【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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王立学園編~前編

30.宝玉の在処

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 アリアは最近機嫌が良い。
 聖属性魔法の授業では、いつも褒められ、逆に悪役令嬢のエマはいつも注意を受けている。
 アストナ先生は、いつもアリアを気にかけていて、何かと優しく話しかけてくる。
 見た目抜群の好青年に、特別に扱って貰えているのが楽しくてたまらないのだ。
 
 (流石は女神様のラッキーアイテム! 効果抜群じゃない! まさか、あのアストナ先生が私にこんなに夢中になってくれるなんて!)
 
 アリアは虹色のビー玉に自分の願いを込めて祈った日から、肌身離さず虹色のビー玉を持ち歩いていた。
 
 学園入園前に王妃様のお茶会では、ペンダントにして身に付けたが、いつの間にかペンダントトップの金具がビー玉の大きさに合わなくなっていた為、今は自分で小さな巾着袋を作り、巾着袋の中にビー玉を入れてから、スカートのポケットの中に入れて持ち歩いている。
 
 (効果がなくならないように、常に持ち歩いていないといけないわね。それに女神様のラッキーアイテムだもの。万が一、誰かに盗られでもしたら大変だものね)
 
 そう思いながら、ポケットの中から巾着袋を取り出し、中からビー玉を取り出す。
 
「あら? こんな色だったかしら? 女神様から貰った時はもっと虹色に輝いていたと思ったけど……。やっぱり年月と共に劣化していくのかな?」
 
 そう言いながら、ビー玉を持ち上げて太陽に透かしてみる。
 
「きっと、やっぱり劣化ね。まぁ仕方ないか。いつまでも新品同様のままのはずないものね。効果があるだけでも有難いわ」
 
 そう言ってまた巾着袋に入れてからポケットに戻した。
 
「さぁて、そろそろみんなでお茶会の時間ね。今度はラッキーアイテムにオリバーの事もお願いしてから、オリバーもお茶会に誘ってみようかなぁ」
 
 アリアは、そう言いながら鼻歌でも歌いそうなくらい上機嫌で喫茶室の方向に歩き出した。
 
 
 
 
 
「グレイ、見た?」
 
「ああ、あれが宝玉だな? 前に見た時は小さな赤い魔石に見えたけど、今回は倍近くの大きさの赤黒い石に見えたぞ」
 
「へぇ。グレイにはそう見えたのね。私には色んな色が濁ったような不透明なガラス玉に見えたわ。大きさは確かに前より倍近くになってると思う」
 
 
 私は想像魔法を使って、宝玉探しの為にアリアの行動を出来るだけ監視していた。
 
 追跡魔法で監視カメラ付きのてんとう虫を作り出し、アリアが宝玉を手にした時に、私に連絡が入るようにしたのだ。
 
 連絡を受けて、直ぐにグレイに伝え、その様子を空間魔法で映像として映し出して、2人で確認した。
 
 その結果、アリアが今、宝玉を身につけていることが確認出来たのだ。
 
 
「グレイ、さっそく取り返しに行きましょう!」
 
 
 私がそう言うと、グレイも頷く。
 
 
 
 ここ数日の監視で、放課後は喫茶室の貴賓室で第1王子らと共にお茶会をする事が分かった。
 
 きっと今もお茶会をしていることだろう。
 
 
 私とグレイは喫茶室に向かい、アリアがいる事を確認する。
 
 
「人目がある今は、すぐに回収するのは難しいな。チャンスが来るのを待つか」
 
 そういうグレイに、私は得意気に言った。
 
「新しい想像魔法を作ったの。ちょっと高度で沢山魔力を使うから、その効果は5分くらいしか持たないけど、グレイならその5分で十分よね?」
 
「新しい想像魔法? どんなのだ?」
 
「まぁ見てて」
 
 
 そして私は新しい想像魔法を駆使する。
 
 すると、私とグレイ以外は全ての時が止まった。
 
「えっ? どうなっている?」
 
 グレイが周りを見回しながら、焦って私に聞いてくる。
 
 
「魔法で少しの間、時を止めたの。だから、今なら安全にアリアから宝玉を取り返す事が出来るわよ」
 
 
 私は得意気に説明したその時、貴賓室から声が聞こえた。
 
 
 
 
「どうなってるの!? ねぇ! アステル様! レクター! マイク! 動いてよ! 一体何なのこれは!」
 
 
 アリアの声だ。
 
 
 
「え? 何でアリアは動けるの?」
 
 
 私は動揺した。
 この魔法は、私が決めた人以外の時間を止める魔法だ。
 時を止める魔法が使えた事が嬉しくて、まさか、この魔法が効かない人がいるなんて想像もしていなかった。
 
 
「おい! しっかりしろ!」
 
 グレイが私を揺さぶりながら、動揺する私に喝を入れる。
 
「とにかく、一旦この魔法を解け! 当の本人に効かないんじゃ意味がない! アリアに怪しまれるだけだ!」
 
 
 そうだ。グレイの言う通りだ。
 
 
 私はすぐに魔法を解除した。
 
 あっという間に周りの時間が動き出す。
 
 そして、こっそり貴賓室を覗くと、普通に動いているアステル達を見てアリアがびっくりしている様子が見えた。
 
 
「アステル様! マイク! レクター! 大丈夫なの!?」
 
 そう叫ぶアリアに、アステル達は不思議そうに首を傾けている。
 
「どうした、アリア? 何かあったのか?」
「そうですよ。アリア、一体どうしたんです?」
「急に大声出して、びっくりしたぞ。アリア、大丈夫か?」
 
 
 普通に動いて会話するアステル立ちを見て、狐につままれたような表情をするアリアだが、取り敢えずお茶会を再開する事にしたようだ。
 
「何か私、疲れてるのかな? あっ! でも大丈夫よ? みんなとのお茶会をした方が疲れも吹き飛ぶから!」
 
 そう言ってアリアはみんなと談笑を始めた。
 
 
 
 
「エマ、今日はもう諦めよう。身に付けていると分かっただけでも十分収穫はあった」
 
 グレイはそう言って、この場から離れるよう私に勧める。
 
 
「そうね。うん、グレイ。戻ろう」
 
 
 私たちは喫茶室から出ていき、今日は帰宅する事にした。
 
 帰り支度をして馬車乗り場に向かう途中、グレイに聞いてみる。
 
「ねぇ、何でアリアには私の魔法が効かなかったと思う?」
 
 私の質問にグレイは、少し考え込んでから答えた。
 
「多分だけど……。ラケシス様の神力をたっぷりと含んだ宝玉を身に付けていたからかと。あの宝玉はラケシス様と同様の力が含まれているからね」
 
 
「なるほど……」
 
 
 考え込む私をチラリと見ながら、グレイは続けて言った。
 
 
「または、アリアも転生者だからエマの魔法が効かなかった可能性も否めない」
 
 
 そういう可能性もあるのか……。
 
 
 これで時を止める想像魔法はアリアに効かない事が分かった。
 
 
 また一から計画を立て直そう。
 
 
 そう考えながらその日は帰途についた。
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