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第六話
そんなある日、アルベルト様と一緒にパーティに参加していると、少し先のほうに見覚えのある素敵なおじ様が……
あっ! あの時のおじ様!
またまたガン見している私の様子に気付き、アルベルト様が言う。
「ジル? 何処を見て……あぁ、あれはカイロン侯爵ではないかな? ジルはカイロン侯爵を知ってるの?」
いえ、名前は知らなかったです。
でも、なんか聞き覚えが……
「カイロン侯爵って、あの慈善事業に力を入れていらっしゃるカイロン侯爵様の事ですか!?」
食い気味に聞いた私に、若干引き気味でアルベルト様は頷く。
「そうだよ。孤児院に多額の金銭を寄付したり、貧しい子供達に字を習わせようと私設学校を設立したりしているカイロン侯爵だよ。
ジルは会ったことあったのかい?」
私たちの視線を感じたのだろう。カイロン侯爵が此方に向かって歩いてくる。
「やぁ、カイロン侯爵。このパーティに参加しているとは知りませんでしたよ」
アルベルト様がカイロン侯爵に話しかける。その言葉を受けて、優しそうな笑顔で私たちに話しかけてきた。
「これは、アルベルト第2王子殿下。ご挨拶申し上げます。ここの主催者は私の慈善事業を応援してくれている1人でしてね。
あまりパーティは好きではないのですが、これも付き合いですので、こうして参加させて頂いております」
と、言ったあと、私を見る。
「こちらのお嬢さんとは、先日お会いしましたね。こんにちは」
と笑顔で話しかけてくれる。
「あの節は本当にありがとうございました。
助けて頂いたのに、名乗りもせず申し訳ございません。
わたくし、ジュリア・ハミルトンと申します」
「あぁ、ハミルトン伯爵家の令嬢でしたか。
こんなお可愛らしい娘さんがいらっしゃるとは、羨ましいですな」
と、目を細めて優しくこちらを見てくる。
まぁ! 可愛いだなんて!
どうしましょう! あぁ照れるわぁ!
褒められてモジモジしている私を、とても優しい目で見てくるおじ様に、照れまくっていると、アルベルト様が、私の腰を抱いて自分の方に引き寄せる。
「彼女は私の婚約者なんです。ねっ? ジル」
と、アルベルト様がすんごい笑顔で私を見てくる。
あまりの迫力に首振り人形のように頷く私。
「ほぅ? 殿下の婚約者ですか。これは、若々しいご婚約者で、本当に羨ましい。
失礼ですが、お年はどれ程離れてらっしゃるのでしょう? ご令嬢はまた随分お若く見えますが」
あら。そんなに若々しい?
いえ、私、まだ18歳だから、それって褒め言葉としては、どうなのかしら?
そう疑問に思ってた私の横で、アルベルト様が不思議そうに言う。
「いや? ジルは18になったから、1歳しか変わらないけど?」
それを聞いたおじ様が、目を見開いて私を見る。
「えっ?」
え?
「馬鹿な……18? いや、でも、胸が……」
おじ様が私の胸を見て絶句している。
悪かったわねっ!
どうせ、まな板ですよ!
そう思っている私の前に、さりげなくアルベルト様が立ち、私を隠してくれる。
「あ、いや、失礼。てっきり13~14歳くらいかと……。いや、ざんね、ンン。
あぁ、お若いお二人の邪魔をしてしまい、申し訳ない。私はもう行きますね」
そう言って、おじ様は、そそくさと私達の前から去っていった。
え~っと。
もしかして、今、残念って言った?
なんで?
頭の中がはてなマークでいっぱいだった私に、アルベルト様がこっそり教えてくれる。
「あまり大声で言えないことなんだけどね。
カイロン侯爵は、大人の女性に興味が持てないらしくて、未だに独身なんだよ。女性は15歳までっていうのが、侯爵の信念らしいよ。慈善事業の中でも、子供関連の事業に特に力を入れてるのも、そういった気持ちがあるかららしいと聞いたことがある。
まぁ、間違いが起きないように彼の補佐官が目を光らせてるから、大丈夫みたいだけどね」
ナンテコト。
なんてことなの。
じゃ、私は15歳に満たない子供だと思われて、優しくしてくれたって事?
またしても、理想のおじ様のイメージが音を立てて崩れていく事に、ショックを受けている私を見て、アルベルト様はこっそりガッツポーズを取っていた事を、私は知らなかった。
それからも、憧れのおじ様を見つけるが、その度に、実はギャンブル狂であったとか、浮気三昧で、隠し子がいるとか、酷いのは、家の女使用人に暴力を振るって監禁していたなんてのも発覚し、さすがにおじ様好きの私もドン引きで、暫く憧れを探すのは止めた。
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