119 / 122
119.到着!!そして本題へ!!
しおりを挟むゲート場は静かな部屋の中だった。
その部屋にはファイムフェムトの中枢を担っているであろう人物が一人で立っており、静かに頭を下げていた。
「……初めまして。ハイムフェムト王国へようこそ。私は宰相のルーロンと申します。ここは王族専用の区画にございますのでどうぞご内密に。そして申し訳ありませんがお話は場所を移動してからと言うことでお願い致します」
唇に人差し指を当て静かにして欲しいとお願いをされ、私達はお互いの顔を見合わせて確認を取りながら無言で頭を下げた。
いきなり王族との対面じゃなくて良かったと少しだけ肩の力が抜ける。
「……では、こちらへ」
ルーロンさんは静かに扉を開き私達を暗い通路へと誘った。寒さは感じず一応室内の通路である事だけがわかる状態だった。
どれくらい歩いたのか、かなりの距離を移動したような気もするしそんな事も無かったかのような気もしながら、何度目かの扉を潜りカーテンをヒラリと潜ると王宮内であろう廊下へと出た。
「──ご協力ありがとうございました。これよりハイムフェムト国王への謁見となります。この謁見も一応内密な物となりますので謁見の間ではなく私の執務室にて行います。大変申し訳ありませんがこちらもご協力下さい」
ハイムフェムト側にも色々と事情もあるのかと特に何も思わず頷くとライル先生達も同じように頷いていた。
「こちらです」
一つの部屋の前に到着しルーロンさんはノックをすると少しだけ扉を開いて私達を中へと誘った。
「……ご到着されました」
部屋の中には1人の華奢な女性が立っておりそれ以外には誰も居なかった。
あれ?王との謁見って言ってたよね?
「……ハイムフェムト王国ラミナ女王です。ラミナ様こちらマルタン王国よりお渡になって来られた方々です」
ラミナと呼ばれる女性はフワリと微笑んだ。
人好きのする笑顔だった。
「この度は誠にありがとう。内密に……と協力ばかり仰いで申し訳なかったな」
「発言をお許し下さい」
「良いぞ」
ライル先生がラミナ女王に挨拶をする。
「マルタン王国より参りましたライル・シモンと申します。こちらがレオポルト・ガルシア。こちらがリリアーヌ・ベルナー」
レオと共に紹介され頭を下げると、ラミナ女王はニコリと微笑みそれを制し握手を求めて来た。
「ファイムフェムト王国ラミナ・フェムトだ。宜しく頼む」
ライル先生とレオは驚きを隠せない表情で握手を交わし、私はこの女王様の事好きだな~なんて思っていた。
「ラミナ様、皆さま驚かれていますから……」
「ん? あぁ、すまんな。まだ慣れておらん」
「慣れて……?」
あ、と思ったが思わず疑問が口からポロリと出てしまった。
「……こらリリィ」
ライル先生が少し困った顔で私を見てきたので、エヘヘと誤魔化し笑い。まずかったかな? でもこの女王様だったら許してくれそうな気がしちゃって……。
「ハハ。素直でよろしいじゃないか。慣れておらん……というのも私が国王代理だからだ」
「代理……ですか?」
「リリィ……」
「あ、すみませんっっ」
「良い。ルーロン説明を」
「よろしいのですか?」
「良い。遥々マルタンより我が国の事なぞ捨て置けばいい物を来てくれたのだ。こちらも誠意を持って応じなくてはならん」
ラミナ女王はニコリと笑いルーロンさんに説明を促した。私の粗相も何も無かったようにしてくれる。
「此度の件、どこまで話を聞いておられるかミシェル殿より伺ってはおりますが差異はありませんか?」
ライル先生はマルタンで聞いてきた事を概ね説明すると、ルーロンさんは成る程と頷いていた。
「──このように伺ってきました。なのでとりあえず状況の確認をさせて頂いてから対策を考える……という事になると思います」
「……では……場所を移動しましょう」
説明は? と思ったがラミナ女王とルーロンさんを先頭に部屋の奥にある扉を開き隣の部屋の奥の扉から通路へ出ると更に奥まった方向へと移動して行った。
私達はただ無言で後を着いて行く事しか出来なかった。
──どこ向かってるんだろう。
あ、ロウ達はどうなったかな? もう着いてるかな……オベロンは移動する時には戻るって言ってたけどそのまま来ちゃったな。大丈夫だったかな……。
少しだけ心配になったけどレオがそっと腰に手を当ててくれていたのでホッと力が抜けた。
豪奢な扉の前に来るとルーロンさんはノックをする。少しだけ扉が開くと中から出てきた女性と言葉を交わし、そして頷いて扉を大きく開いた。
「……お入り下さい」
中に入るととても豪華な部屋だった。数名の人が忙しなく動いていたがラミナ女王に気付くと手を止めひざまつき頭を垂れていく。
更に奥と左右に扉があり奥の扉を開くとそこは寝室らしき場所だった。
豪奢な天蓋付きのベッドを囲みエルフらしき数名の人達が真剣な顔で魔法を唱えている。
「……様子は?」
「──変わらず……です」
「……そうか」
ラミナ女王とエルフの1人が言葉を交わしラミナ女王はため息を吐いた。
「──すまないな。……驚かずに聞いて欲しい……こちらにいらっしゃるのが……ハイムフェムト王国ロイ・フェムト王だ」
ラミナ女王がそう説明をするとベッドサイドのカーテンを軽く開いた。
「──っっ!!」
ベッドには枯れ木のように全身が萎びた人が横たわっている。私達は驚きで固まってしまった。
「──これは……もしかして……」
「ライル殿そうです。こちらのロイ王が今回の病の最初の発病患者となります」
ルーロンさんがそう告げるとエルフの1人がこちらに歩いて来た。
「……失礼、こちらの方々は?」
「リーファン、マルタン王国より来て頂いた方々だよ」
「……オルガから話を聞いて来た方?」
リーファンと呼ばれたエルフは怪訝そうな顔で私達に話しかけてきた。
「ええ。厳密にはオルガからではなくリオネルから……ですが」
「リオネル?」
「……リンリンと自身では言っていましたか?」
「ああ、リンリンから。じゃあ貴方はオルガが言っていたライル・シモン?」
「そうですご挨拶が遅れました。ライル・シモンです。こちらがレオ、リリィ、私の生徒達です」
「生徒? 学生さんが何故?」
リーファンは眉間に皺を寄せると訝しげに問いかけてきた。確かに大変な時に生徒が一緒なんてどういうつもりなのかと思うよね。
「リーファンさん彼等は学生ですがマルタンでは特に優秀な者達です。今回の件では彼等の力が必ず必要になると思いますよ」
あら、ライル先生ったらそんな風に思ってくれていたのね。
優秀だって!! レオだけじゃなくて私も優秀だって~。
心の中でヘラヘラしてたらリーファンさんにジトッと見られていた。おっと顔を引き締めなくちゃ……見透かされたかな??
「レオポルト・ガルシアです。きっとお役に立てると思います。宜しくお願いします」
「ガルシア……あの辺境の2種属性の子?」
「はい、そうです」
部屋にいた他のエルフ達も呪文を唱えながら視線だけはレオに向いていた。
レオは本当に優秀だもんね!!
「こっちの子は?」
「あ、私はリリアーヌ・ベルナーと申します」
「──っっえ!? リリアーヌ……?」
「リーファンちょっと来て!!」
「──どうしたっっ!?」
リーファンさんは私が名乗ると驚いたような顔で何かを言おうとしが、他のエルフ達から呼び戻されベッドサイドへと戻って行った。
「……忙しなくてすまないな……実は王は……あの状態になってもう随分月日が経っているんだ」
ラミナ女王が悲しそうな顔で静かに話し始めた。
「ハイムフェムトのエルフ達、魔術師や薬師達も皆がやれる事をやっているが王の病の進行は止められなくてな……国内にもすでに病が流行ってしまっていてもうどうにもならない状態まで来ているんだ」
ラミナ女王の悲しい顔を見ていたら勝手に体が動いて、ラミナ女王の手をガシッと握って力強く言葉をかけてしまっていた。
「──大丈夫ですっっ!! きっと何とかなります!!」
──あ、やばい? つい勢いで動いちゃったけど怒られる系??
ライル先生は呆れ顔。レオはやっちゃったって顔。
ルーロンさんは驚いた表情で固まっていた。
「ハハハ。リリィと言ったか? お前の手は暖かくて安心するな」
ラミナ女王は微笑み私の行動を許してくれた。
「──ありがとう。まだ頑張れそうな気がしてきた」
「はい! 大丈夫ですよ!! 一緒に頑張りましょう!!」
うん。コレは暴走とかじゃ無い。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる