乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

文字の大きさ
109 / 122

109.とりあえず帰ろう!!

しおりを挟む

 

 「あの、よくわからないのですが……私がトレファス王国に行く事は死んでもありません」


 レオがキッパリと断った。

 
 「──レオ様っ!! でも私とトレファスに来てくだされば王女の婿として王族の一員になれますわ!! それに貴方にツライ思いはもうさせませんし!!」
 「マリア王女、私はツライ事等一つもございません……」
 「レオ様は魔力や契約精霊の事で悩んでらっしゃるのでしょう? 私が一緒に解決して差し上げますから」
 「……セリカ、シエル出てこれる?」

 
 レオは契約精霊の光と闇の精霊を呼び出すと両肩に乗った精霊達をヨシヨシと撫でるとトレファス妹に向かって話し始めました。


 「私の契約精霊はこの二人。誰に聞いたのか分かりませんが幼少時は悩んだりもしましたけど今はこの通り二人にはとても助けられていますし、良い関係を作れています。魔力も完全に支配下にあるのでこの年代では最強とお墨付きを頂いています」


 レオの肩からセリカとシエルがフワリと飛び上がりトレファス妹に近付き

 『アナタ、レオの事勘違いしてるわよ?』 
 『うん、レオはもうそういうのは全て乗り越えたよ?』


 二人は誇らしげに飛び回ってトレファス妹を見下ろしていた。


 「──っな!! なんで!? だってまだゲーム始まってすぐじゃん!? おかしいって!!」
 

 ──ゲーム?? 

 
 『フンッ! でもとりあえずオレはこの精霊姫の……』


 あら危ない。魔のモノが拘束魔法かな? すごい近距離で打ってきたけど拡散しといて、もう一回今度は強めにデコピンをおみまいします!! 


 ベシッ!!


 『──っっな!!』

 すると、やっぱりトレファス兄から魔のモノが飛び出してきました。


 「あ、良かった出てきた。セナ様拘束しますか?」
 「──お願いできますか?」
 「レオはトレファス兄本体の方宜しく。セナ様は妹の方を……」


 そう言いながら心の中で拘束魔法を唱えます。


 【キャプティヴィティ】


 魔のモノはウゴウゴして身動きが取れなくなり大人しくなりました。

 
 「──っっここは?」
 

 トレファス兄が意識を取り戻し周りを見回すとすぐに状況を把握したのでしょう。さすが王子ですね。

 「──マリア、どういう事か説明を」
 「ヒィッ!! お兄様……えと……」
 「マリア!!」
 「だって!! 今だったらまだレオ様の攻略終わって無いだろうし私にだってチャンスはあるはずでしょう!? セカンドシーズンなんてファーストが終わった後の人物になったって、レオ様とは会えないじゃない!!」
 「マリア!! またお前はそんな夢物語を現実と履き違えて!! そんな事で国に迷惑を掛けてどうなるか考えた事があるのか!!」
 「──だって」


 はぁ……とトレファス兄は盛大な溜息を吐き、私達に頭を下げた。

 
 「本当に申し訳ない事をしてしまいました。我が妹ながら頭が痛い……許される事ではないと分かっております。いかなる罰をも受けます」

 
 王子が何度も頭を下げている。簡単に頭を下げる事が出来ない王族なのに何度も何度も。

 
 「……とりあえず出ましょうか」
 
 
 セナ様の一声でとりあえず外に戻る事になった。トレファス兄は妹をキツク睨んで腕を掴んでいる。セナ様の腕には魔のモノが。そして私はレオの手を握って歩きはじめた。

 トレファス妹の口から出てきた言葉が気になる所です。だけど兄の方は夢物語? って言っていたけど……リアルすぎる前の世界の言葉……だよね? あれって……

 え? て事は……トレファス妹も前の世界の記憶が? …………。


 うん。分からないや。
 とりあえず外に出て新鮮な空気吸って、この後どうするか決めてもらって……から考えようかな。
 
 疲れちゃったし……はぁ……。


 ツラツラと頭の中で考えていたらレオがギュッと手を握ってくれた。


 「リリィ、大丈夫だよ。後は皆さんにお任せちゃおう?」

 ペロッと舌を出してイタズラッ子みたいな顔をしてレオが笑った。


 「丸投げ……??」
 「そうそう、丸投げ。対応できる人がしたら良いでしょ。これはオレ達にはどうしようもない案件」


 ギュッと手を握り返してレオを見つめたらフフッと笑ってた。


 「リリィのおかげでオレはオレでいられるようになったんだ。リリィと一緒に居られなくなるなんて考えられない……」


 握り合っていた手を持ち上げてレオは私の手にキスをした。

 
 「──レオ、……私」 
 「ハイハイ、お二人さんも!! 一緒に出ないともう一度ボスと戦う事になるよ!!」


 パンパンッと手を叩く音でハッと意識が外に向いた。

 私!! 今何を言おうとした!?
 セナ様が声を掛けて来なかったら……気持ち……伝えてしまいそうだった……。


 は、恥ずかしい!!


 「あ、すみません。すぐ行きます。リリィ、行こう?」
 「あ、……うん、えへへ……」
 
 
 魔法陣に全員が乗り外に戻れた。

 外に出ると王宮騎士団と王宮魔導士達が来ていてテオ達を中心に話し合いとりあえず王宮に戻る事になった。


 「リリィ達は何で戻る? 一緒に馬車でもいいぞ?」
 「テオ、えーと、私はとりあえず自分で戻るから先に行ってくれて大丈夫よ」
 「レオは?」
 「リリィが残るならオレも残って自分で帰るからいいよ」
 「そうか戻ったら王宮に来てくれ。じゃあ後で」

 
 ヒラリと手を振ってテオが馬車に乗り込んで王宮へと急いで戻って行った。
 トレファス兄妹は騎士団の監視の元馬車に乗り込み、魔のモノは私をジーッと見つめながらセナ様に拘束されたまま去って行った。



 「……なんか疲れちゃったね」
 「そうだね、急に色々あったからね」

 
 隣に立つレオの方を見上げると、ん? とトロリと溶けそうな瞳で見つめてきた。
 
 
 ──そうだった。
 色々あってめちゃくちゃになってたけど……私……レオに……

 思い出した途端に恥ずかしくなって、顔がボンッと熱くなってしまった。


 「リリィ……」


 レオが真剣な顔で見つめてきた。




しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...