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65.師匠と呼ばせて頂いてもいいですか?
しおりを挟む『私達よりハーブの方がいいかも!』
「ハーブ?」
『草の精霊よ。彼女達の方が詳しいし良い物を選んでくれると思うわ』
「え?と…そうね?」
『リリィ!来て!』
『ストップ!!』
『今回は時間がないからな、もし呼ぶならココに呼べ』
『チェーッ!遊びたかったのにな!』
え?ロウとセルが止めなかったらまたあの時の鬼ごっこが始まる所だった…?
「えと、ドリー気持ちは嬉しいけどまた今度ゆっくり遊ぼうね。今日はアン様お待たせしてるから」
『分かったリリィ!約束ね!!あ!ハーブ来たわ』
緑色の髪に緑色の瞳の精霊がフワフワと近付いてきた。
『…初めましてぇ…リリィ?ハーブよぉ…』
また可愛らしい精霊だなぁ。
「宜しくね。薬草の事聞きたいのだけど…」
『……せーれーおー様にぃ…お願いしたらぁ…早かったんじゃないのぉ…?』
ハーブのその一言にハッとした。
「ーーーっく!!……そうだった。その手があった!!!」
『……皆気付いてたが、リリィが自分で探しに行きたいのかと思って何も言わなかったのだが…』
『やっぱ言えばよかったか?』
「うーん、でもまあいいや!3人でボートも楽しかったしね!」
『ちなみにぃ…薬草はぁ…この辺りにもあるけどぉ…』
「あるけど?」
『今あるのはぁ…チョット若いからぁ…』
……のんびり屋さんかな?
『奥の方のがぁ…オススメかなぁ…』
「森の奥の方?入っていってもいいの?」
森の奥へは警備員が立っていて、立ち入り禁止になっている筈だった。
『いいよぉ…けーび?のニンゲンがぁ…いるけどぉ…』
「いるけど?」
『私達が止めとくから安心して!』
痺れを切らせたのかドリーが横から突っ込んで来る。
「ふふ。ありがとう。じゃあ、早速行ってもいいかな?」
『いいわよぉ…』
『OK!』
ドリーやハーブ、達精霊が先行していって、その後ろをロウ達と一緒にサクサク進んで行くと森の奥へと続く道まで来た。
そこにはやはり警備の人が立っていてこれ以上奥には行かないように注意喚起を促している。
「?、君達ここから先は…」
精霊達がヒラヒラと警備の人の周りを飛び回りキラキラした粉を振りまいている。
「ちょっ!ちょっと…」
『OK!行けるよ!』
警備の人は少し眠そうに目を擦っているが、私達が見えない?のかスムーズにその横を通り抜ける事ができてしまった。
「大丈夫かな…?」
『大丈夫!チョットだけ眠くなって視界が狭くなるだけだから!』
『数分でぇ…元に戻るよぉ…』
ならいいんだけど、その数分の間に何事も起こらない事を祈った。
『もう少しでぇ…着くよぉ…』
サクサク進んで行くと太く大きな木が沢山ある所に出た。
『エントーー!』
ドリーが急に大声で叫ぶと木がざわりと揺れる。
『…何?あれ?……リリィ…?』
響くようにエントの声が聞こえてきたが、姿が見えない。
「え?エント?何処にいるの?」
『リリィ!エントは目の前の大きな木だよ!』
「ーー!そうなんだ!!すごい!!本体はこんなに大きいのね!!」
『……久しぶり……何?』
目の前の巨木がエントだと言う。
そういえば以前に巨大だけどサイズを変えれるとか言っていたよね。
「あ、薬草を貰いに来たの。ドリーとハーブに案内してもらってる所よ」
『そうなんだ…僕の下にちょうど良いのが…育ってるよ?』
「わあ!ありがとう!!」
エントだと言う巨木の下を見ると色々な草花が群生していて……何が何の種類なのか私には全く分かりませんでした…。
『コレがぁ…毒消し…コレがぁ…睡眠…』
『リリィ!薬草はこの辺よ!』
『あ、中級くらいになりそうなぁ…やつあるよぉ…?』
「中級って?」
『中級ポーションだよぉ…』
…ふむ、どうしようか。
初めて作る物だし基礎は大事!!って事で
「普通のポーションになる薬草でいいわ。失敗するかもしれないし、勿体ないしね」
『じゃあ……アングルボダ様に…お土産……』
「あ、成る程!そうねそうする!ありがとうエント!」
普通の薬草は自分用に、中級になる薬草はアン様に…ある程度の量採らせてもらった。
そしてエントに別れを告げ来た道を戻り警備の人の横を通過する。
…あの、あれから十分以上は経っていると思うのですが、警備の人は行きと同じように眠そうに目を擦っていた。
大丈夫なのかな?
