乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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121.問題はそれだけじゃないっぽい!!

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 王宮を出て町にあるルーロンさんの家へと向かう事になり、ファイムフェムトに来て初めて外へと出る事になった。

 初の国外!! どんな所なんだろう!! って町を見たい気持ちはすごくあるんだけど……吹雪で視界ゼロ。前を歩くルーロンさんの姿もぼやけて見えるくらいでついて行くのに必死になっていた。


 「──っっ!! かなり寒い……ですね」
 「雪国ですからね、皆寒いのには慣れていますがここ数年は寒さが更に厳しくなってきていますね」


 そうなんだ。ロウの毛皮のお陰で身体の寒さは無いけど、顔面が凍傷になりそうなくらい外の気温が低くて痛い。

 
 「リリィ大丈夫?」
 「レオ……ロウの毛皮が無かったらヤバかったかも……」

 
 隣を歩いてくれるレオの姿もぼんやりするくらいの吹雪の中をザクザクと歩いているとライル先生が振り返り話しかけてきた。


 「やっぱり気になるから聞くけどリリィとレオのマント……」
 「あ、コレですか? ロウの毛皮のマントなので大分暖かいですけどそれでも顔は凍りつきそうです~」
 「……やっぱり。うーんそうか……できればもう少しだけランクが下の物に見えるようにしないと……」
 「あ……おかしいですか?」
 「いや、下手したら狙われかねないから」
 「えーと……とりあえず後で何か考えます~顔が痛いっっ」


 とにかく顔が痛い。
 ルーロンさんとライル先生はマスクとゴーグルも装備していて、レオはマフラーみたいな物で口元を隠している。
 そうだった、ロウのマントがあるから油断していたけどマフラーとか手袋とかも雪国では必須アイテムだった!! そう思い出すと後ですぐ作ろうと心に決めた。


 「もうすぐ着きますので頑張って下さい」
 「はい~」


 しばらくザクザク歩いていると急にフワリと身体が暖かくなる。

 
 「──ん?」
 『リリィ』


 オベロン!! 来てくれた~暖かい~


 ミニサイズのオベロンがフワリと肩に座ると、顔面がポカポカと暖かくなってガチガチだった身体から少し力が抜けた。

 
 「ふぅ~助かった」
 『共に行くと言っておいて遅れてすまなかったな』


 大丈夫だよ。逆に先に来ちゃったから心配しちゃった

  フフと笑い合うと痛かった顔も癒される。

 
 あ、そういえばオベロンってさファイムフェムトで起きてる事、知ってたんだよね?

 『そうだな』

 なんで──

 「着きましたよ。こちらが私の家になります」


 オベロンに聞きたい事があったけど丁度ルーロンさんの家に到着したタイミングでオベロンがまた後で……と去って行ったので話は後にする事にした。


 「お疲れ様でした。寒かったですよね、すぐに火を入れますので」
 

 ルーロンさんの家は一軒家。
 他に誰か人が居る気配は無い。
 各々がマントを脱ぎキョロリと部屋を見渡した。


 「……誰も居ないのですか?」

 
 ライル先生がマントを畳みながら気になってた事を聞いてくれた。


 「はい、そうですね。両親は別に住んでますし、メイドを雇う方も多いのですが私は全て自分でやりますので……あ、もし必要でしたら王宮から手伝いを回しますが」
 「ああ大丈夫です。そこはお気になさらず。私も自分でやるタイプなので」


 あれ? ライル先生って自分でやるタイプなのね。貴族様だからそこは人が必要なのかと思ったのに意外だわ~。


 「レオとリリィも大丈夫かな?」
 「大丈夫です。私も自分でやれますので」
 「大丈夫です!」


 レオも出来るんだ! そういえば実家の方では野営とかするって言ってたもんね。


 「では、部屋を案内させて頂きますね。この家は魔力と人力と両方に対応しているのでどちらで動かして頂いても大丈夫です」


 そうか……ファイムフェムトは魔力のない人もいるって言っていたから魔力が原動力の物しか無かったら生活するのに困ってしまうもんね。


 「一応、客間はニ部屋ありますのでこちらとこちらをお使い下さい。ここは書斎になるので入らないで頂けたら幸いです。この書斎以外は全て好きに使って頂いて結構です」
 「ありがとうございます」
 「あと食事ですが……町の食堂等は開いている所が少ないかもしれません。なので食材は後程お持ちしますのでお使い下さい」
 
 「分かりました、わざわざありがとうございます。ではレオは私と同じ部屋でいいね? リリィはあちらの部屋を使わせて頂こう」
 「「はい」」
 「では私は一度王宮に戻りますので……」
 「あ、そうだ!! ルーロンさんにコレ渡しておきますね」
 
 
 コレコレ。
 これからやり取りするのに通信機は絶対に必要でしょう。


 「……コレは?」
 「通信機です。登録人数10人までで……」
 「コレが? 通信機……ですか?」
 「?? はい」
 「ルーロンさん、これはリリィのオリジナル通信機なので通常の物とは比べられませんので……」
 「──成る程……オリジナルですか。すごいですね……」
 「──あ、しまった!! ルミナ様にも魔力登録して貰えばよかった……」
 「リリィ……いくらルミナ様が気さくな方でも王女様だからね。そんなに軽々しくお会いしたり出来るものではないよ?」
 

 そうか……そうだよね。
 なんかすごくサバサバしている方だったから、親戚のお姉さん的なポジションに収まってしまってた。ダメダメだわ~。


 「いえ、多分ルミナ様は喜んで登録されると思います。と言いますかこの通信機を欲しがると思いますよ」
 「本当ですか? では、えーと、コレをルミナ様にもお渡し頂いていいですか? で、次にお会いする時に私の方の通信機に登録を……」
 「こら、リリィ調子に乗らない」
 

 ライル先生にチクリと言われてしまった。あぁ、また暴走? しちゃったかな。


 「……すみません」
 「いえ!! 大丈夫ですよ。きっと喜ばれると思いますので。では此方はお預かりさせて頂きますね」
 「はい!! 宜しくお願いします」


 通信機を手渡し説明をして、それぞれに魔力登録を行いルーロンさんは王宮へと戻って行った。


 「……リリィ、君のそういう所は長所でもあるけど彼方は王族の方だからね。特に物を渡すなんて軽々しくしてはいけないよ? 少し気を付けなさい」
 「……はい。すみませんでした」
 「ほんの些細な事がきっかけになって大変な事が起きてしまう事もあるのだからね」
 「はい……」


 確かにライル先生が言う事はごもっともです。
 気を付けよう。


 この後は各々が部屋で荷物を片付けた後リビングに集合してこれからどうするかを話し合う事にした。


 廊下の端にある客間へと入りバッグを下ろしてマントをクローゼットに掛ける。
 部屋はシンプルな作りでベッドとソファ、小さなテーブルが置いてあり魔法具の暖房もあるけど火を焚べる暖炉もあった。


 「ふう、何となく疲れた……」
 『お疲れ様だな』
 「オベロン?」
 『ああ』


 フワリと小さなオベロンが目の前に現れフワフワと飛んでいる。

 ソファに腰をかけて一息付くと先程聞きたかった事をオベロンに問いかけた。


 「──ねえオベロン。ファイムフェムトってなんでこうなっちゃったの?」
 『──いきなり確信をつくような質問だな。しかしこうなっちゃった……とは?』
 「うーん。まずは黒斑病? それに魔力のない人が増えた事とか精霊が減った事とか……」
 『ふむ……』


 気になってた事を一気に聞いてみたけどオベロンは少し考え込んだ風に黙ってしまった。答え難い事……なのかな?

 
 『答え難いとは違うな。まず……そうだな人の世界に対して私達精霊が積極的に介入する事は好ましい事ではない』
 

 好ましい事ではない? 


 『そうだ。人を介してや頼まれて関わる事は……まあ許容範囲なのだが我等が介入する事でなんらかの歪みが生じる事がある。それを阻止する為にもこちらから勝手に介入する事はない』

 
 ──何かがあっても精霊側から手を差し伸べたり助けたりしないって事?


 『……それは時と場合によると言える。基本的には精霊とは傍観者でもある。頼まれた事に対してでも稀に介入し過ぎて人の世が滅びを迎える寸前まで行った事もあるくらいだ。慎重にもなるだろう』 
 「確かに……そうだね」
 『精霊は気まぐれと言われているのもその辺りが理由でもあるな』
 「そっか、出来る事と出来ない事があるから……」
 『そうだな、それでも精霊は好奇心旺盛な者も多いから余計にな』


 成る程ね。好奇心で介入してくる事もあるけど……って事か。


 『黒斑病、魔力の無い者の誕生……そうだなこれはもしかしたら人への試練なのかもしれないな』
 「……試練?」
 『ああ。この世の全ては無限では無いという事だ。これ以上は私の口からは伝える事は出来ない……人が考え動くしかないのだ』
 「──それって結構重大な事じゃ……」
 『少し話し過ぎたな。私は外を見てくるとしよう。ではリリィまた後でな』
 「──ちょっ!! オベロン!!」


 爆弾発言を残してオベロンはフワリと消えた。


 「試練って何よ……」


 黒斑病、魔力……
 よく分からないけどハイムフェムトの黒斑病だけでは無くてもっと大きな事が起きてるって事なのかな。
 

 
 
 

 
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