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そして卒業式を迎える間もなく、ユーリとダミアンの婚約解消が整った。本来なら、王家に婚約解消の申し立てなど不敬であるが、度重なるダミアンの失態や、以前からのユーリに対する不誠実な問題行動、それに前回、婚約者であるユーリを冤罪で捕縛したことが大きく、王家としても、その申し立てを受け入れざるをえなかったようだ。
公爵家の後ろ盾を失ったダミアンは、ますます窮地に立たされた。
陛下は、この現状を鑑み、シオンを王太子とする事に決めたようだ。
「シオンライト第一王子を王太子とする」
陛下の発表に、国中が沸いた。
貴族たちも、第二王子に不安を感じていた者が多数おり、王妃の実家の侯爵家に連なる第二王子派の貴族たちもまた、ミホーク公爵家や、ラバンティ辺境伯家の働きにより、第一王子派に流れていったのも大きく、貴族間でもその決定に異議を申し立てるものはなかった。
「シオン様、この度は王太子に指名された事、心よりお喜び申し上げます」
シオンとミーシャは、今、ミーシャの家の庭でお茶をしている。
シオンは王太子の指名に際し、尽力してくれたラバンティ辺境伯家に感謝の気持ちを伝えに、会いに来たのだ。
もちろんミーシャの両親も、シオンの指名に合わせて王都に来ていた。
「ありがとう。先程、辺境伯にもお会いして、改めて感謝の気持ちを伝えたところだ。
それに、これで堂々と申し込めたよ」
と、シオンはミーシャを見てにっこり笑う。
「申し込む? 何をですの?」
首を傾けながら質問するミーシャに、
「君との婚約。王太子に指名されたら申し込もうと、ずっと前から決めてたんだよ」
そう言うなり、何処からともなく現れたユージュから受け取った花束を持って、シオンはミーシャの前でひざまずく。
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。
私は今まで、自分の人生を生きる事だけで必死でした。しかし、あなたと出会ってから、私の人生は一変しました。
あなたから受けた刺激は、私に大きな影響を与え、私自身を大きく変えてくれました。
これから、私は自分だけでなく、この国をも変えていき、少しでも人々が笑って暮らせる国にしていきたい。その時に、あなたには私のそばにいて、私を支えたもらいたい。もちろん、私はあなたを全力で守ると誓おう。
私と一生を共に歩んではくれませんか」
ミーシャは、シオンの突然のプロポーズに、声を発する事も出来ないくらい驚いたが、同時に胸の中がどうしようもない喜びに溢れかえった。
「ちなみに辺境伯には、すでにいいお返事を頂いているよ」
とシオンが茶目っ気たっぷりのいい笑顔で、すでに周りから固めているよと告げる。
その言葉に吹き出したミーシャは
「ありがとうございます。そのお申し出、喜んでお受け致します。よろしくお願い致します」
と返答し、花束を受け取った。
シオンはホッとしたように、
「こちらこそ、ありがとう!
これからは婚約者としてよろしく頼む」
と、ミーシャをそっと抱きしめる。
その様子をこっそり見ていた母や、家の使用人ら、シオンの護衛達も一斉に喜び、2人は大きな拍手に包まれた。
父だけは、「まだ早い!」と、2人を引き離そうと慌てて駆け寄ってきたが。
シオンの王太子指名の発表のすぐ後、今度は王太子の婚約発表に、さらに国中はお祭り気分だ。
もともと、辺境伯家を中央に繋ぎ止めておきたかった王家や重鎮たちも、この婚約は好都合にて、表立って反対する者もなかった。
ただ不満に思っている者がここに1人。
「なんでモブ女がシオン様と婚約してるのよ!」
リセラは苛立ちを隠そうともせず、周りに当たり散らして、聖女の仕事も放棄していた。
「聖女様。」
ある日、聖女付きの修道女がリセラの部屋に訪れて、告げた。
「教皇様がお呼びです。至急、大聖堂にお越し下さい」
嫌な表情をしたリセラだが、自分の後見人である教皇は無視出来ない。
(ゲーム内では力に目覚めたら、すぐにユージュ様の家の養女にしてもらえていたのに、何故か養女の話が全く来なかった。
本当に何なのよ! 話が違いすぎるわ!)
