【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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宝玉編~

56.娘

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「え……今、なんて……?」
 
 
 アリアがその名前を聞いて、驚きを露わにしながらレイラを見る。
 
 
 
「私の前世の名前は○○さやか。
 まさか娘の名前なんて覚えてないのかしら?」
 
 
 レイラはそう言って、アリアを見据える。
 
 
 
「う、嘘よ……。さやかちゃんが何故ここに居るのよ……。あの子は死んでなんか……」
 
 
「時系列の違いかしら?
 私が死んだのは貴女が亡くなってから10年は経ってるものね」
 
 
「そ、そんな……だって、あの時のさやかちゃんはまだ5歳だったはず……。まさか15歳でさやかちゃんは死んだというの!?」
 
 
 アリアは目にいっぱいの涙を浮かべながら、レイラに尋ねる。
 そんなアリアにレイラは突き放すように言った。
 
 
「貴女が死んだ後の事、気にならなかった?
 そうよね、貴女はすぐに転生して自分の幸せだけを望んでいたんだもの。
 でも、残された者はそうじゃない。
 貴女を刺した男性は、貴女を刺した後、すぐに自分をもナイフで刺して死んだの。
 世間ではダブル不倫の末の心中として扱われ、私と父はとても肩身の狭い思いをしたわ。
 相手の奥様も子供二人を抱えて生きていくには辛かったのでしょうね。
 何度もうちに来て、父に罵倒しながらお金をせびりに来ていた。
 父だって被害者なのに、そんな奥様に同情してお金を何度も渡して……。
 でも、徐々に父も心を壊していって、私の事を本当の自分の娘なのかって疑うようになっていったわ。
 飲めないのにお酒を浴びるように飲み始め、精神薬を多量に服用するようになってしまった。
 あんなに優しかった父が人が変わったように、私を殴るようにもなってしまったのよ」
 
 
「う、嘘よ。あの人がそんな事するわけがないわ。だって、あんなにさやかちゃんの事、大事にしてたのに……」
 
 
 
「そうね。大事にしてもらっていた。
 でも、そんな父の心を貴女が壊してしまったのよ。
 1日中何もせずにボーッとしては思い出したかのように、辛そうにお酒を飲む姿、貴女に想像出来る?
 私の顔を見て、お前もアイツが俺を裏切って出来た子供なのか! って蔑むような目で見ながら、暴力を振るわれる私の姿を想像出来る?
 
 全て貴女のせいで壊れていったのよ!
 優しかった父を返してよ!」
 
 
 
 レイラは泣きながらアリアに向かって叫んだ。
 
 
 
 
「嘘よ、うそ……。そんなの知らない……。
 だって、そんなつもりなかった……」
 
 
 そんな言葉を繰り返しながら、アリアはそのレイラの姿を呆然と見ていた。
 
 
 
 
「これで分かったでしょ? 貴女に自分の幸せなんて祈る資格なんてない。
 さぁ、早く宝玉を渡してちょうだい。
 貴女がそれを持っているだけで、全てが壊れてしまうのよ」
 
 
 そう言ってまたレイラはアリアの前に手を出す。
 
 アリアは、そんなレイラを信じられないといったような目で見ながら、宝玉を握りしめた。
 
 
「さやかちゃんなの……? 本当に?
 さやかちゃんは、どうしてそんなに早く死んじゃったの?」
 
 アリアの問いにレイラが苛立たしげに言う。
 
 
「そんなのどうだっていいじゃない。早くそれを渡して」
 
「ちゃんと答えて! でないと渡さないわ!」
 
 アリアの叫びに、レイラはため息を吐いてから話した。
 
 
「栄養失調の末の餓死よ。今時そんな死に方、笑い話にもならない……」
 
 
「何で!? おじいちゃんやおばあちゃんだって居たでしょう?」
 
 
 そんなアリアの叫びに自虐的な笑顔を見せる。
 
 
「母方の祖父母は、貴女の事で心労がたたって早くに亡くなったわ。
 父方の祖父母や親戚は、私が本当に父の子か分からないって疑って、助けてくれなかった。
 父もほとんど家に寄り付かなかったし、私の歳では、仕事も雇ってくれない。
 お金がなくて、誰も頼れなくて、惨めに死んだのよ。
 さぁ、これで満足!?」
 
 
 
 
「いやーーーー!! ああああああぁ!!」
 
 
 
 それを聞いたアリアが急に大きな奇声を発した。
 
 私達はびっくりしてアリアを呆然と見る。
 
 アリアは奇声を発した後、下を向いてブツブツと言っていた。
 
 
「あ! マズイにゃ!!」
 
 
 グレイがそう叫び、アリアの方に駆け出す。
 
 しかし、アリアの所に辿り着く手前でアリアが叫んだ。
 
 
 
 
「願いを叶えて!」
 
 
 
 
 アリアがそう叫んだ途端、宝玉からどす黒い闇が拡がり、ピキピキッと硝子が割れる音がする。
 
 
「熱っ!?」
 
 
 アリアが驚いて手の中の宝玉を確認すると、宝玉は今にも破裂しそなほどの熱気を帯びていた。
 
 
「よこすにゃ!」
 
 
 
 グレイはそう言って、アリアの手を叩いて握り締めていた宝玉を奪い取り、口にくわえて天窓に向かって飛び出していく。
 
 
 
「グレイ!?」
 
 
 
 天窓から出たグレイを見上げた途端、空中で大きな爆発が起こった。
 
 
 
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