【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

文字の大きさ
56 / 66
宝玉編~

55.アリアの過去

しおりを挟む
 
「アリアさん、貴女がどうして転生時に悪役令嬢である魂を勧められたと思います?」
 
 レイラの質問に、アリアはレイラを睨みながら答える。
 
「そんなの知るわけないじゃない! 何かの間違いだったんでしょ! だって私は被害者ですもの。だから神様が転生させてくれたんだものね!」
 
 
「いえ、違います。貴女の転生は、貴女への罰です。だから貴女には、18歳で処刑される運命を背負った悪役令嬢の魂が用意されていました」
 
 
 
 罰? そんな事で転生とか、あるの?
 
 びっくりしてレイラを見る。
 アリアも目を見開いてレイラを凝視していた。
 
 
「あ、貴女、一体誰よ!? 突然出てきて何を知ったかぶりで話してるの!? 貴女、ただのモブじゃないの!
 あっ、もしかして貴女も転生者なの!?」
 
 
「あ、申し遅れました。
 私はレイラ・アスティと申します。
 ですが、それは仮の姿。
 この身体は一時的にお借りしているだけで、私の実体はないのです。
 そして、私もグレイ様と同じでラケシス様の遣いの者でございます」
 
 
 そう言って、陛下や他の方々の方を向いてカーテシーを決める。
 
 陛下達も、レイラの説明に驚きながらも、この場に呼ばれた訳が分かって納得されていた。
 
 
 
「では改めて。
 貴女が悪役令嬢の魂に入るのは貴女への罰。
 前世で貴女は刺されて死にましたよね。
 でも、刺される原因があったでしょう?」
 
 
 そう言ったレイラに、アリアは反論する。
 
 
「し、知らないわよ! あれはあの男の逆恨みですもの! そんな事で刺されるなんて、やっぱり私は被害者じゃないのよ!」
 
 
 
「……元は、貴女が不倫していたからでは?
 貴女は優しい夫と、幼い娘がいたにも関わらず、色んな男性とお付き合いをしていた。夫にバレそうになると、被害者ぶって相手のせいにして……。
 貴女を刺した男性は、男性にも家族がいたのに貴女が誘惑し、また夫にバレそうになったら、その男性に薬を飲まされてホテルに連れ込まれたって嘘をついて訴えて、慰謝料まで請求したそうですね。
 それが原因でその男性は仕事も家庭も失った。
 その男性も家庭を裏切った責任はあるとしても、恨まれても仕方ないのでは?」
 
 
 
 え。すごい。
 昼ドラのような展開⁉︎
 そんな事する人、本当にいるんだ……
 
 
 唖然としながら私はアリアとレイラの話しを聞いていた。
 
 
 
「だから貴女は神からの罰を受けるために悪役令嬢の魂に転生するはずだったのに……。
 家庭からは見放され、誰からも愛されることのない闇属性の素質を持って……。
 人々から裏切られ、最終的には処刑される孤独で悲惨な人生を持った魂に……。」
 
 
 そのレイラの言葉は、とても重くてまるでレイラ自身がアリアの破滅を望んでいるような印象を受けた。
 
 それはアリアも同じだったのだろう。
 
 
「な、なんであんたにそこまで言われなきゃならないのよ! 私は結婚するにはまだ若かったのよ! 子供が出来たから結婚したけど、まだまだ遊んでいたかった!
 だから少し遊んだだけよ! みんなやってる事よ!
 そんな事で殺されたのに、そんな罰をなんで受けなきゃいけないの!」
 
 
 
 そう叫ぶアリアを見るレイラの目はとても冷ややかだ。
 
 
 
「貴女は何処までも自分本位ですね。周りの人の迷惑など全くのお構いなしに行動する。
 その結果、またこの世界でも他人を犠牲にしながら自分の幸せだけを願って、今度はこの世界を破滅に向かわせている」
 
 
「自分の幸せを願って何が悪いの⁉︎ そんなのみんなそうでしょう! 幸せを願った結果がこの世界の破滅だなんて、その方がおかしいわよ!」
 
 
 
 確かに人はみんな自分の幸せを願う。
 人によっては、他人を犠牲にしてまで。
 でも、大半の人はそうじゃない。
 ささいな幸せを願いながら、自分で努力して幸せを掴むのだ。
 