そんな事を考えながら、渋々自室から出て、大聖堂に向かった。
「教皇様、お呼びでしょうか」
リセラは部屋に入り、声をかけた。
「聖女殿。お呼び立てして申し訳ありません。
ついさっき、地方に従事している司祭より連絡が入ったのですが、結界がますます薄らいできているとの事です。
このままでは、国全体を覆っている全ての結界が消滅するのも時間の問題でしょう。
お願いします。
そろそろ力も溜まった事でしょう。聖なる力で、結界の張り直しをして頂きたいのです」
教皇は真剣な表情でリセラに懇願した。
公爵家の後ろ盾を失ったダミアンは、ますます窮地に立たされた。
陛下は、この現状を鑑み、シオンを王太子とする事に決めたようだ。
「シオンライト第一王子を王太子とする」
陛下の発表に、国中が沸いた。
貴族たちも、第二王子に不安を感じていた者が多数おり、王妃の実家の侯爵家に連なる第二王子派の貴族たちもまた、ミホーク公爵家や、ラバンティ辺境伯家の働きにより、第一王子派に流れていったのも大きく、貴族間でもその決定に異議を申し立てるものはなかった。
「シオン様、この度は王太子に指名された事、心よりお喜び申し上げます」
シオンとミーシャは、今、ミーシャの家の庭でお茶をしている。
シオンは王太子の指名に際し、尽力してくれたラバンティ辺境伯家に感謝の気持ちを伝えに、会いに来たのだ。
もちろんミーシャの両親も、シオンの指名に合わせて王都に来ていた。
「ありがとう。先程、辺境伯にもお会いして、改めて感謝の気持ちを伝えたところだ。
それに、これで堂々と申し込めたよ」
と、シオンはミーシャを見てにっこり笑う。
「申し込む? 何をですの?」
首を傾けながら質問するミーシャに、
「君との婚約。王太子に指名されたら申し込もうと、ずっと前から決めてたんだよ」
そう言うなり、何処からともなく現れたユージュから受け取った花束を持って、シオンはミーシャの前でひざまずく。
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。
私は今まで、自分の人生を生きる事だけで必死でした。しかし、あなたと出会ってから、私の人生は一変しました。
あなたから受けた刺激は、私に大きな影響を与え、私自身を大きく変えてくれました。
これから、私は自分だけでなく、この国をも変えていき、少しでも人々が笑って暮らせる国にしていきたい。その時に、あなたには私のそばにいて、私を支えたもらいたい。もちろん、私はあなたを全力で守ると誓おう。
私と一生を共に歩んではくれませんか」
ミーシャは、シオンの突然のプロポーズに、声を発する事も出来ないくらい驚いたが、同時に胸の中がどうしようもない喜びに溢れかえった。
「ちなみに辺境伯には、すでにいいお返事を頂いているよ」
とシオンが茶目っ気たっぷりのいい笑顔で、すでに周りから固めているよと告げる。
その言葉に吹き出したミーシャは
「ありがとうございます。そのお申し出、喜んでお受け致します。よろしくお願い致します」
と返答し、花束を受け取った。
シオンはホッとしたように、
「こちらこそ、ありがとう!
これからは婚約者としてよろしく頼む」
と、ミーシャをそっと抱きしめる。
その様子をこっそり見ていた母や、家の使用人ら、シオンの護衛達も一斉に喜び、2人は大きな拍手に包まれた。
父だけは、「まだ早い!」と、2人を引き離そうと慌てて駆け寄ってきたが。
シオンの王太子指名の発表のすぐ後、今度は王太子の婚約発表に、さらに国中はお祭り気分だ。
もともと、辺境伯家を中央に繋ぎ止めておきたかった王家や重鎮たちも、この婚約は好都合にて、表立って反対する者もなかった。
ただ不満に思っている者がここに1人。
「なんでモブ女がシオン様と婚約してるのよ!」
リセラは苛立ちを隠そうともせず、周りに当たり散らして、聖女の仕事も放棄していた。
「聖女様。」
ある日、聖女付きの修道女がリセラの部屋に訪れて、告げた。
「教皇様がお呼びです。至急、大聖堂にお越し下さい」
嫌な表情をしたリセラだが、自分の後見人である教皇は無視出来ない。
(ゲーム内では力に目覚めたら、すぐにユージュ様の家の養女にしてもらえていたのに、何故か養女の話が全く来なかった。
本当に何なのよ! 話が違いすぎるわ!)
そんな事を考えながら、渋々自室から出て、大聖堂に向かった。
「教皇様、お呼びでしょうか」
リセラは部屋に入り、声をかけた。
「聖女殿。お呼び立てして申し訳ありません。
ついさっき、地方に従事している司祭より連絡が入ったのですが、結界がますます薄らいできているとの事です。
このままでは、国全体を覆っている全ての結界が消滅するのも時間の問題でしょう。
お願いします。
そろそろ力も溜まった事でしょう。聖なる力で、結界の張り直しをして頂きたいのです」
教皇は真剣な表情でリセラに懇願した。
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