乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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46.家庭の事情ってやつですか?

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 怒涛の選定式を終えて、本日は冥界の女王様とニーさんが遊びに来る日です。
 
 ちなみにあの日の天気の事は今後も語り継がれていくであろうと司祭様が興奮しておられました。

 
 結局、私の契約したのは精霊王オベロンだと言うのはあの場にいた人達のみ知る事となり、光の精霊と契約した事にしましょう、という事になりました。
万が一、何かが起こらないとも知れないので、この事を精霊王が許した者以外に話した場合、その者とその話した相手も呪われるという少し恐ろしい契約を、皆が交わしました。

 それくらいオベロンとの契約は有り得ない事だ、と言う事です。
確かにオベロンと契約した事で、私の属性は闇を除く5属性になるという事で、確かに有り得ない…と納得せざるを得ない状況です。

 ああ、恐ろしい…

 私が望んだのは可愛い精霊とのキャッキャウフフライフな訳で、混乱や争いなんて物は必要ないんだよ…のんびりゆったり…怠けて行きたいんだよ…というのが本音です。

 
『まあヘタに手を出してくる者は居ないと思うがな…ここにはフェンリルもヨルムンガンドもいるし、ロ、セバスも我もいる』

「ですよねぇ」

 間違いないです。
真正面から仕掛けてくる人なんていないでしょう。

「さてと、あれ?ロウ?セル?……オベロン、二人を見なかった?」

『あー、彼奴らは…フェンリルは別宅の花瓶の横、ヨルムンガンドはリビングの窓枠にいたぞ?』


 ……かくれんぼの続きですか??
なんかあの二人ずっとおかしかったけど、最近特におかしいんだよね。
劇画調になっている時間が長いし、二人でなんかコソコソしてるし、この間なんてセバスも一緒になってコソコソしてたし。
なんか…隠してる?


『……まあ、何にせよヘルとニーズヘグが来れば分かる事じゃないか?』

「…そうかな、まあ、そうだね」


 とりあえず、準備準備!!
少し暑くなって来たからね、ちょっと早いけど今日はカキ氷を作ります!!
氷は魔法で作っておいたし、シロップはフルーツ果汁と生クリームを用意したし、あとは風魔法で氷を削るだけ!!
紅茶とかりんとうをまず出して、少し時間おいてから出す。

 ヨシ!!
準備OKだよね?


「ニナ、セバスは?」
「そういえば昨夜から見ておりませんね…」
「え?セバス出かけてるの?夜通しいないなんて珍しいわね…」
「…確かにそうですね。まあ、サラさんとハンナさんがいるので今日のお出迎えは大丈夫かと。あとトマスもおりますので警備面も問題はないですね」

 
 まあ、大丈夫ならいいけど。
ていうか、ロウ!セル!出てきて!!


『今日は出てこないかもな…』
「オベロン、何か言った?」
『イヤ…我も少し行く所がある故、席を外すが良いか?』
「オベロンまで…冥界の女王様に失礼じゃないの!?」

『あー彼奴は…我がおらずとも問題はない。まあ色々心しておけ。問題が起きそうならばすぐに呼べよ?』
「…うん。分かった」


 皆、何か変じゃない?



 ◇◇



 ザッと風が大きく吹いたと思ったら今まで何も無かった門前に大きな馬車が止まっていた。

冥界の女王様がキターーーー!!

 門を抜けて玄関前まで来てもらう。

「緊張する…こんな時にロウもセルもいないなんて…」

「ふふ…お母様だって緊張しているわよ?冥界の女王様が我が家にいらっしゃるなんて…」

 お母様…遠い目をしないで…。

「あのですね…多分僕が一番…緊張しています」


 お母様もリュドも緊張の色を隠せない。
お父様はお仕事で後から駆けつけるらしい。
お兄様は今日は召喚獣を呼び出す授業があるらしく、本当は冥界の女王様に会いたかったと泣く泣く学園に行かれました。

 この緊張感…後ろの皆にも伝わってしまっていて、ある程度の事では動じなくなった我が家の皆さんもガチガチになってしまっています。


 馬車が止まり、扉が開く。
ニュッと少し小ぶりに変化したニーさんが出てきた。

『オッスー!元気だったかー?』
「ニーさん!」

 気軽な挨拶に少しだけ緊張が解れたがそれでも、まだカチカチぐらいには緊張しています。
ニーさんの後からフワリと黒いベールを被った女性が静かに降りて来ました。


『我は冥界の女王ヘルと申す。宜しく頼みます』


 オオッ!メッチャ雰囲気ある!!


「お初にお目に掛かります。ベルナー家当主ミシェルに代わりご挨拶させて頂きます。マリア・ベルナーと申します。宜しくお願い致します」

「リリアーヌと申します」
「リュドヴィックと申します」

『宜しく。ここにいるのはニーズヘグ。私の契約獣である。ここでは大人しくしておくようにとしておるのでご安心を』

「あ、やっぱりそうだったのですね!」

『ふふ…』

「では、お入り下さい」


 ニーさんはやっぱり契約獣だったんだ。
それにしても…ロウとセルやっぱり呼んだ方がいい…よね?


