45 / 122
45.誰が来ても仲良くするんでしたよね?
しおりを挟むビカビカッと少し下品な色(夜の町のネオンみたい)に光って光って周りが眩しすぎて見えなかったのが少し落ち着き、周りの騒めきも少し落ち着きを取り戻した。
が、そこにいる人物の姿が見えると再度騒めいた。
『やあ!リリィ!待たせたね!!』
「あーえと。こんにちは。何か用でしたか?」
『いや…あの…ね、我が…』
「あれ?どうしました?」
『あの…リリィさん』
「………?」
『くすん…。』
「あの…えーとすみません。今大事な時なので…お帰り頂いてもよろしいですか?」
「リ、リリアーヌ殿、こちら…は、あの…」
「あ、司祭様…こちらオロベンさんです。あれ?オンベロさん?だっけ?」
『あの、オベロンです…』
ザワッと一際大きく周囲が騒めいた。
『えと…あの…、皆に訂正もできたし…』
「あ、訂正できたのですね!ありがとう!!あ、間違えて来ちゃったんですよね?そうだよね?あー、びっくりしちゃった!やだもう!じゃあ、もう一度」
「あ、リリアーヌ殿。選定具は一人一度までと決まっていて…」
「ーーーえっ!?……じゃ、じゃあ、あの…私にはもう精霊が来て…くれない……?え?……嘘だずっと楽しみにしてたのに……?」
「リリィ、落ち着きなさい」
「だって、お父様!この方間違えて出て来てしまったのよ!それなのに、私の精霊…もう来れなく…」
『あの…すまん…』
『『『オベロン様………なんて不憫なお方だ…』』』
……少し落ち着こう。
この目の前の綺麗な顔をした美男子?は、精霊王のオベロン?様だったよね。
前に会った時は怒りに任せて結構失礼な事ばかり言ってしまったのよね…。
助けて貰ったのに、あの態度は無かったかな…って後から反省したんだけど……
ーーー!!
精霊王なのに、間違えて?選定式に出てきちゃった…?そんな訳ないじゃない。
え……もしかしてワザと?え…あの時の復讐?……。
選定具は一人一回しか使えないって事は…
………嘘。
私……精霊の加護が…貰えなかった……って事?
えと……え?嘘でしょ?誰か嘘だと言って!!
本気で泣きそうなんだけど……泣いてもいいですか?
「リリィ、落ち着いて?オベロン様のお話を聞かせて頂こう?」
「お父様ぁ……」
鼻水がたりっと垂れたのは仕方ないと思うの。
『リリィ、落ち着いて聞いてくれるかな?』
「……なんですか?グスッ」
『あの…非常に言いにくいというか…何と言うか…』
あぁ…グッバイ私の憧れ、精霊とキャッキャウフフライフ……でも!大丈夫よ!精霊の加護は貰えなかったかもしれないけど、私にはロウとセルというオモシロ家族がいるじゃない!!
うん、泣かないわっ!!
私、立ち直りは早い方だって昔から言われてるのよ!だっていつまでもクヨクヨしてたって、時間は同じように流れていくのだから!!
楽しくしてる方が幸せじゃない…?
でも……グッバイ……マイ精霊………
『だから、リリィ話を聞いてくれ』
「あ、ごめんなさい。どうぞ……」
『えーとだな。コホン。今回、リリィの契約精霊の……』
「ストップーーーー!!!はぁはぁ…ちょ、ちょっと心の準備をさせて下さい…」
契約精霊は居ない…って伝えられるのよ…こんな皆の前で……。
でも、他の人が居ないのはセーフだったんじゃない?そうよ!恥をかくのは王宮関係者の前でだけ。
それは不幸中の幸いってやつなのよ。
でも…お父様ごめんなさい…。
4属性持ちのお父様からミソッカスみたいな子が出てきてしまって……。
でも!お兄様も2属性だし、闇の属性のリュドだっている。
だから!ベルナー家は大丈夫。
『あの…非常に言いにくいのだが……』
「はっはい!!」
『我が…契約精霊として…あの…宜しくお願いしたいのだが……』
「ーーーーーー」
『あの…リリィ?』
「………………。」
『リリィさん?』
「………………。」
『えーと?』
「????」
周りは皆大騒ぎになっている。
「えと… え?……なんで?」
『なんで…と言われても……なりたいから?』
中学生の告白タイムかよ!二人でモジモジしちゃって。
えーと…?この人って、精霊の王様だよね?
