乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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118,いざ、ハイムフェムトへ!!

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 出発の準備ができ、アイテムバッグを掛け寮を出る。そしてレオとの待ち合わせの場所へと向かった。

 
 「レオ!」
 「リリィ、準備できた?」
 「うん。あ、そうだハイムフェムトって寒いらしいからさ。コレ使ってね」


 ロウの毛皮で作ったマントをアイテムバッグから取り出し手渡すとレオが固唾を飲んで固まった。


 「……レオ? どうしたの?」
 「あ……ううん。コレはまた凄いアイテムだなと思って」
 「あーロウの毛皮だからかな?ボタンの部分はセルの鱗を加工してて……防寒対策にはなると思うし使ってくれたら嬉しいんだけど……」
 「勿論! ちょっと驚いただけだから。ありがたく使わせてもらうよ」

 
 フワリとレオが笑いアイテムバッグにマントをそっと仕舞った。こういう風に喜んでもらえる時が一番嬉しいんだよね。作りがいがあるってものだよ。

 
 「そういえばロウ様達は?」
 「直接向かうって言ってたよ」
 「成る程。その方が早いか」


 そう言えば……ここからの移動はどうするんだろう?


 「ねえレオ、私達は王宮に戻るんだよね?」
 「そうだね。ハイムフェムトには王宮のゲートから向かうって言っていたからね」
 「王宮には何で行くの?」
 「ミシェル様が王宮へのゲートを学園側に開いてくれるって連絡が来たよ」
 「そっかじゃあ学園に行けばいいって事ね」
 「そういう事だね」


 レオと2人並んで学園へと向かい歩き始める。


 「リリィが以前作ってくれたアイテムバッグが大活躍だよ」
 「コレ楽だよね~。でもさ、レオに渡した分って初回に作ったやつだから容量が不安だよね。大丈夫だった?」
 「あはは、全く問題無いよ。容量大き過ぎて持て余しちゃうくらいだよ」
 「そう? 今までのはなぁ……バッグに対して魔力量を合わせなくちゃいけないタイプだったからサイズは決まっちゃってたんだよね。本当に作りたいのは魔力量に合わせて変化するバッグでさ、使いたい時にそのサイズ分の魔力で使えるって感じで。それだったらその人に合わせてメンテナンスしていけば長く使えるだろうし……」
 「ふふ、相変わらずリリィの考える事って素晴らしいね」
 「そう? どうせ使うならより便利であれって感じじゃない?」
 「まあ、皆そう思ってもなかなか作りあげるのは難しいって事だよ」
 「そうかな……まあ私は色々助けられてるから……えへへ」
 
 
 話しながら歩いていると学園内のゲート場へと到着した。


 
 「お待ちしておりました」
 
 
 ゲート前にはゲート管理人、王宮騎士団等、結構な人数が集まっていた。王宮へのゲートが開いてるからか厳戒態勢が敷かれているのかな。


 「このまま行ける感じですか?」
 「はい。もうゲートは開いておりますので問題がなければこのまま飛んでいただけます」
 「リリィ、大丈夫?」
 「うん。大丈夫。……多分」
 「何か心配?」
 「そうじゃないんだけど……大丈夫かな」


 急に何となく不安がよぎってしまった。実際に漠然とした不安はあると思う。行った事のない国、行った事のない場所に対しての不安。
 
 それでも隣を見るとレオが少し心配そうに見つめてくれている。

 ──うん。大丈夫。私には心強い味方が沢山いる。


 「ごめん大丈夫。行こう」
 「本当に?」


 レオが手を握って目線を合わせてくれる。


 「うん本当に。レオも一緒だし大丈夫」
 

 レオと視線を合わせてニコリと微笑むと、レオも安心したのか微笑み返してくれた。


 「では、お願いします」
 「こちらへ……すでに王宮へと開いていますのでお願いします」


 ゲートに入ると視界が歪み王宮内のゲート場へと移動していた。


 「……相変わらずちょっと気持ち悪いんだよねぇ。コレも何とかならないものか……」
 「リリィ?」
 「あ、ううん。大丈夫大丈夫」

 
 王宮ゲート場にはこちら側にも王宮騎士団が構えていて騎士の1人に促され王宮内の部屋へと移動する。

 部屋に入るとテオ、アディ、ヴィータ、ローラン、イザベル、マティアス、メラニー、コレット、お兄様、リュドが勢揃いしていた。

 テオなんて隣国の件で忙しいだろうに……。

 
 「あれ? 皆集まってどうしたの?」


 驚いて皆の顔を見ながら問いかけるとお兄様が呆れ顔で答えてくれた。


 「……テオからレオとリリィが今からすぐにハイムフェムトに行くって聞いて、急いで皆に連絡したら心配で集まってくれたんだよ?」
 

 うん、確かにね。
 いきなり友達が他国に行ってくる、しかもほぼ交流のない国へ。なんて聞かされたら心配にもなるよね。


 「──そうよ! それにさっきまで隣国の件で色々あったばかりなのにもう次の展開……どうなっているの……」
 「アディ? あ、そういえば話って……」
 「もう! そんな暇はないでしょう?」
 「それもそうか……ごめんねアディ話聞くって言っておいて」
 「それはいいのよ。でも……ふぅ」
 「??」

