乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

文字の大きさ
102 / 122

102.戦う理由!!

しおりを挟む


 
 目の前からリリィが消えて残されたのはレオ、隣国の王子と王女だけだった。

 
 「精霊姫は素晴らしいな! 一目で心を持っていかれたぞ! マリアと同じクラスならば中等部2年って事か。美しい子だったな」
 
 「───殿下……おやめ下さい」
 「何をだ?」
 「殿下は国に婚約者がいるでしょう!」
 「まあ、そうだな。アレは一応王妃として置いておいて精霊姫には側妃としてプライベートを支えてもらうのもいいな」
 「殿下……ご冗談はよして下さい」
 「フフ、冗談なんかじゃないと言ったらどうする?」
 「──っっ」
 「フフフ、さてどうするか……」
 「あら、お兄様ばかりズルイですわ。私もレオが欲しいわ」
 「───っっ! 私達は物ではございませんので」
 「クク……ではマルタン王に会いに行くか」
 「あら、いいわね! 私も行くわ」
 「───っっ殿下!!」



 
 ◇◇◇



 「何なんですかね!! あの人達!!」
 『ちょっと……落ち着きなさいな……』


 師匠の所に転移して、薬草をちぎりながら思いっきり愚痴を言わてもらっています。


 「だって!! 師匠はどう思います!? 初めて会った人の事ベタベタ触って!! それに……」
 『それに……?』
 「勝手な事ばっかり言って、一目惚れだかなんだか知らないけど!! レオだって!!」
 『まあ……相手はトレファス王国の王族でしょう? 無謀な事ばかり言う兄妹って噂よ……』
 「やっぱりね!! あんな非常識な人こっちには居ないわ!! あ───っっムシャクシャする!!」
 『フフ……でもいいの? レオが来るんじゃないの……?』


 あ、そうだった。  
 本当は気持ちを伝えようと……思ってたんだ……。でもさ、レオ始めは止めてくれたけどさ……。


 シャラッと胸元のペンダントが揺れた。


 「今日は……もうそんな気分じゃないな……」
 『……そう、じゃあポーション何個か作って落ち着いたら帰りなさい……』
 「……はぁい」


 ブチブチちぎって鍋に放り込んで水入れて魔力を注ぐ……無心でやってたら落ち着くかな?


 ボンッ


 ───

 『リリィ……なんか変なモノ入れた……?』
 「──いえ、薬草と水だけ……です」


 鍋の中には黒紫色のドロリとした何か……


 『鑑定かけたけど……アンタこれはヤバい……』
 「── 」
 『毒薬ex……一舐めで意識不明に、一口で致死量……この量あったら1学年は殺れちゃうわね……』
 「──私はまたなんて物を作ってしまったのか……師匠……封印しておいて下さい……」
 『……ええ』



 ◇◇◇



 はぁ……と溜息混じりに部屋に戻り、自分の気持ちのモヤモヤがまだ晴れてはいない。

 コツッと音がしてバルコニー側の窓を見ると暗闇にレオの姿があった。


 ───っっ!!


 今日は……ムリ。何も話せない……。
 でも来てくれた……から……


 カチャッと窓を開けてバルコニーに出ると、おもむろにレオが抱きしめてきた。


 「──っっ」
 「───リリィごめんね」
 「……何が?」
 「止められなかった……」
 「何を?」
 「──ミラン殿下が……」
 「…… 」
 「マルタン王に……」
 「──っっ」
 「でも! リリィの婚約者はオレが第一候補だ!!ミシェル様がリリィの事を簡単に許す訳もない!!」


 珍しくレオが興奮して声が荒ぶっている。

 
 「レオ?」
 

 抱きしめられた腕の中でモゾリと動いてレオの顔を見つめると、怒りに任せているような今にも泣き出しそうな表情をしていた。


 「……今夜王とミシェル様が話し合うと言っていた……。結果によっては……」
 「結果?」
 「───リリィ」
 「──?」
 「オレに拐われてくれる?」
 「───えっ?」
 「ミシェル様が了承する筈がないとは思うけど、万が一トレファス王国に……ミラン殿下の元へと決まってしまったら、オレはリリィを拐って逃げる」
 「え? ちょっと待ってよ何? 何で私がトレファスに?」
 「ミラン殿下が王とミシェル様に話してしまったんだ……リリィが欲しいと……」
 

 ───っっ!!なんて事!!
 
 
 「私はそんな事了承して無い!!」
 「分かってる、これが隣国の王族じゃなかったらそれで済むんだ、だけど相手は王族……下手な事をすれば戦争になりかねない……」
 「──腹たつ」
 「え?」
 「腹が立つって言ってんのよ!! 何が王族よ!! 言ったら私だって王族の端くれよ!! マルタンがトレファスなんかにやられる訳ないじゃないの!!」
 「それは、皆が分かってる事だよ。それでも平和を守るには目を瞑らなくてはいけない事もある」
 「だからってレオ、私は逃げないわよ? 理不尽な事に屈したくないわ。レオが私を拐って逃げてくれるって言ってくれたのは嬉しい。もちろんそれはYESよ!!」

 「リリィ……」
 「だけど、あんな奴らに屈して逃げたくない。戦うわ」
 「リリィ?」
 「私を連れて行けるのは、私より強い人だけよ」
 「リリィ……何をするつもり?」
 「明日、お父様達が何を言ってくるか知らないけどね、私より弱い人に興味はないわ!! そう言うだけ。それだけでお父様は分かってくれるわ」


 そう、何か言われたら戦うだけ。
 それが嫌ならお帰り頂くだけだわ。
 
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...