事を心配している私達を、貴女はモーリスト家の養女になれたからと他人のフリをすると言うの?」

 憐れんだ様子で、悲しそうにそう言うナタリーを見て、周りがざわりと反応する。
 その反応を見て、ナタリーが小さくほくそ笑んだのを、私は見逃さなかった。
 
 ナタリーは、何とかして私を悪者にし、この場を自分達に優位に仕向けようとしているのが手に取るように分かる。
 ならば、そのさらに上をいって、この場を掌握すればいい。

にそのように呼ばれるなんて、初めての事ですね。
 びっくりしました。伯爵家に居た頃は名前など、呼ばれたこともなかったものですから」

 私はそう話を切り出して、ルードグラセフ伯爵家の三人を見据えた。
 
「確かに私は、ルードグラセフ伯爵家の娘でした。
 でもそれは、母である、前ルードグラセフ女伯が生きていた頃までの事です。
 母の死後は、すぐに父が後妻と連れ子を連れて来て、私の部屋だった所はその連れ子、ルイーゼの部屋となり、私は使用人棟に追いやられましたから。
 その後、使用人かそれ以下の扱いを受け、奥様には目の入る場所に来るなといつも叱責を受けていましたもの。
 それに、父であったには、お前の目の色と髪の色を見ると、私の母を思い出すからと、髪色を染められ、前がよく見えないくらいの瓶底メガネを私にかけさせて、目の色も誰の目にも触れないようにされました。
 義理の妹になった人は、呼び名こそお義姉様と呼んでいましたが、事ある毎に濡れ衣を着せられ、奥様や旦那様から怒られるように仕向けられていました。
 また、義妹は私の持ち物を全て"ちょうだい"の一言で奪っていきましたが、中でも一番許せなかったのは、私の母の物や、母から贈られた思い出の品、形見の品も全て奪っていった事です。
 そのような事をする人達をどうして家族と思えますか?
 なので、今のルードグラセフ伯爵家には、私の家族はいないと言ったのです」

 一気にそう話した私は、ホッと一息つく。
 よくも噛まずにこんなに言えたものだと、自分で感心してしまったくらいだ。

 そして案の定、伯爵家に居た頃の私なら絶対に言わないような、反抗的とも取れる態度を示した私を、元父、ナタリー、ルイーゼは、目を見開いて凝視していた。


「まぁ! 実娘に旦那様と呼ばせていたなんて!」
「あの素晴らしい髪色と目を隠させるなんて、何て事を。
 あれはルードグラセフ伯爵家に引き継がれている色だろ?」
「形見の品などを奪うなんて、人としてどうかと思うな」
「娘を使用人棟に追いやって、使用人として使うだなんて、有り得ないわ」

 などなど、周りで話を聞いていた人達がコソコソと囁き始めた。

 その囁き声で、カーターはハッと我に返った。
 隣りに居るナタリーは、怒りで身体を小刻みに震わせている。
 ルイーゼに至っては、驚きのあまり、口をパクパクして、言葉が出てこない様子であった。

 
 
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