【完結】モブなのに最強?

らんか

文字の大きさ
39 / 43

39

しおりを挟む
 そして卒業式を迎える間もなく、ユーリとダミアンの婚約解消が整った。本来なら、王家に婚約解消の申し立てなど不敬であるが、度重なるダミアンの失態や、以前からのユーリに対する不誠実な問題行動、それに前回、婚約者であるユーリを冤罪で捕縛したことが大きく、王家としても、その申し立てを受け入れざるをえなかったようだ。
 公爵家の後ろ盾を失ったダミアンは、ますます窮地に立たされた。
 陛下は、この現状を鑑み、シオンを王太子とする事に決めたようだ。
 

「シオンライト第一王子を王太子とする」

 
 陛下の発表に、国中が沸いた。
 貴族たちも、第二王子に不安を感じていた者が多数おり、王妃の実家の侯爵家に連なる第二王子派の貴族たちもまた、ミホーク公爵家や、ラバンティ辺境伯家の働きにより、第一王子派に流れていったのも大きく、貴族間でもその決定に異議を申し立てるものはなかった。



「シオン様、この度は王太子に指名された事、心よりお喜び申し上げます」

 シオンとミーシャは、今、ミーシャの家の庭でお茶をしている。
 シオンは王太子の指名に際し、尽力してくれたラバンティ辺境伯家に感謝の気持ちを伝えに、会いに来たのだ。
 もちろんミーシャの両親も、シオンの指名に合わせて王都に来ていた。

「ありがとう。先程、辺境伯にもお会いして、改めて感謝の気持ちを伝えたところだ。
 それに、これで堂々と申し込めたよ」
と、シオンはミーシャを見てにっこり笑う。

「申し込む? 何をですの?」

 首を傾けながら質問するミーシャに、
「君との婚約。王太子に指名されたら申し込もうと、ずっと前から決めてたんだよ」

 そう言うなり、何処からともなく現れたユージュから受け取った花束を持って、シオンはミーシャの前でひざまずく。

「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。
 私は今まで、自分の人生を生きる事だけで必死でした。しかし、あなたと出会ってから、私の人生は一変しました。
 あなたから受けた刺激は、私に大きな影響を与え、私自身を大きく変えてくれました。
 これから、私は自分だけでなく、この国をも変えていき、少しでも人々が笑って暮らせる国にしていきたい。その時に、あなたには私のそばにいて、私を支えたもらいたい。もちろん、私はあなたを全力で守ると誓おう。
 私と一生を共に歩んではくれませんか」

 ミーシャは、シオンの突然のプロポーズに、声を発する事も出来ないくらい驚いたが、同時に胸の中がどうしようもない喜びに溢れかえった。

「ちなみに辺境伯には、すでにいいお返事を頂いているよ」
とシオンが茶目っ気たっぷりのいい笑顔で、すでに周りから固めているよと告げる。

 その言葉に吹き出したミーシャは
「ありがとうございます。そのお申し出、喜んでお受け致します。よろしくお願い致します」
と返答し、花束を受け取った。
 
 シオンはホッとしたように、
「こちらこそ、ありがとう! 
 これからは婚約者としてよろしく頼む」
と、ミーシャをそっと抱きしめる。
 
 その様子をこっそり見ていた母や、家の使用人ら、シオンの護衛達も一斉に喜び、2人は大きな拍手に包まれた。
 父だけは、「まだ早い!」と、2人を引き離そうと慌てて駆け寄ってきたが。


 
 シオンの王太子指名の発表のすぐ後、今度は王太子の婚約発表に、さらに国中はお祭り気分だ。
 もともと、辺境伯家を中央に繋ぎ止めておきたかった王家や重鎮たちも、この婚約は好都合にて、表立って反対する者もなかった。

 ただ不満に思っている者がここに1人。

「なんでモブ女がシオン様と婚約してるのよ!」
 
 リセラは苛立ちを隠そうともせず、周りに当たり散らして、聖女の仕事も放棄していた。

 


「聖女様。」

 ある日、聖女付きの修道女がリセラの部屋に訪れて、告げた。

「教皇様がお呼びです。至急、大聖堂にお越し下さい」


 嫌な表情をしたリセラだが、自分の後見人である教皇は無視出来ない。
 
(ゲーム内では力に目覚めたら、すぐにユージュ様の家の養女にしてもらえていたのに、何故か養女の話が全く来なかった。
 本当に何なのよ! 話が違いすぎるわ!)
 
 そんな事を考えながら、渋々自室から出て、大聖堂に向かった。



「教皇様、お呼びでしょうか」

 リセラは部屋に入り、声をかけた。


「聖女殿。お呼び立てして申し訳ありません。
ついさっき、地方に従事している司祭より連絡が入ったのですが、結界がますます薄らいできているとの事です。
 このままでは、国全体を覆っている全ての結界が消滅するのも時間の問題でしょう。
お願いします。
 そろそろ力も溜まった事でしょう。聖なる力で、結界の張り直しをして頂きたいのです」
 
 教皇は真剣な表情でリセラに懇願した。
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓
恋愛
 伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。  異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。  そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。 「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」  そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。 「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」  飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。  これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。

(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)

ちゃむふー
恋愛
「私は真実の愛に目覚めたんだ!ミレイユ。君は強いから1人で大丈夫だろう?リリアンはミレイユと違って私がいないとダメなんだ。婚約破棄してもらう!!」 完全に自分に酔いしれながらヒーロー気分なこの方は、ヨーデリア侯爵令息のガスパル。私の婚約者だ。 私はミレイユ・ハーブス。伯爵令嬢だ。 この国では、15才から18才まで貴族の令息令嬢は貴族の学園に通う。 あろう事かもうすぐ卒業のこの時期にこんな事を言ってきた。 できればもう少し早く言って欲しかったけれど…。 婚約破棄?大歓迎ですわ。 その真実の愛とやらを貫いてくださいね? でも、ガスパル様。 そのリリアンとやらは、俗に言う相談女らしいですわよ? 果たして本当に幸せになれるのかしら…?? 伯爵令嬢ミレイユ、伯爵令嬢エミール2人の主人公設定です。 学園物を書いた事があまり無いので、 設定が甘い事があるかもしれません…。 ご都合主義とやらでお願いします!!

所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます

れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦)) *ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。 *他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

処理中です...