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57.この世界の寮ってどんな物ですか?

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 本日は入寮の日です。

 私はお兄様に付き添われてリュドと共にアールヴレズル学園寮までやってきました。

 寮の部屋は今日から卒業まで基本的に変わらないらしいですが、二人部屋の人達はあまりにも相性が悪かったりする場合があるのでそういった事情がある場合は変更も可能だそうです。

 一人部屋の場合は六年間同部屋だという事ですね。

 沢山の子息令嬢達がワイワイと入寮の手続きをしています。


「リリィ!!リュドも!」
「あ、レオ」
「レオ様!」
 
 彼はレオポルト・ガルシア 辺境伯の子息で昔婚約して欲しいとアプローチされましたがお父様によって一蹴。
それでも諦めずにイベントの時にプレゼントや、お茶会でのエスコート等をしてくれています。


「リリィ、元気だった?なかなかゆっくり会えなかったし話せなかったから寂しかったよ。しばらく会わないうちに更に美しくなったね」

「レオは相変わらずねぇ」


 レオは銀髪に青い瞳のイケメン君です。
あら、身長も更に伸びたみたい。
すらりと伸びた手足は長くてしっかり鍛えている印象。

 ご令嬢たちからの熱烈なアプローチもあるみたいなんだけどね。
それには全く見向きもしないらしくて、でもそんな所も素敵って事で人気も高いそうです。

 …確かに、年齢を重ねてきて15歳にもなると少年というよりも青年に近くなってくるよね。
と、言っても元の世界のこの年齢の子達よりも遥かに大人っぽい気がするわ。

 チラリとレオを見上げると、「ん?どうした?」と美しい青い瞳を少し細めて笑います。
それを見たご令嬢達はキャーと頬を染めてチラチラとレオを見ながら隣にいる私を確認すると少しガッカリした顔をされます。

 ……失礼だと思いません?

 あのガッカリ顔は、人の顔見てザンネーンって思ってるって事でしょう?そりゃあ、レオやお兄様やリュドというハイパーイケメン達に囲まれて羨ましがられるのは昔からの事だし、その視線を受けるのは慣れましたが…最近特に皆さんがその、ザンネーンっていう顔をされるのです。

 私だって、そこまでヒドイ顔だと思ってないですよ。
だってお父様とお母様のDNAが刻まれているのよ、お兄様とだって同じ血が流れてる。

 ……なのに、皆さんザンネーンって思ってるって事でしょう?
成長過程でどこか失敗したのかしら……。


「皆さんリリィ様を羨ましがっているのです!その美貌、バックグラウンド、いい男に囲まれた姿に太刀打ちできないと悔しいのですよ!」

 とニナは慰めてくれるのですが、それは身内の欲目ってヤツでしょ?
いいのいいの、わかってるわ。
ベースは良い筈なのにそう思われるって事は、内面の雑さが滲み出てるって事でしょ? 


 そんな自分にザンネーン!よ!!


「リリィ?」

「あ、ごめんなさい。何だった?」

「テオが、後で皆で集まらないか?、って。生徒会役員用のサロンで待ってるって言ってたから伝言しに来たんだよ」

「あ、いいわね!皆で集まるのって久しぶりよね!」

「なんだかんだで皆忙しくしてるからね。あ、勿論リュドもおいでよ?」

「…え!あ、はい!!」

「あはは、じゃあ後でね」
 
 レオはヒラリと手を振ってその場を離れて行った。その後ろ姿をご令嬢達は頬を染めて、ご子息達は憧れの瞳で見送っていた。

 私の隣でリュドも同じ様にキラキラした憧れの瞳で眺めています。

 レオは光と闇の2属性持ち。
2属性っていうだけでも凄いのに、更に光と闇という相反する属性というのが凄いと皆からの憧れの的です。
 レオが悩んで苦しんでいたのも遠い昔のように感じるわ。

 リュドは闇属性なのでレオに色々相談したりしてたそうでその憧れ方は半端なく、ある意味でレオマニアだと思います。
 
 よく「リリィはレオ様と一緒になってくれれば、僕はそれだけでいい…」とリュドに言われました。
それって、レオが身内になってくれたら嬉しいっていうリュドの希望なだけじゃん?と思いますが…。

 
「リリィ、このカードが部屋のマスターキーだから。部屋にこのカードを挿す場所があるからそこに。そしたら全てが起動するからね。で、部屋自体は扉横のパネルに手を翳して魔力を込めれば開閉できるからね」


 なる程、マスターキーを挿しておけばあとはキーを持ち歩く必要がないという事ね。
よく物を無くす私にはありがたいわ。

「じゃあリリィ、いくら付き添いでも僕は女子寮には入らないから後は部屋は自分で整理するんだよ?」

「大丈夫よ!お兄様心配しないでちょうだい!」

「……入ってすぐに問題とか起こさないでよね?じゃあリュド行こう。リリィは後で生徒会室のサロン…の場所は分からないか?」

「場所ね…冊子に書いてあったわよね?それ見て行くわ。じゃあ、また後でね!」

「あ、ああ…後で」


 寮生活か…前の世界とは全く違う環境だから楽しみよね。
ある意味で前も寮生活みたいなものだったけど…。
とりあえず、他のお嬢様方と違って基本的に自分の事は自分でできるから、問題無し!よ!


 私の部屋は3階のBね。
あ、隣のAはアディだわ!嬉しい!!
メルが向かい合わせの斜め前でCで、レティがその隣のD、皆一人部屋でこんなに近くの部屋だなんて、ワクワクしちゃう!!

 部屋の前に着くとちょうどメルとレティが親御さんと一緒に部屋に入る所だった。

「皆様、ご機嫌様」
「リリィ!すぐ近くね!嬉しい!」
「リリィ、これからまたよろしくね!」

メルとレティとそれぞれと会話を交わし、親御さん達にも挨拶をする。


「ご無沙汰しております。また仲良くさせていただきますので宜しくお願い致します」

 ニコリと笑うと親御さん達も口々に挨拶を返してくれました。


「リリィ様、また美しくなられましたね」
「このマルタン王国で一番じゃないですか?」


 そんなお世辞はいいのにね。
ウフフと笑って皆さんと別れ、部屋の扉の横のパネルを確認。


「ここに、魔力を込めて手を翳す…と」


 ポウッと手に魔力を込めパネルに近づけると、同じようにポウッと光ってパネルに文字が浮かび上がった。

 
 ・リリアーヌ・ベルナー 火風水土光 
 ・契約精霊 オベロン(精霊王)
 ・契約獣  ロウ(フェンリル)
       セル(ヨルムンガンド)
       ネスル(フレスベルク)
       ラスク(ラタトスク)
 ・在校兄弟 クリストフ・ベルナー
       リュドヴィック・ベルナー

 
 成る程、基本情報的な物が入力されたわけだ。

 カチャリと鍵の開く音がしたので扉を開いた。
部屋は一人で使うには広すぎるくらいで、掃除が大変そうだな~というのが最初の感想。

 部屋自体はとても綺麗で、広ーいリビングにはお母様が送ってくれたソファやチェスト等がすでに並べられていた。
 リビングの横にミニキッチンも付いていてお茶を入れたり簡単な料理だったらできるくらいのコンロ的なものや冷蔵庫的な物もおいてあった。

 マスターキーを挿すパネルが中にあって、そこに挿すと魔力が流れて色々な物が起動した。

 リビングから隣の扉を開くとベッドルームがあって、こちらも送ってもらった上質なベッドがダーンと置いてある。
クローゼットも大きくて前の世界でいう所のウォークインクローゼット。しかもそれだけで6畳はありそうなサイズ。

 クローゼットにも簡易なワンピースから部屋着等が所狭しと並べてあり、ニナの仕事の早さに驚いた。

シャワーブースとトイレも付いていて、ゆったりした1LDKって感じの部屋に正直、寮って……?と分からなくなりました。


 さて、なんかほとんど片付いているし、生徒会役員用のサロンに向かいますか!!

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