 室内に入りソファに座ってもらう。
優雅な身のこなしに怖いとか冷たいとかいう印象は全くなく、高貴なお方、という事がよく分かった。
 
 家政婦長のサラとメイド長のハンナが紅茶を注いでくれる。
フワッと香る紅茶の匂いが少し緊張を緩めた。
まずお茶受けは、かりんとうで。
かりんとうも口に合うといいんだけど…。

 フワリとベールを上げると息を呑むほどの絶世の美女が現れた。
やはり日に当たらないからなのか肌の色は白を通り越して青みがかっている。
漆黒のストレートヘアはカラスの濡羽のようで、瞳も同じく漆黒。
人形のような無機質さもあるが、とにかく美しい人だった。

 コンコンとノックの音が聞こえて扉が開き、お父様が顔を出した。


「遅くなりました。ヘル様ご無沙汰しております」
『ミシェル、久しいな。息災であったか?』
「ええ。勿論」


 ハハハと笑い合う二人は面識があるようです。
サラとハンナが場を辞し、ヘル様は音もなくカップを持ち上げ紅茶を飲むと口を開きました。


『この度は、ニーズヘグを救ってくれ更にヘルヘイムの安寧を守って頂き感謝する』

『本当に助かった。ありがとう』

「あ、あれは本当に偶々だったので…」

『それでも、あのままだとニーズヘグを失っていたかもしれぬ。ヘルヘイムと他国の戦争が始まってしまう可能性を潰して頂いた。感謝以外の
言葉は見つからぬ。本当にありがとう』


 ニコリと笑うヘル様は本当に美しかった。


「…それで、何か分かった事はありましたか?」

『……ミシェル、恥ずかしながらこの件について知るのはこの場の者と王のみとし他言無用とさせて貰っても?』

「勿論ですが…何か…?」

『ふぅ……。ニーズヘグを捕縛し瘴気を集める魔具を仕掛けた犯人が分かったのだ』


 皆が固唾を飲んで見守る…

『大変言いにくい事だが……』

 
 誰かの喉がゴクリと鳴った。


『家庭の…事情……と言うか…ニーすまぬ、説明頼んだ……』

『まあ、言いにくいわな。えーと、ずばり言うと鉄の森の魔女が今回の犯人だ』

「ーーっっ」

 鉄の森の魔女…?
お父様とお母様は驚いた顔をしている。


『んーと、言いにくいんだけどな…ヘルの母上だ』

「えーっ!?」

『そうなるわな』

『…恥ずかしながら、ただの痴話喧嘩というか…母様の癇癪と言うか…。父様に戻って貰う為の…と言うか…はぁ…』

『ヘル大丈夫か?』

『うむ。心苦しいが…本当に巻き込む形になってしまって申し訳なかった。が、本当に早く解決できて良かったと思う』

 ヘル様は、ふぅ…と息を吐き紅茶を飲むと、かりんとうに目を向けた。

『コレ…は?』

「あぁ、かりんとう、と言います。リリィが考案した物です。是非おひとつどうぞ」

 お父様が勧めるとスッと手を伸ばしてかりんとうを摘むと綺麗な所作で口に運んだ。

 大丈夫かな?お口に合うといいけど…。

『ッム!!コレはっ!!』

 ヘル様の目がカッと開くと窓がガタガタと震えた。
 えっ!ヤバイ?口に合わなかった??


 ヘル様の手は次から次にかりんとうへと伸び、カゴに盛ってあった山がどんどん無くなっていった。

 ……気に入ってもらえた??

 カゴが空になり、ヘル様はコホンと咳払いをした。

『……失礼した。あまりに美味ゆえ……はしたない事を……』

 青白かった頬が綺麗に赤く染まった。

 ……可愛い。



『コホン。で、兄様方は何処へ?』

「え?兄様方??」

『あー、まだ聞かされて無かったかぁ…』

「ニーさん?何?どういう事?」

『…此方で世話になっておるフェンリルとヨルムンガンド…ロウとセルは我の兄達だ』


 えーーーっっ!?
そうなの!?てか、ヘル様は人なのに兄が狼と竜……なの?
お父様達は知っていた?
リュドは驚いてる。


「えと…そうですね、今は…隠れんぼ…中?かな?」


『………。』
『アイツ等……逃げやがったな』

「え?」

 今の低い声は…?今無言だったのは……ニーさん?だよね?
え?て事はヘル…様?


『オイ、ヘル地が出でるぞー』

『え?アライヤダワ。オホホホー』

 
 ……なんか、親近感?

 意外とそんなに硬くなる必要無しなタイプだったりするのかな?


『ふぅ…。確かにそこにおったな。見落としておった。オイ、ヨルムンガンド!』


 ビックゥッッとしたセルが恐る恐るという感じで短い手を挙げた

『ヨ、ヨウ!妹ヨゥッ!チョットしたジョーダンじゃないカァ!ハッハッハー元気だったカァーー?』 

 
 ……お前はどこのラッパーだYO。






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