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43最終話
しおりを挟むあれからミーシャは、シオンや両親と共に王宮に行き、これからのことを話し合った。
まず結界を敷いたのは、聖女リセラではなく、大聖堂にいたある人物が、突然聖なる力に目覚め、強固な結界を敷き、それと同時に多大な力を使ったため、その聖なる力はその場で失ってしまったということにした。
その者のことは秘匿とし、探る者には罰を与えるとのお触れを出した。
また聖女だと思われていたリセラだか、大抵の人は、幼児の頃に持って生まれた力が発現するのに、今まで発現するはずの力が発現されておらず、成人前に突然、力が解放された為に、一時的に力が増幅し、聖なる力と勘違いされてしまったのではないかとの結論が下された。
魔道士団が、詳しくリセラの魔力を調べると、人より魔力量は多めで、聖属性魔法は使えるが、聖なる力と呼ばれるものには到底及ばなかったと判断され、聖女の称号は取り下げられた。
そして聖属性魔法を使って、今後は救護院での治療に専念するということとなった。
そういった内容と、結界の消滅の脅威は去ったことを、改めて王家より民衆に伝達した。
「本当に、これでほんとに良かったのか?
ミーシャの功績が、なかったことになったぞ?
それに、ミーシャの力がなくなった事にもなってるし」
シオンは、ミーシャの髪を弄びながら、そう言った。
「構いませんわ。元々、誰にも知られたくないと隠していた力だったのだし。
それに、この力を良からぬ事に使おうと考える人が、現れるかもしれないでしょう?
だからこれを機に、力を失ったということにしてくれたほうが、わたくし的には大変助かりますわ」
ミーシャの髪を弄っているシオンの手を軽く払いのけ、お茶を飲む。
あれからミーシャは、改めて陛下より謝罪と感謝の言葉を受けた。
もちろん、シオンとの婚約は継続。
一時は、シオンとの婚約を無かったことにしようとしたこともあり、陛下は、シオンとミーシャが結婚し、落ち着いたらすぐにシオンに王座を譲って、隠居することを、官僚たちの前で宣言した。
その裏には、ラバンティ辺境伯家と、ミホーク公爵家の力が働いたとか……。
ミーシャはその後、学園の放課後と休みの日は、王太子妃教育が始まり、忙しい毎日を送っていた。
そして、王太子妃教育の終了後はシオンとのお茶会が恒例となり、今もそのお茶会の最中である。
婚約者になってからのシオンは、どんどん甘くなり、ミーシャに構いたくて仕方がないといった様子だ。
初めて出会った頃のシオンの面影など、全くの別人かと思うほどに無くなっていた。
「ああ、早く結婚したいな。卒業まであと一年もある」
シオンはまたミーシャの髪に触れながら、愛おしそうに言った。
今年の卒業式。
何のトラブルも無く、穏やかに行なわれた。
ユーリは無事に卒業し、今は前世の知識を駆使して、スイーツ店の事業拡大に力を入れている。
ユーリは異世界転生の小説のように、スイーツ業界で革命を起こすつもりなのだろうか。
ミーシャは、ユーリのスイーツのファンなので、喜んで宣伝部長を買って出ていた。
ちなみに、ユーリは、ミーシャの兄のダンテと婚約した。
公爵家と辺境伯家で、今後について色々相談していた時に、飛龍に乗ってやって来たダンテにユーリが一目惚れしたとか。
ダンテも、魔物討伐に明け暮れて、婚約者を決めておらず、周りの女性は皆、気の強い女性ばかりだった為、ユーリの聡明さや可憐さにすぐに惹かれた。2人共婚約者がいなかった為、すぐに話が決まったらしい。
ダミアンは、今までの行いを鑑みて、改めて再教育が必要と判断された。
今まで離宮で暮らしていたシオンは、王太子になったことで、王宮に移っていたため、ダミアンがあと1年学園に通いながら、離宮で過ごし、そこで心身共に鍛え直すこととなった。
ゆくゆくは、王位継承権を放棄し、王族を抜けて、爵位を下賜されることになるだろう。
同じくミゼルやオルガも、再教育が必要と考えられ、それぞれ地方の学校に転校となった。
ミゼルは、学校卒業後は王都ではなく、そのまま地方の政務官補佐となることが決まり、オルガも同じく、地方の騎士団の一兵から始めることが決まった。
リセラは、あれから大人しくなり、全くシオンやミーシャには近づいて来ない。
学園の放課後や休みの日は、率先して救護院に通い、貴族平民と分け隔てなく治療を行なっていると聞いた。
そしてダミアンは、そんなリセラを支え、時間がある時はリセラのいる救護院に通って、リセラの手伝いをしているとか。
(良かった。お花畑脳のヒロインは、最後に逆ザマァされるのが定番だってユーリ様に聞いたけど、リセラはちゃんと改心出来ているもの。
これからも救護院でダミアン様と共に頑張っていれば、幸せになれるはず。
同じ転生者としては、リセラにもちゃんと幸せになってもらいたいわ)
そんなことを思い、ミーシャはシオンとの攻防を重ねながら、
(今日も平和だなぁ)
と、お茶菓子をつまんだ。
~完~
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続編読みたいですッ‼️
ご感想ありがとうございます。
うーん、続編ですか( ̄▽ ̄;)
今は他の作品に取り掛かっていますので、今のところは考えてないのです。
また、その気になれば?頑張ってみようかなと(笑)
そして、私もそのご紹介頂いた作品のファンでございます(*ˊ˘ˋ*)
あ、でも、次の作品も似てるって言われるかも〜💦
でも、私なりの作品として頑張りますので、これからも目を通して頂けた際には、よろしくお願いいたします(≧∇≦)
面白かった。
Σd(ゝ∀・)ありがとうございます♪̊̈♪̆̈