乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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2.異世界生活、シロウトで何も分かりませんが大丈夫でしょうか?

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 「リリィ?寝たの?」


フフッと笑ってそっとベットに寝かせる。
ミシェルと呼ばれたこの男はこの国の王の弟であり宰相でもある。


「ミシェル様!」
「はいはい。行きますよ。ライル、マリアとリリィを宜しく頼んだよ?」

「任せろ。あの子はあの状態から戻って来れた強い子だからもう大丈夫だよ」

「うん。さすがマリアと僕の娘だよね」
リリィの頬を優しく撫でる。

「また何かあったらすぐに通信魔法で連絡するから安心して王宮に戻れよ」

「すぐに飛んで来るからね!頼むよ。じゃあ、またね」


スッと音も無くミシェルの姿がその場から消えた。


「…相変わらずの魔力の無駄遣い野郎だよ」


ハハハ…と乾いた笑いを洩らしたのはこの治癒院の筆頭治癒士であるライル・シモン。
ミシェルの幼馴染みであり治癒士としての実力は今やNo. 1と言われている人物だ。


ここマルタン治癒院はマルタン王国の中枢部にある。
有能な治癒士達が多く勤めており、その門扉は風通しが良く広く開かれていた。
治癒を学びに来る者、治癒を受けたい者、全ての者達が等しく平等に利用できるようになっている。


それもこれも現マルタン王国の王と王弟の手腕である。
前国王、彼らの父親の統治時代は平和でのんびりしたものだった。しかし、ある年に他国からの侵略や魔族からの攻撃が勃発し前国王は力の限り戦ったが還らぬ人となった。

その時全ての国民を救ったのがマルタン兄弟だった。


現国王である兄が力で他国の侵略を止め国民を鼓舞した。
現宰相である弟が魔力で魔族の攻撃を全てを薙ぎ払い高位の魔族を封印した。

この二人が統治するマルタン王国に死角はなかった。


そんなマルタン王国の治癒院は産婦人科としての機能も果たしており多くの乳幼児が入院していた。

前国王の時代の治癒院も民の為に開かれた存在だったが、産婦人科としての機能はなく出産は産婆と呼ばれる人が取り上げるのが普通だった。

しかし、ここで王弟の妻の第一子妊娠が発覚し不安に駆られた王弟が治癒士達に出産は命懸けの行為なんだ!だからきちんとした設備が必要!尚且つ産婆と治癒士両方が揃って取り上げるべきだ!と説き、当時の産婆達も全員治癒院に入る事となりノウハウ全てを治癒士達に叩き込んでもらった。

その甲斐もあって出産死亡率の高かったこの国で99%安全に出産できるシステムを作り上げたのだった。


先程リリアーヌと呼ばれた赤ちゃん。
彼女もまたこの治癒院に入院中の乳児で生死の境を彷徨いやっと生を握って戻って来れた子だった。


リリアーヌの母であるマリアもまた入院中で絶対安静の状態であったが今は落ち着いている。
当時彼女の魔力はほぼ枯渇状態にまで陥っていた。

完全に魔力枯渇すると生きている事ができないのがこの世界だ。

この世界で生きているモノ全てが魔力を持って生まれてくる。
多い少ないは個人差があるが、生きていくのに空気と同じように必要なモノ。
それが魔力であった。


所謂《魔法世界》である。


通常の妊娠は母体の魔力を源に少しずつ緩やかに吸収しながら胎児が育っていく。その過程で胎児も自分自身の魔力を作り上げ蓄えていく…という流れだ。

しかしマリアはリリアーヌを腹に宿した瞬間から、魔力が通常よりも何倍もの速さと量で吸収されていったのだ。

ミシェルは何とかマリアの魔力が枯渇しないように自分の魔力を注ぎ込む魔法を作り上げた。

そのおかげで何とかマリアの腹の中でリリアーヌは育つ事ができたが、それでもなお吸収する魔力に対して追いつかず、止むを得ず産月よりも3ヶ月も早く腹から取り出されたのだった。


そして、生命維持の為に沢山の管に繋がれてミシェルやライル、その他注げる魔力を一身に浴びてやっと魔力吸収が落ち着いたのが1ヶ月前の事だった。


 そんな事は未だ知る由もないリリアーヌと呼ばれた女の子はこれからの人生を上手く乗り越えていけるのだろうか。


リリアーヌの瞳に映る景色は彼女に何を見せたいのか、それはこの世界の神のみぞ知るである。




◇◇◇◇◇◇◇



「リリィ!どこにいるのー?」



…この世に生を受けてから早3年。

リリィこと、リリアーヌという名前でスクスクと育ち今ではバリバリの健康優良児!にまで成長しました。


見た目で言うと、お父様譲りの柔らかなふわふわの金髪、お母様譲りの菫色の綺麗な瞳。
容姿は問題なくthe・美少女!
白いきめ細やかな肌に大きくてパッチリとした二重の瞳、睫毛もバサァッ、アイメイクなんて必要ない状態。

黙っていれば見目麗しい幼児。
だけど中身は前の世界の記憶持ちの20歳の女!


もうここで生きていくんだ…と腹を括りました。

だって、どうしようもないんだもん。
頬をつねってみたり、寝て起きてを繰り返しても元の世界に戻る事はできなかった。

それに私の周りってイケメンイケジョが溢れ返ってるし。

大好物でしょ?

しかも魔法世界だよ!
異世界転生!!ファンタジーだよ!!

でも、ラノベ?的なモノは読んでこなかったし、マンガやゲームもする余裕無かったから、軽いネット情報しか知りません。

魔法とか異世界とか全くの素人デス☆


大事な事なのでもう一回言いますよー!


魔法とか異世界とか全くの素人デス!!!


大丈夫なんだろうか…
チート?って言うのはあるのだろうか。

まあ、私が生まれるまでに結構皆さんに迷惑をかけてきたようなので、そこはきちんとお礼というか何かで返していきたいとは思ってるんだけど…

まあ、何せ、シロウトですからー!

もう一回言っときます!


ですから!!


でも、分からないなら分からないなりに頑張ろうと思います!!

リリアーヌ・ベルナーとして。

以上決意表明でした!!



◇◇◇



「リリィ!!リリィ!?」
「はぁい」

木の枝に足でぶら下がり自分を呼んでいた人物の前に逆さまになって返事をした。


「ーーわっ!!」

申し訳ないくらいに驚かせてしまったようだ。
尻餅&半ベソだ。


「あっ!ごめんなさい、おにいさま」


クルリと一回転してフワリと地面に降り立ち両手で引き上げる。


「…リリィ。おてんばもたいがいにしておかないとまたセバスに叱られるよ?」

「あら?おにいさまがナイショにしてくれたらわからないおはなしですことよ?」


オホホと懐柔しようと可愛らしい笑顔で微笑む。


「…リリィ?」
「……チッ」
「あー!舌打ちした!リリィ!」
「ごめんなさぁい」


首をコテンと傾げサッと逃げ出す。


「あっ!もう!!リリィ!!」


ダッシュでお兄様の側から離れてバイバーイと大きく手を振った。

何てったってまだ3歳児。
身体が羽のように軽いんです。
ジャンプも高く飛べるし木登りだって大得意。
ん?これってチート?的な何かなのかな…。

普通の3歳児にしてはやれる事が多い気がするけど、中身が大人だからかな?って思ってる。


魔法は、身体と精神と魔力のバランスが取れて初めて使えるようになるらしいと聞いた。
5歳で神殿に行って何かに手を翳して何の加護がついているかどの属性魔法が使えるか、を見てもらったら魔法が使えるようになるらしい。

後2年か。楽しみで仕方ない!!




「本当におてんばなんだから…」


クスッと笑う彼はクリストフ・ベルナー。
王弟で宰相であるミシェルの息子であり、公爵家の長男でリリアーヌの兄である。

ハイスペックな彼の外見は父と同じく金髪金瞳。整った顔立ちに優しいアーモンド型の瞳にはいつもリリアーヌが映っている。
所謂シスコンであった。

魔力量も多めで5歳にも関わらず2属性操れる超天才児と呼ばれていて王太子の側近に一番近いと言われていた。


「リリィ様はいつも飛び回っておりますね」
「ーー!!セバスか…おどろかせないでよ」


背後に気配もなく立つ男。
公爵家執事のセバスチアン・ゴーデル。
前国王の従者として名を馳せていたが、前国王亡き後、ミシェルの元へとやってきた。

厳しくも優しい、神出鬼没だがかなり有能な男である。

彼もまたリリアーヌの虜でミシェルの従者として雇われたのにも関わらずマリアがリリアーヌを妊娠した途端にこのお腹の子に仕えたい!と従者を降り下僕からやり直し執事へと成り上がった男だ。

本当はリリィの従者をしたい!っとミシェルに懇願したが流石にそれは許されなかった。
その執念は恐ろしいが大変信用できるとリリィのお目付役を勝ち取る事ができたのだった。



「午後から明日のお茶会の準備するってお母様が言っていたから呼びにきたのに…」


はぁ…と溜息を一つ吐いて

「セバス、お願いね」
「畏まりました」


颯爽とリリアーヌの後を追うセバス。
この光景はこれから先も続いていく事だろう。




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