乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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58.ホラーな展開って必要ですか?

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 中等部に進級し入寮を済ませた私は生徒会役員用のサロンに向かっているでした。

 が、ここは何処?

 ロウさーん、セルさーん、ネスルさーん、オベロンさーん…ラスクさーん…
誰でもいいからちょっと出てきて貰ってもいいですかね??

 寮を出て右に行くと学園があるから、そのまま道なりに歩けばいいんじゃなかったっけ?
ちゃんと歩いてた筈だけど……なんか……なぜ?
森の中なんですけど…何処をどう歩いたらこんな所に出てくるのかしら?

 それに…呼んでも誰も出てきてくれないなんてちょっとおかしい?

 サクサクと一応道なりに進んでみるけど…
普通の森と違う?精霊の森とも違う…初めて来る所だよね…。

 一度歩みを止めて後ろを振り返ると歩いてきた道が無くなっていた。

「え?マジかー?」

 ザワザワと森の木々が蠢いているように見える。
最近平和に過ごしていたから、ちょっぴりホラーな感じがゾクリと背中を震わせる。

「ヘルの所のスケルトンさんとかよりもホラーってどういう事よ…雰囲気って大事なのね…」

 ここに立ち止まっていてもきっと何も変わらないし誰も来てくれないだろう。
ヨシ、気合い入れて前に進むのみよ!!

 ザクザクと森の中を進んで行くと、フワリと何か壁のような物に触れたような気がして何かを通過した感覚があった。

「ん?何か場所?が変わった……?」


 先程までのザワザワしたホラーな雰囲気は消えて何かの中?森だけど安心できるような場所に来た感じがした。

 足を止めて周りを見渡すと、鳥の囀りや爽やかな風の匂い、普通の森よりも清廉な場所である事に気付いた。
湖があり、その中心に家が建っている。


「……家?」


 湖の中心を眺めていると何処からかボートがこちらに進んで来て、目の前で止まった。


「……乗れって事…かな?」


 よく分からないが、このままでは行くも帰るも出来ないし…。
女は度胸!!乗ってやるわよ!!

 ボートに乗り込むと何も触っていないのにひとりでに動き出した。


「コッワ…。ホラーもホラーじゃん…ココで湖から手がバーーンッとか出てきたら……ヒィッ…」


 色々な妄想をしてみたが特に何も起こらずにボートは家の前に到着した。
ボートから降りて家を見渡すが特にこれといって変わった所は無い普通の家に見える。

 すると勝手に扉が開いた。

「ーーっっ!!だからホラーなんだって…。入れって事…?」


 恐る恐る扉から家の中を覗くと、思っていたよりも小ざっぱりとしていた。

「もっとおどろおどろしい感じかと思っちゃった…お邪魔します……」

 
 家の中に入ると自動で扉が閉まる。
自動ドアみたいなもんか、と納得させて部屋を見渡すと椅子が勝手に引かれテーブルにお茶の用意が出来ていた。

「ふむ。座れ…と、そしてお茶を飲め…という事かな?」

 椅子に座り、カップを持ち上げ一口飲んでみる。
美味しい!
リュドが居たら怒られそうだわ…見知らぬ場所で出された物に口を付けるなんて!って。

 フフ…と笑いが込み上げた瞬間に、目の前の椅子に人が座っていた。


「ーーッ!!」

 吹き出さなかった自分を、褒めようじゃないか!!


『…いらっしゃいリリアーヌ』

「…お、お邪魔してます…えーと、どちら様…でしょうか…?」

 見た事のない妖艶な美女を前に、頭をフル回転させるが会った事は無いと思う…が、どこかで見たような顔立ち……


「あ、…ヘルにそっくり!!」

 ヘルがもう少し年齢を重ねたらこんな感じになるだろうというような容貌をした女性だった。


『うふふ…ご名答よ』

「って事は、ヘルのお姉さん!?」

『あらぁ…?嬉しい事言ってくれるじゃないの』

「え??」

『うふふ。あの子達がお世話になっているわ』

「え?え??」

『あの三人の母です』

「えーーーっっ!?ってお母様??この美女が?ヘルはまあ分かるけど!ロウとセルのっ!!??」

『そうよ…ふふ。リリアーヌに会いたくてね。あの子達に言ってもなかなか会わせてくれないから…』

 えーと、て事は…鉄の森の魔女さん…て事?
え!?あの魔具をばら撒いた??


『うふふ。リリアーヌのお陰で回収されてしまったけどねぇ…でも感謝もしてるわ』

「……感謝?ですか?」

『そうよ…あんなに探してたのに見つけられなかった旦那様が会いに来てくれたから…うふふ。叱られちゃったけどね』


 ロウ達のお母様はペロリと舌を出すと、恋する乙女のように頬を染めて嬉しそうに笑っている。
そう言えばヘルも自分のお父様を探してるって言ってたよね?ロウとセルは居場所分かってそうだったけど…。


「えーと、良かったですね?ずっと探してらしたのでしょう?」

『そうよ…気が遠くなりそうなくらいに前からね…でも会えたし、これからは定期的に戻ってくれる約束したからもう寂しくないの』


 おー!このはにかみ笑顔は可愛すぎでしょ!!
本当にこの人三人の子持ちですか??


『リリアーヌは…不思議ね』

「あ、リリィでいいです!皆そう呼んでいるので。それと…不思議とか変わってるとかよく言われるのですがどの辺りが不思議だと思いますか?」

『そうね…まずは物怖じしない所…かしら。後は考え方?が個性的ね。純粋というか、疑問を疑問として投げ掛けられるというか…』

「それって普通の事じゃないですか?違う?」

『ふふふ。普通…ね。リリィ、貴女のお陰で変わる事ができた部分も大きいのよ?例えば闇属性の置かれていた状況とか、魔族の事とか…』

「え…でもそれはただ変だなと思っただけで…」

『その、変だな…に気付かないのよ普通はね』

「え?それって…何故?」

『何故かしらね…。ふふ。残念だけど今日はここでおしまいね。来ちゃったわ』

「…え?」 


 ガチャっと扉が開いたので振り返ると、そこには二人の男性が立っていた。


『……はぁーっっ!!心配したぞ』
『マジで…ビックリした…』


 ……えーと?
……どちら様ですか??


『リリィ…大丈夫か!?』
『おい!てめえ何かしたんじゃねえだろうな!?』

 
 ……えーと。
 だからどこのどちら様でしょうか?
ていうか、すごい二人ともイケメーンさんですが…お会いした記憶がございません。


『おい?リリィ?』

 この男性は銀髪で銀瞳。
ふわふわした髪の毛を掻き上げて鬱陶しそうに前髪を払っている。
身長も高くてガッシリした体型です。


『リリィ?やっぱり何かされたんじゃないか?』

 こちらの男性は黒髪で紅瞳。
長いしっとりした黒髪を一つに結んでいる。
身長は高くて銀髪の人よりはスラリとした体型。


『『リリィ?』』


 二人に詰め寄られてどうしたらいいのか分からなくなってしまいました。


『ッククク…。アンタ達リリィにビビられてるじゃないの、ざまぁないわね』

『ビビられ…って。リリィ我がわからないのか?』
『リリィ…オレの事分からない?』


 えーとえーとパニックです。
イケメーン二人に代わる代わる話しかけられても……。


 誰か!説明プリーズ!!


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