 
 アディは頭を抱えてブツブツと1人の世界? に入ってしまった。


 「コホン。レオ、リリィ、大変だとは思うけど宜しく頼むね」

 
 テオがアディを落ち着かせる為にアディの背中をポンポンと叩き微笑んでから声を掛けてきた。


 「テオ、何かあればすぐに連絡も行くと思うから大丈夫だよ。ただ少しだけガルシア領の事は気にしておいてくれると助かる」
 「任せろ」


 レオとテオが話している間、私はメル、レティに挟まれて少しだけ茶化されていた。


 「リリィの婚約式は帰って来てからかな~?」
 「え? あれ? 何で」
 「そりゃあ、あれだけ精霊達が騒いでればねぇ」
 「あはは……」

 
 これはかなり恥ずかしいです。全てが筒抜けになってる!! 精霊さん達には厳重注意しておかなくちゃ……。
 

 「どれくらいの期間行くのか分からないけど……無理は絶対にしないで!!」
 「アディ?」

 
 アディの必死な表情に少し驚いた。さっきからアディどうしたんだろう。


 「アディ、大丈夫だよ。レオとライル先生も一緒だしロウ達とオベロンもね来てくれるって言ってるから」
 「オベロン様も?」
 「うん、来てくれるって。だから安心してね。無茶な事はしないって約束するから」
 「……そっか、オベロン様も? でも、あれ?」
 「アディ?」
 「……あ、ううん。それなら安心よね」
 「?? でしょ」


 アディは何かを考え込むような仕草をすると黙ってしまった。どうしたんだろう? 少し気になったがメル達と話をしているとノックが響き扉が開くとお父様とライル先生が部屋の中に入って来た。


 「レオ、リリィ準備は?」
 「「大丈夫です」」


 ライル先生の問いかけに2人同時に答える。とお父様が真剣な顔で声を掛けてきた。


 「リリィ……別にすぐに戻って来ていいんだからね」

 
 お父様ったら心配性なんだから……。


 「大丈夫よ私もしっかりと自分のやれる事やって来ます。だから心配しないで」
 「そんな事言われてもね心配はするよ。娘だからね」
 「お父様……」
 「レオ、頼んだよ。リリィが爆走しそうな時はしっかり止めて」
 「ちょ、お父様!?」
 「ミシェル様お任せ下さい。しっかりストッパーになりますので」
 「レオまで!!」
 「はは、では行こうか」

 
 部屋が和やかなムードに包まれるとそろそろ時間だよと言われ皆とはここで別れを告げた。 
 そしてまた歩いてゲートまで移動する。
 

 「あ、そうだ。お父様にコレ渡しておきます」


 そうそう。忘れないうちに渡しておかなくちゃいけなかったのよね!!


 「ん? コレは?」
 「通信機の新しいやつ」
 「……新しいやつ」
 「そう、今までのはサイズ的にちょっと大きかったし、一つの通信機で相手は特定の一人にしか使えなかったでしょ? だから軽量化してこのまま耳に付けれるようにして手で持たなくてもいいようにしたのと、声が他の人に聞こえないようにしたの。で、ここに魔力を登録した人となら10人までは通信できるように改良しました~」

 
 携帯のメモリー機能みたいな物よね。形的にはイヤホンみたいな感じかな。前までのはそれこそ携帯のようなサイズだったから1人に対して一個必要だったから持ち運びには邪魔だったのよね。
 

 「コレ一つで10人まで魔力登録できるの。前のみたいにココに魔力を流してもらって……」
 「相変わらずリリィの発明品は半端ないよね……」
 「? レオとライル先生にもハイ。これでお互いの魔力流しておいたらはぐれたりしても通信でいつでも連絡できますから」
 「ハハ……」
 「それでもまだ試作状態だからね。不備は出るかもしれないから」


 それぞれに手渡すとライル先生は繁々と通信機を見つめ、レオは「やっぱりリリィはすごいや……」と呟いていた。

 通信機に魔力を流したり等しているとゲート場に到着した。かなりの人数が待機している。

 
 「──行けるか?」
 「はい。ハイムフェムト側からももう開いています」
 「場所は?」
 「ハイムフェムトの王宮内の内密な王族専用の箇所になるらしいです」
 「ふむ。では、ライル、リリィ、レオ。飛ぶ場所は聞いての通り王族専用の場所らしい。粗相のないようにだけ注意してくれ」
 「あちらに着いたらまずは王との面会という事になりそうですね」
 

 ライル先生とレオは冷静に受け応えてるけど、いきなりハイムフェムトの王族達との面会になるの?ちょっと、いやかなり緊張します。作法とか大丈夫か心配だし。


 「何かあったらすぐに連絡を。そして無理はせずにすぐに戻って来てくれ」
 「はい」


 ライル先生を先頭にしレオと共にゲートへ足を踏み入れる。


 「では、ゲートオープンします!!」
 「行ってまいります!!」
 「お気を付けて!!」
 

 お父様の心配そうな顔を見ながら笑顔を見せると、視界がグワンと揺れた。


 「……オェ。コレ本当になんとかならないかな」
 「リリィ大丈夫?」
 「うん、大丈夫」
 「……二人ともいい? もうすぐ着くよ」
 「「はい!!」」


 そして……初めての国外。
 ハイムフェムト王国へ足を踏み入れる。





 
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