雨上がる空見上げて

秋本シラキ

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1章

雨上がる空見上げて 1章

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週間天気予報では今日から一週間、傘マークがずらりと並んでいた。俺もこの天気と一緒で、これからしばらく最悪な日々が続きそうな気分だった。



「ほらよ。前の体育の時間にこっそり抜け出して携帯アドレスを盗んできた。」



俺は乱暴に机に自分の携帯を置いた。俺の周りに集まっていたこのくだらない賭けに参加した三人が少し顔を曇らせる。



「おい。そんな怒るなよ。お前が一番漢字テストの点が低かったんだからさ。」



佐藤が「ジコチュウになるなよ」と言わんばかりに口をとんがらせながら言う。



「怒っちゃいねえよ。不機嫌だがな。」



腕を組みなおし偉そうに椅子に寄りかかりながらも、自分で言っていて矛盾したことを言っていると自覚した。



「へぇ、普通のアドレスだなぁ。おい、ちょっと試しにメールしてみろよ。」



興味深そうに山田が携帯を自分の手にとって携帯画面を見つめ、俺に携帯を渡す。




「い、今かよ。」



俺は山田の顔に似向かって顔を引きつらせ、そして右斜め後ろの窓側の席で一人寂しく座る高山直人を横目で見た。



「だって、アドレス見せられただけじゃ高山本人かわからないだろ?」



たかが罰ゲームに、ここまで疑りをかけるのはどうかと俺は問いたかったが、負けた手前強気な発言はできない。



「わかったよ」

そういって俺は右手の親指を器用に動かし始める。



「よし、送信した。」

送信を終え、俺が携帯を畳んだ。



「なぁ、なんて送ったんだよ?」



佐藤がニタニタと笑いながら俺の手に握られている携帯を無理やり奪い取ろうとする。



「別に、普通だよ。『高山君がみんなからいじめられているのをかわいそうだと思って見ている者です。高山君の少しでも力になれたらいいと重い、メールさせてもらいました。よかったら、メル友になりませんか?』そんな感じ。」



「お、高山が携帯を取り出したぞ。」



俺はまた横目で高山のほうを見ると、携帯の画面を見つめながらなんとも複雑な顔をする高山が目に入った。



「本当に、送っちまったな。」



山田がそういうと、他の二人は俯き加減に笑いを堪えていた。



俺はその三人の態度に少しムカッとする。



ブーブー



右手に持っていた携帯が小刻みに振動する。



「もう来たか。高山だろ?なんて送ってきた?」

俺は佐藤を無視して携帯の画面を見た。



「おい、何て書いてあるんだよ?」

不意に中村が横から俺の携帯を奪い取る。



「ああ、やめろよ!」



「『あなたは誰ですか?嫌がらせですか?』だってさ。」



中村が声を出してメールの内容を読み上げる。するともう堪えきれなくなったのか、三人とも大声で叫ぶように笑った。



「お前、何とかしろよ。このままだとメル友になれないぞ。」



「うっせえなぁ、佐藤。」

俺はしかめ面でメールを打ち、高山に送信した。



「ほら、これでどうだ?」

俺は真ん中にいた山田に携帯を渡す。



「『嫌がらせじゃありません。本気であなたの力になりたいんです』」



山田が中村と同じように内容を読み上げ、また叫ぶように笑う。



キーンコーン カーンコーン



「あ、またメールが来たら教えろよな。」



そういって三人は俺の席から離れ、それぞれの席に着席していった。
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