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宝玉編~
55.アリアの過去
しおりを挟む「アリアさん、貴女がどうして転生時に悪役令嬢である魂を勧められたと思います?」
レイラの質問に、アリアはレイラを睨みながら答える。
「そんなの知るわけないじゃない! 何かの間違いだったんでしょ! だって私は被害者ですもの。だから神様が転生させてくれたんだものね!」
「いえ、違います。貴女の転生は、貴女への罰です。だから貴女には、18歳で処刑される運命を背負った悪役令嬢の魂が用意されていました」
罰? そんな事で転生とか、あるの?
びっくりしてレイラを見る。
アリアも目を見開いてレイラを凝視していた。
「あ、貴女、一体誰よ!? 突然出てきて何を知ったかぶりで話してるの!? 貴女、ただのモブじゃないの!
あっ、もしかして貴女も転生者なの!?」
「あ、申し遅れました。
私はレイラ・アスティと申します。
ですが、それは仮の姿。
この身体は一時的にお借りしているだけで、私の実体はないのです。
そして、私もグレイ様と同じでラケシス様の遣いの者でございます」
そう言って、陛下や他の方々の方を向いてカーテシーを決める。
陛下達も、レイラの説明に驚きながらも、この場に呼ばれた訳が分かって納得されていた。
「では改めて。
貴女が悪役令嬢の魂に入るのは貴女への罰。
前世で貴女は刺されて死にましたよね。
でも、刺される原因があったでしょう?」
そう言ったレイラに、アリアは反論する。
「し、知らないわよ! あれはあの男の逆恨みですもの! そんな事で刺されるなんて、やっぱり私は被害者じゃないのよ!」
「……元は、貴女が不倫していたからでは?
貴女は優しい夫と、幼い娘がいたにも関わらず、色んな男性とお付き合いをしていた。夫にバレそうになると、被害者ぶって相手のせいにして……。
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その男性も家庭を裏切った責任はあるとしても、恨まれても仕方ないのでは?」
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唖然としながら私はアリアとレイラの話しを聞いていた。
「だから貴女は神からの罰を受けるために悪役令嬢の魂に転生するはずだったのに……。
家庭からは見放され、誰からも愛されることのない闇属性の素質を持って……。
人々から裏切られ、最終的には処刑される孤独で悲惨な人生を持った魂に……。」
そのレイラの言葉は、とても重くてまるでレイラ自身がアリアの破滅を望んでいるような印象を受けた。
それはアリアも同じだったのだろう。
「な、なんであんたにそこまで言われなきゃならないのよ! 私は結婚するにはまだ若かったのよ! 子供が出来たから結婚したけど、まだまだ遊んでいたかった!
だから少し遊んだだけよ! みんなやってる事よ!
そんな事で殺されたのに、そんな罰をなんで受けなきゃいけないの!」
そう叫ぶアリアを見るレイラの目はとても冷ややかだ。
「貴女は何処までも自分本位ですね。周りの人の迷惑など全くのお構いなしに行動する。
その結果、またこの世界でも他人を犠牲にしながら自分の幸せだけを願って、今度はこの世界を破滅に向かわせている」
「自分の幸せを願って何が悪いの⁉︎ そんなのみんなそうでしょう! 幸せを願った結果がこの世界の破滅だなんて、その方がおかしいわよ!」
確かに人はみんな自分の幸せを願う。
人によっては、他人を犠牲にしてまで。
でも、大半の人はそうじゃない。
ささいな幸せを願いながら、自分で努力して幸せを掴むのだ。
そう感じていた時、レイラが感情のない声でアリアに言った。
「貴女に幸せを願う権利などない」
そう言って、レイラはアリアに近づいていく。
「な、何よ⁉︎ 来ないでよ!」
アリアが後ずさるも、レイラは歩みを止めない。
レイラがアリアの目の前まで近寄り、手を出す。
「さぁ、早くその宝玉を渡しなさい。
それは貴女が持ってていいものではないわ」
「はぁ⁉︎ 何なの? あんた、何様なのよ!
なんであんたに渡さないといけないのよ!」
アリアが必死にレイラに向かって罵倒する。
そのアリアを見るレイラの視線は、やはり温度のない冷ややかな視線だ。
「分からないの? 私の事。
私は前世で貴女と会ってるのよ?
そして貴女のせいで人生をめちゃくちゃにされた人の内の1人よ」
そう言って、レイラはアリアをしっかりと見据えた。
「私の名前は、さやか。
娘の名前、覚えていてくれてるかしら?
お母さん」
そうレイラは言った。
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