え?そんな人が小娘一人に付いちゃっていいの?……だめじゃね?普通はダメでしょう…。
そこの所はっきりさせておかないと…。
「あ、あの…ですね?」
『うむ。何かな?』
「えーと、精霊の王様なのですよね?」
『いかにも』
「そんな方が一人の人間に付くっていうのは精霊界的に…どうなのですか?許されるモノなの?」
『……我がリリィを補助したい。それだけではダメか?』
「…ダメだと思いますが……」
『え?ダメなの?』
「え?わからないですけど…普通はダメでしょ?」
『え?そうなの?』
「え?」
どうしたらいいの?このカオス……。
『リリィ、大丈夫か?』
「ロウっ…」
『やっぱりな…おかしな事になると思ったんだよ…』
「セルゥ…」
周りはフェンリルとヨルムンガンドの急な登場に驚きを隠せていない。
やっぱりって?
「どうしたらいいの?こんな……」
『まあ、精霊王本人がリリィの契約精霊になりたいって言ってるからいいんじゃないの?』
「……。」
『リリィはどうなんだ?コイツ断っても本来なら別の精霊が来てくれる事もあるが…コイツの後だと…まぁ…皆嫌がるだろうな…』
「……。」
『リリィ?』
「……全然嫌とかじゃないの。王様が…なんて、すごい光栄な事だし、皆が良いと言うなら…とは思うの……ただ…」
『ただ…何だ?』
「ーーーっっ」
『リリィ?何でも言っておくれ…』
「…あの、非常に言いにくい…のですが……』
『うむ?』
「ーーーだって!精霊王様、大きいじゃないですかっっ!!」
『『『……え?』』』
「……皆の精霊達は小さくて!可愛くて!キレイだったり、カッコ良かったり!でも小さくて!!精霊王様は…人と同じ…ううん、より大きい部類に入るじゃないですかっ!!でも!皆の精霊は…小さくて可愛い……」
『えーと、精霊王が嫌な訳じゃなくて…』
『えーと、小さい精霊が良かった…って事か?』
「そうよ!!ずっとずーーーっと思いを馳せていたのは小さくて可愛い精霊達!!うちにはもうデカいのが二人も居るんだもの…」
『我が嫌だ…という訳ではないのだな?』
「ええ。さっきも言ったけどそれはありがたいの!だけど……私…小さい精霊と遊びたかったんです……」
『はぁーーーーーっ……』
あら盛大な溜息です事。
『ならば、我と契約を…』
「あの…だから…話聞いてました?」
『ああ、問題ない。小さくなればいいのだな?』
「え?」
精霊王は指をパチンと鳴らした。
フワッとキラキラした光が広がったかと思ったら、目の前に他の精霊と同じサイズのイケメン精霊王ミニが現れた。
「おぉ!手の平サイズ!!」
『コレで良いか?』
「いや、こちらこそ本当にいいのですか?」
『ああ。リリィ、こちらこそよろしく』
「リリィ、誰が来ても仲良くすると言っていたじゃないですか?」
「リュド…。そうよね!うん!こちらこそよろしくお願いします!精霊王様」
『オベロンと呼んでくれ』
「オベロン…様…色々失礼な事ばかり言ってごめんなさい。これから仲良くして下さいね!!」
『呼び捨てで!』
「ふふ。オベロン」
『ヨシ、リリィ!契約完了だ!!』
前代未聞の選定式は無事(?)終了!!
この日のマルタン王国の天気は
晴れ→曇り→大雨→ヒョウ→霙→地震→竜巻→雷落ちまくり→曇り→晴れ→晴天に虹、最終的には花が降ってきた。
22
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる