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5章
人と人との間で思う 5章
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「ねえ、飛び降りるんですよね?」
真下を見つめながらまり子が聞く。
「ええ、僕はそのつもりですけど。」
男は当たり前だというように、即答する。
「私、あなたには悪いですけど、あなたが羨ましい。」
男はこの唐突で、自分を侮辱するようなまり子の発言に、怒りを通り越して笑いがこみ上げてきた。
「ハハハ・・・僕も可笑しい人間だと思っていたけど、あんたも僕と同じくらい変な人間だ。僕はね、はっきり言ってあんたが嫌いだ。まあ確かに、あんたの話を聞いているとかわいそうだと思うところもあるが、でも僕が羨ましい?あんた頭可笑しいんじゃないの?ああ!頭の中が混乱してきた。」
男は頭を抱え、しゃがみこんだ。その様子に何が可笑しかったのか、まり子はクスッと可愛く笑い、自分が乗っている段から片足を下ろした。
「私、そこまで人に嫌われたの初めてだわ。なんか嬉しくなっちゃった。」
まり子はこのとき、漠然としたものであったが、この世で生きていける希望を見つけていた。それがそこにいる男であった。男と一緒なら何とか生きていけるかもしれない。どうしてそう思ったのか、自分でもわからない。ただ、「今までの人生で出会ったことのないタイプの人間であったから。」そんな変な理由かもしれない。
「フッ、僕もここまで人を嫌いになったのは初めてですよ。」
「あんた本当に変わった人だ。」と呟き、まり子を睨む。一方、まり子の方はもう片方の足も段から下ろし、そして男のほうへ歩み寄ってきた。
「ねえ。」
「な、何ですか?死ぬんじゃないんですか?」
歩み寄るまり子に向かって、男は動揺して身体を落ちない程度に引く。
「ああ。私、もう死ぬのやめた。私にはそんな勇気もともとなかったのよ。それで私、決めた。私、あなたと一緒に暮らす!」
「は?」
またもや唐突過ぎるまり子の発言に、男はまり子が完全に頭が可笑しい人間だと確信した。
「何言ってんの?あんた。どうして僕があんたなんかと一緒に暮らさないといけないんだよ?第一、僕今から死ぬんですけど。」
「じゃあ、死ねば?」
まり子は「やれるものならやってみろ」と言っている様に、目を細めてほのかに微笑む。
「ああ、言われなくてもやってやるよ。よし・・・」
男はサッと立ち上がり、勢いよく身体を前のめりにさせた。
「どうしたの?早く。」
まり子が急かす。男は下を見つめたまま、飛び降りようとはしない。そんな男に
「やっぱりね、そうだと思ったんだ。」
まり子は心の底から面白いものを見るような、満面の笑みを見せた。
「あんただって、人の事言えないじゃないか。」
男はこのとき、少し自分が情けなかった。
「あなたにまだこの世で生きようと思う気持ちがあるのなら、私と暮らしたほうが私にとっても、そしてあなたにとってもこの先得だと思いますけど?」
男は少し黙り込む。そして、ひとつため息を吐いて片足を段から下ろした。いつの間にかあんな土砂降りだった雨は止み、朝日がマンションとそのマンションの屋上にいる二人を光で包んでいた。
ほとんど人は歩いていなかった。雨で濡れて重くなった服を引きずりながら、二人は住宅街をズルズル歩く。
「そういえば、あなたの名前聞いていなかったですね。」
「釘宮亨。あんたは?」
「星野まり子」
これで会話が途切れた。まり子は少しでも会話をしようと努力しているのだが、二人はあまりにも人格が違いすぎるようだ。
しばらく無言で歩く。そして次に話を切り出したのは、以外にも亨のほうであった。
「あの、今どこに向かっているんですか?」
「ああ・・・えっと、とりあえず私の住んでいるアパートです。」
「そうか、そうですね。それが一番無難かもしれないですね。」
まだまり子と一緒にいることが不服なのだろうか。亨は冷淡な口調で言う。
「あの、そんなに私と一緒にいるのが嫌ですか?」
まり子は恐る恐る聞く。
「ああ、あんまりいたくないですね。」
あっさり、きっぱりと亨は言う。
「でも帰る家もないし、自殺も出来ないんならあんたと一緒にいる意外に仕方ないだろ。」
亨は付け加えるように言う。「私、誘っておいてあれなんですけど、さっきも言ったんですけど靴屋のバイトやめちゃって、それで店長もあんな調子だったから、給料もらっていなくてお金がないです。だから、今月分のアパートの家賃・・・」
「払えないと。」
まり子は申し訳なさそうにうなずく。
「本当に計画性ないですね、あんた。だったら、食べ物とかもないんじゃないですか?」
「ああ・・・はい。食べ物は何とかあります。日常暮らせる程度のお金は前借しておいたから。でも、食べ物も、二人分だと一週間分しかないかも。」
まり子は肩をすくめた。そして亨の顔色を下から見る。
「まあ、仕方ないですよ。グダグダ言ったって始まんないし。これからどうします?」
まり子は亨が前向きに考えているのだとわかり、少し安心する。
「うん、アルバイト探さないといけないですよね。」
亨はアルバイトと聞くと、ギョッとした。
「ぼ、僕はアルバイトできないですからね。」
「そういわれてもね、私一人の稼ぎじゃ二人は生活できないし・・・まあ、探しましょうよ。」
まり子の住むアパートは亨の住んでいたあのアパートからそう遠くない位置にあった。年季の入ったねずみ色のアパート。まり子の部屋はその一階の隅の部屋であった。六畳一間の部屋で、中はさっぱりというよりか、物がほとんど置いていなかった。テレビもなければ、服を入れるタンスもない。あるのは折りたたみ式の小さな長方形のテーブルしか置いていなかった。
「何にも置いてないでしょ?まあ、お金がないから仕方ないけど。」
まり子は腰に手を当て周りを見渡す。
「これから僕もこの狭いところに住まわせてもらうんだから、それを考えたら余計なものがないほうが場所を有効活用できていいんじゃないですか?」
亨が空気の入れ替えに窓を開けながら言う。
「それもそうですね。ああそうだ。」
何かを思い出したかのようにまり子は押入れを開け、ガサゴソ何かを探し始めた。
「何探しているんですか?」
「ちょっと待って。あっ、あったあった。」
そういって、押入れの中から取り出したのは二つの黄色と青の雑誌であった。
「はい、これ。求人雑誌。これで新しいバイト探しましょう。」
パッと机に置くまり子。亨はそれをひとつ手にしてぺラペラとページをめくる。
「どれもこれも、僕を雇ってくれそうにないバイトばっかりだなあ。」
「うーん。私も、どの仕事も人と接しない仕事って全然ないんだよね。」
まり子は押入れを閉め、そのまま押入れの襖に寄りかかった。
「接客業じゃない仕事はどうですか?たとえば郵便局の仕分けとか・・・」
「そういうのもあるにはあるんだけど、そうゆうのも結局社員の人たちと一緒にやる仕事がほとんどでしょ?だから、みんな私に気をとられて私も視線が気になっちゃって、仕事にならなくなるんですよね。」
そういう話を聞くと、まり子も自分と同じ仕事が出来ない状況にあるのだと亨は認識させられた。
「じゃあ、こういうのはどうだろう?」
亨は雑誌をロール上に丸め、腕組みをする。
「ん?」
「せっかく二人一緒にいるんだから、いっそ、同じ仕事を二人同時にやってみるってどうですかね?」
「二人で一緒に?」
「はい。星野さんは人に好かれすぎて仕事が出来ない。僕は人に嫌われすぎて仕事が出来ない。なら二人を掛け合わせたら、ちょうどよくなるのかなあ、と単純に思っただけです。」
亨はそこまで深く考えていなかった。ただの思いつきで言ってみただけでった。
「そうよ・・・そうよ!やってみる価値はあるわ。よし、そうと決まったらどこのバイトでも怖くないわ。ちょっと、釘宮さん、持っている雑誌貸して。」
まり子は奪い取るように雑誌を亨から取り上げ、その場にしゃがみこんで一ページ、一ページ丁寧に見始めた。
まり子はアルバイト探しをずっと続けていた。そして、とっくに雑誌を見るのを見飽きて寝ていた亨が起き上がったときには、まり子はあるアルバイト先に電話をした後だった。
「ああ、起きました?コンビニのアルバイトやることにしましたから。いいですよね?」
まり子は異常なほどに張り切っていた。寝起きの亨はそのテンションについていけない。
「え?コンビニ?まあ、自給は高いだろうけど、うまくいきますかねぇ?」
「大丈夫ですよ。ダメだったら他のバイトを探せばいいですし。さ、すぐに行くって店長さんに言っちゃったからもう出かけましょう。」
そういうと、まり子は立ち上がった。いつの間にか服も違う服に着替えていた
「え?行く?どこに?」
「なに寝ぼけているのよ。面接行きますよ。コンビニに行きますよ。」
亨はまり子に肩を平手で叩かれる。
「え、今からですか?今何時ですか?」
亨は近くにあった目覚まし時計に目をやった。丁度九時だった。
「そうですよ。さ、早く立って。」
亨の腕を引っ張って立たせようとするまり子。
「え、このままの格好でいいんですか?まだ僕の服、湿っているんですけど。」
「大丈夫ですよ。太陽に当たっていれば歩いているうちに乾くって。」
亨はしぶしぶ立ち上がり、まり子を先頭の部屋を出て行った。
真下を見つめながらまり子が聞く。
「ええ、僕はそのつもりですけど。」
男は当たり前だというように、即答する。
「私、あなたには悪いですけど、あなたが羨ましい。」
男はこの唐突で、自分を侮辱するようなまり子の発言に、怒りを通り越して笑いがこみ上げてきた。
「ハハハ・・・僕も可笑しい人間だと思っていたけど、あんたも僕と同じくらい変な人間だ。僕はね、はっきり言ってあんたが嫌いだ。まあ確かに、あんたの話を聞いているとかわいそうだと思うところもあるが、でも僕が羨ましい?あんた頭可笑しいんじゃないの?ああ!頭の中が混乱してきた。」
男は頭を抱え、しゃがみこんだ。その様子に何が可笑しかったのか、まり子はクスッと可愛く笑い、自分が乗っている段から片足を下ろした。
「私、そこまで人に嫌われたの初めてだわ。なんか嬉しくなっちゃった。」
まり子はこのとき、漠然としたものであったが、この世で生きていける希望を見つけていた。それがそこにいる男であった。男と一緒なら何とか生きていけるかもしれない。どうしてそう思ったのか、自分でもわからない。ただ、「今までの人生で出会ったことのないタイプの人間であったから。」そんな変な理由かもしれない。
「フッ、僕もここまで人を嫌いになったのは初めてですよ。」
「あんた本当に変わった人だ。」と呟き、まり子を睨む。一方、まり子の方はもう片方の足も段から下ろし、そして男のほうへ歩み寄ってきた。
「ねえ。」
「な、何ですか?死ぬんじゃないんですか?」
歩み寄るまり子に向かって、男は動揺して身体を落ちない程度に引く。
「ああ。私、もう死ぬのやめた。私にはそんな勇気もともとなかったのよ。それで私、決めた。私、あなたと一緒に暮らす!」
「は?」
またもや唐突過ぎるまり子の発言に、男はまり子が完全に頭が可笑しい人間だと確信した。
「何言ってんの?あんた。どうして僕があんたなんかと一緒に暮らさないといけないんだよ?第一、僕今から死ぬんですけど。」
「じゃあ、死ねば?」
まり子は「やれるものならやってみろ」と言っている様に、目を細めてほのかに微笑む。
「ああ、言われなくてもやってやるよ。よし・・・」
男はサッと立ち上がり、勢いよく身体を前のめりにさせた。
「どうしたの?早く。」
まり子が急かす。男は下を見つめたまま、飛び降りようとはしない。そんな男に
「やっぱりね、そうだと思ったんだ。」
まり子は心の底から面白いものを見るような、満面の笑みを見せた。
「あんただって、人の事言えないじゃないか。」
男はこのとき、少し自分が情けなかった。
「あなたにまだこの世で生きようと思う気持ちがあるのなら、私と暮らしたほうが私にとっても、そしてあなたにとってもこの先得だと思いますけど?」
男は少し黙り込む。そして、ひとつため息を吐いて片足を段から下ろした。いつの間にかあんな土砂降りだった雨は止み、朝日がマンションとそのマンションの屋上にいる二人を光で包んでいた。
ほとんど人は歩いていなかった。雨で濡れて重くなった服を引きずりながら、二人は住宅街をズルズル歩く。
「そういえば、あなたの名前聞いていなかったですね。」
「釘宮亨。あんたは?」
「星野まり子」
これで会話が途切れた。まり子は少しでも会話をしようと努力しているのだが、二人はあまりにも人格が違いすぎるようだ。
しばらく無言で歩く。そして次に話を切り出したのは、以外にも亨のほうであった。
「あの、今どこに向かっているんですか?」
「ああ・・・えっと、とりあえず私の住んでいるアパートです。」
「そうか、そうですね。それが一番無難かもしれないですね。」
まだまり子と一緒にいることが不服なのだろうか。亨は冷淡な口調で言う。
「あの、そんなに私と一緒にいるのが嫌ですか?」
まり子は恐る恐る聞く。
「ああ、あんまりいたくないですね。」
あっさり、きっぱりと亨は言う。
「でも帰る家もないし、自殺も出来ないんならあんたと一緒にいる意外に仕方ないだろ。」
亨は付け加えるように言う。「私、誘っておいてあれなんですけど、さっきも言ったんですけど靴屋のバイトやめちゃって、それで店長もあんな調子だったから、給料もらっていなくてお金がないです。だから、今月分のアパートの家賃・・・」
「払えないと。」
まり子は申し訳なさそうにうなずく。
「本当に計画性ないですね、あんた。だったら、食べ物とかもないんじゃないですか?」
「ああ・・・はい。食べ物は何とかあります。日常暮らせる程度のお金は前借しておいたから。でも、食べ物も、二人分だと一週間分しかないかも。」
まり子は肩をすくめた。そして亨の顔色を下から見る。
「まあ、仕方ないですよ。グダグダ言ったって始まんないし。これからどうします?」
まり子は亨が前向きに考えているのだとわかり、少し安心する。
「うん、アルバイト探さないといけないですよね。」
亨はアルバイトと聞くと、ギョッとした。
「ぼ、僕はアルバイトできないですからね。」
「そういわれてもね、私一人の稼ぎじゃ二人は生活できないし・・・まあ、探しましょうよ。」
まり子の住むアパートは亨の住んでいたあのアパートからそう遠くない位置にあった。年季の入ったねずみ色のアパート。まり子の部屋はその一階の隅の部屋であった。六畳一間の部屋で、中はさっぱりというよりか、物がほとんど置いていなかった。テレビもなければ、服を入れるタンスもない。あるのは折りたたみ式の小さな長方形のテーブルしか置いていなかった。
「何にも置いてないでしょ?まあ、お金がないから仕方ないけど。」
まり子は腰に手を当て周りを見渡す。
「これから僕もこの狭いところに住まわせてもらうんだから、それを考えたら余計なものがないほうが場所を有効活用できていいんじゃないですか?」
亨が空気の入れ替えに窓を開けながら言う。
「それもそうですね。ああそうだ。」
何かを思い出したかのようにまり子は押入れを開け、ガサゴソ何かを探し始めた。
「何探しているんですか?」
「ちょっと待って。あっ、あったあった。」
そういって、押入れの中から取り出したのは二つの黄色と青の雑誌であった。
「はい、これ。求人雑誌。これで新しいバイト探しましょう。」
パッと机に置くまり子。亨はそれをひとつ手にしてぺラペラとページをめくる。
「どれもこれも、僕を雇ってくれそうにないバイトばっかりだなあ。」
「うーん。私も、どの仕事も人と接しない仕事って全然ないんだよね。」
まり子は押入れを閉め、そのまま押入れの襖に寄りかかった。
「接客業じゃない仕事はどうですか?たとえば郵便局の仕分けとか・・・」
「そういうのもあるにはあるんだけど、そうゆうのも結局社員の人たちと一緒にやる仕事がほとんどでしょ?だから、みんな私に気をとられて私も視線が気になっちゃって、仕事にならなくなるんですよね。」
そういう話を聞くと、まり子も自分と同じ仕事が出来ない状況にあるのだと亨は認識させられた。
「じゃあ、こういうのはどうだろう?」
亨は雑誌をロール上に丸め、腕組みをする。
「ん?」
「せっかく二人一緒にいるんだから、いっそ、同じ仕事を二人同時にやってみるってどうですかね?」
「二人で一緒に?」
「はい。星野さんは人に好かれすぎて仕事が出来ない。僕は人に嫌われすぎて仕事が出来ない。なら二人を掛け合わせたら、ちょうどよくなるのかなあ、と単純に思っただけです。」
亨はそこまで深く考えていなかった。ただの思いつきで言ってみただけでった。
「そうよ・・・そうよ!やってみる価値はあるわ。よし、そうと決まったらどこのバイトでも怖くないわ。ちょっと、釘宮さん、持っている雑誌貸して。」
まり子は奪い取るように雑誌を亨から取り上げ、その場にしゃがみこんで一ページ、一ページ丁寧に見始めた。
まり子はアルバイト探しをずっと続けていた。そして、とっくに雑誌を見るのを見飽きて寝ていた亨が起き上がったときには、まり子はあるアルバイト先に電話をした後だった。
「ああ、起きました?コンビニのアルバイトやることにしましたから。いいですよね?」
まり子は異常なほどに張り切っていた。寝起きの亨はそのテンションについていけない。
「え?コンビニ?まあ、自給は高いだろうけど、うまくいきますかねぇ?」
「大丈夫ですよ。ダメだったら他のバイトを探せばいいですし。さ、すぐに行くって店長さんに言っちゃったからもう出かけましょう。」
そういうと、まり子は立ち上がった。いつの間にか服も違う服に着替えていた
「え?行く?どこに?」
「なに寝ぼけているのよ。面接行きますよ。コンビニに行きますよ。」
亨はまり子に肩を平手で叩かれる。
「え、今からですか?今何時ですか?」
亨は近くにあった目覚まし時計に目をやった。丁度九時だった。
「そうですよ。さ、早く立って。」
亨の腕を引っ張って立たせようとするまり子。
「え、このままの格好でいいんですか?まだ僕の服、湿っているんですけど。」
「大丈夫ですよ。太陽に当たっていれば歩いているうちに乾くって。」
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