心配だな…。
『もう、戻ると思うから大丈夫だろ』
「ロウ、本当に?」
『大丈夫だろ?ホラ』
「ーー……君達まだ居たの?ここから先は行けないよ?」
警備の人が目を擦るのを止めると何事も無かったかのように話しかけてきた。
「あ、はい。もう行きますので…」
やっぱり……精霊コワイかもですね……。
精霊の森の湖まで戻って来るとすでにボートが到着していて、更には何故か沢山の精霊達が迎えてくれている。
「え?何?皆どうしたの?」
『皆ね、リリィと遊びたくて集まったんだって!オベロン様ばっかりズルイって』
『そうだそうだー!』
『私達も遊びたい!』
『リリィあそぼー!』
精霊達がワーワーと訴えてくる。
え?どうしたらいいの?
今度また…って言ってもダメって事?
『前に花冠をくれたじゃない?そのお礼がしたくて皆集まっちゃったみたい』
「え?それってすごい前の?」
『我等の時間軸とヒトの時間軸は少し違うからな…リリィにとってすごい前だとしても、奴等にとっては少し前、だ』
成る程ね、確かに精霊って人間よりも遥かに長く生きるのだものね。
でも…今日はムリなんだよなぁ。
早くこの薬草持ってアン様の所へ戻りたいんだよ…。
「どうしよう…」
『リリィ、そういう時は我を呼べ』
「オベロン!通常サイズ!」
『…うむ。今はな。とりあえず精霊達の事は任せてリリィ達は鉄の森に戻りなさい』
え?いいの?本当に?お任せしちゃって大丈夫?
『クク、一応な我は皆を纏める王だからな』
「あ!そうだったね。ゴメンいつものだらけた姿見てたら忘れてたわ!」
『コ!コホン!!まあよい。行きなさい』
「じゃあお言葉に甘えて…ドリー、ハーブありがとうね!皆もゴメンね!またね!」
バタバタと湖のボートに乗り込み、オベロンに後はお任せして皆にお別れを告げた。
ボートは音もなくまた静かに進んで行った。
◇◇
ボートで精霊の森の湖から鉄の森の湖にどうなっているのかわからないけど渡ってきて、最近では見慣れた家が見えてきた。
静かに家の前に到着するとやはり音もなく扉が開く。
「ただいま戻りました~!!」
『なかなか早かったじゃない?もっと遅くなると思ってたわ』
『我等が止めなかったら今日中には戻って来れなかっただろうな』
『確かにな~あの様子だと数日…いや一月くらいは拘束されていたかもな…』
「え!?マジ??」
『ああ。本当だ』
『好かれるってのも考えもんだなぁ…』
『本当よね…。で、採って来れたのかしら?』
皆がしみじみとした雰囲気になりそうな中、アン様が軌道修正した。
「あ、はい!コレです。コッチはアン様に」
『あら?いいの?……ん?かなり物がいいわね…どこまで行ってきたの?』
「どこまで…というと精霊の森のドリー達がエントの所まで連れて行ってくれたので、そこで採らせてもらいました!」
『本当に…好かれているのねぇ…エントまで…フフッ』
「どうなのでしょうかね…精霊達の姿が見える人間ってのが珍しくて…という気もしますが…」
『あら、……でもその考え方は精霊達に振り回され過ぎなくていいのかもね…。さて、では始めようか』
「はいっっ!!」
精霊達の事は一先ず置いておいて、今はこれから作るポーションに集中しなくちゃ!!
ドキドキしながらアン様の後を追って奥の部屋に向かう。
表から見た時よりも奥行きのある家なんだなぁ…なんて思いながら。
『リリィはこれ使ってちょうだい…ロウ、セル、アンタ達は部屋が狭くなるから外に出てちょうだい』
『……ババア、リリィに変な事吹き込むなよ?』
『母よ、リリィを頼みますよ?』
ハイハイと二人を追い出してアン様と向き合う。
『リリィ、ポーション作りはね…根気と魔力コントロールがモノをいうわ…』
「ーーっはい!」
魔力コントロール…ほぼした事がない…気がします。
契約魔法の時も、攻撃魔法の練習の時も…全開でやってしまっていたけど、ロウとセル、ネスルとオベロンが上手くやってくれてるのだと思う…。
その事をアン様に伝えると
『やっぱりね…過保護も過ぎると成長の妨げになってるね…』
と呟かれました。
「……私、大丈夫でしょうか…?」
『アンタ、私を誰だと思ってるの?【鉄の森の魔女】よ!任せておきなさい!』
かっ!かっこいい!!!
…師匠と呼ばせて頂いてもいいですか?
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