【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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歳月の流れ編~

62.月日の流れ

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 グレイが居なくなってから、もうすぐ5年目である。
 
 王国は完全に元通りとなり、あの出来事がまるで無かったかのように思える。
 
 セリーヌは伯爵夫人となり、先月、第1子となる男児を出産した。
 
 今日はセリーヌの元に出産祝いをしに行く事になっている。
 
 
 馬車に揺られながら、賑やかで活気ある街並みを眺める。
 
 みんな楽しそうに笑い、親子で買い物をしていたり、恋人や夫婦で仲睦まじい姿も目に映る。
 
 
「ふぅ……」
 
 
 ふいに感じる寂しさも、もう慣れたものだ。
 
 もうすぐ23歳になる私は、まだ独り身を貫いている。
 前世では独身でもまだまだ普通の年齢だが、この世界では完全な行き遅れだ。
 
 
 でも聖女である事で、白い目で見られる事はない。
 
 むしろ、力を失わない為にも、聖女はいつまでも生娘であるべきだと主張している学者もいるほどで、今の私には有難い存在だ。
 
 まぁ、生娘と力は関係ないんだけどね。
 
 
 
「聖女様、到着致しました」
 
 
 御者の声掛けに返事をして馬車を降りる。
 
 すでに門のところには、セリーヌの旦那様が出迎えに出てきてくれたいた。
 
 
「この度は、まことにおめでとうございます」
 
 
「ありがとう存じます。聖女様にお祝いして頂けるとは、とても幸運で有り難き事。
 さ、妻も待っておりますゆえ、中へどうぞお入り下さい」
 
 
 
 セリーヌの夫に、そう促されてセリーヌの待つ部屋に案内してもらう。
 
 
 中に入ると、ベッドの上で赤子を抱いているセリーヌの姿が目に入った。
 
 
「エマ! 会いたかったわ!」
 
 
 セリーヌが嬉しそうに声を掛けてくれた。
 
 
「セリーヌ、おめでとう! 念願の子供が無事生まれて良かったね!
 2人とも元気そうで安心したわ」
 
 
「ええ。初産の割には、とても安産だったのよ。でも、夫がまだ安静にしてろって煩くて。ごめんなさいね、ベッドの上のままで」
 
 
 セリーヌは旦那様にとても大切にしてもらっているようだ。
 とても幸せそうなセリーヌを見て、私も嬉しくなった。
 
 
「どれどれ。念願の赤ちゃんのお顔を拝見させてもらおうかな」
 
 
 セリーヌの抱いている男児の顔を覗く。
 
 スヤスヤと安心した様子で眠っていて、とても可愛らしかった。
 目は開けてないから分からないけど、髪色は旦那様色である。
 
 
「目の色は何色なの?」
 
 
 私の問いにセリーヌは、
「目の色も旦那様の色よ。まるで旦那様そのものだと、彼の両親にとても喜ばれたわ」
 と笑っていた。
 
 
 私はその後、セリーヌとの会話を楽しんでから、セリーヌが疲れない頃合いを見計らって退席した。
 
 
 帰りの馬車に揺られながら、空を見上げる。
 
 
 ラケシス様からの連絡は、最近殆どない。
 
 レイラにも尋ねたが、レイラの所にも“さやか”さんは来ていないそうだ。
 
 
 
 このまま、何の変わり映えもなく生きていくのだろうか。
 
 
 そんな事をふと考えながら、教会に戻った。
 
 
 
 
「おや、エマ様。おかえりなさい」
 
 
 教会に戻ると珍しく教皇様がいらっしゃった。
 
 
「ただいま戻りました。
 教皇様こそ珍しいですね、教会に戻っていらっしゃるなんて」
 
 
 私の言葉に教皇様は苦笑する。
 
 
「私の本拠地はここですけどね。
 最近はエマ様のご活躍で、他国でも魔物の脅威が薄れつつあるようで、私もゆっくり出来るようになったのですよ」
 
 
 教会様は、私がまだ魔物討伐や結界作りに本腰を入れる前から、この国や他国を回って、魔物からの脅威を収めるべく翻弄していたそうだ。
 
 
「そういえば、最近は魔物の被害報告が少なくなりましたね」
 
「ええ。エマ様の浄化や、結界のおかげですかね」
 
 
 私の疑問に、教皇様は笑顔でそう答えた。
 
 そうなのかな?
 
 それでも一向に魔物は減らなかったような……。
 
 
 
「そうだといいですけどね」
 
 
 私は笑いながらそう応える。
 
 
 明日、また辺境伯領の結界付近を見回ろう。
 なんなら、その先の魔物の森まで行って殲滅するのもありかな。
 
 
 そんな事を考えながら、自室に戻った。
 
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