 そう感じていた時、レイラが感情のない声でアリアに言った。
 
 
 
「貴女に幸せを願う権利などない」
 
 
 
 そう言って、レイラはアリアに近づいていく。
 
 
「な、何よ⁉︎ 来ないでよ!」
 
 
 アリアが後ずさるも、レイラは歩みを止めない。
 
 レイラがアリアの目の前まで近寄り、手を出す。
 
 
「さぁ、早くその宝玉を渡しなさい。
 それは貴女が持ってていいものではないわ」
 
 
「はぁ⁉︎ 何なの? あんた、何様なのよ!
 なんであんたに渡さないといけないのよ!」
 
 
 アリアが必死にレイラに向かって罵倒する。
 そのアリアを見るレイラの視線は、やはり温度のない冷ややかな視線だ。
 
 
「分からないの? 私の事。
 私は前世で貴女と会ってるのよ?
 そして貴女のせいで人生をめちゃくちゃにされた人の内の1人よ」
 
 
 そう言って、レイラはアリアをしっかりと見据えた。
 
 
 
「私の名前は、さやか。
 娘の名前、覚えていてくれてるかしら?
 お母さん」
 
 
 そうレイラは言った。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢マレーネは、音楽会で出会った聖女様とそっくりさんだった。え?私たち双子なの。だから、入れ替わってまだ見ぬ母に会いに行く

山田 バルス
恋愛
 ベルサイユ学院の卒業式。煌びやかなシャンデリアが吊るされた大広間に、王都中から集まった貴族の若者たちが並んでいた。  その中央で、思いもよらぬ宣告が響き渡った。 「公爵令嬢マレーネ=シュタイン! 今日をもって、君との婚約を破棄する!」  声の主は侯爵家の三男、ルドルフ=フォン=グランデル。茶色の髪をきれいに整え、堂々とした表情で言い放った。場内がざわつく。誰もが驚きを隠せなかった。  婚約破棄。しかも公爵家令嬢に対して、式典の場で。 「……は?」  マレーネは澄んだ青い瞳を瞬かせた。腰まで流れる金髪が揺れる。十五歳、誰もが憧れる学院一の美少女。その彼女の唇が、震えることなく開かれた。 「理由を、聞かせてもらえるかしら」  ルドルフは胸を張って答えた。 「君が、男爵令嬢アーガリーをいじめたからだ!」  場にいた生徒たちが、一斉にアーガリーのほうを見た。桃色の髪を揺らし、潤んだ瞳を伏せる小柄な少女。両手を胸の前で組み、か弱いふりをしている。 「ルドルフ様……わたくし、耐えられなくて……」  その姿に、マレーネはふっと鼻で笑った。 「ふざけないで」  場の空気が一瞬で変わった。マレーネの声は、冷たく、鋭かった。 「私がいじめた? そんな事実はないわ。ただ、この女がぶりっ子して、あなたたちの前で涙を浮かべているだけでしょう」  アーガリーの顔から血の気が引く。だが、ルドルフは必死に彼女を庇った。 「嘘をつくな! 彼女は泣きながら訴えていたんだ! 君が陰で冷たく突き放したと!」 「突き放した? そうね、無意味にまとわりつかれるのは迷惑だったわ。だから一度距離を置いただけ。あれを“いじめ”と呼ぶのなら、この場の誰もが罪人になるんじゃなくて?」 会場に小さな笑いが起きた。何人かの生徒はうなずいている。アーガリーが日頃から小芝居が多いのは、皆も知っていたのだ。  ルドルフの顔に焦りが浮かぶ。しかし、彼は引き下がらない。 「と、とにかく! 君の性格の悪さは明らかだ! そんな女とは婚約を続けられない!」 「……そう」 マレーネの笑顔がふっと消え、青い瞳が鋭く光った。その瞬間、周囲の空気がピリピリと震える。  彼女の体から、圧倒的な魔力があふれ出したのだ。 「な、なに……っ」  ルドルフとアーガリーが同時に後ずさる。床がビリビリと振動し、会場の壁が一部、音を立てて崩れ落ちた。魔力の衝撃にシャンデリアが揺れ、悲鳴が飛び交う。    

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...