天使のトリセツ

切羽未依

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空から落ちて来たものは、

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 マジで、シ×タが、現実リアルに、俺の目の前に落っこちてキターーー!!

 俺はiPhoneを、エアコンの室外機の上に置いて、ベランダから身を乗り出し、両腕を伸ばす。

 真っ白な羽に包まれた瞳を閉じた美少女が、俺の両腕の上に落ちた。


 瞬間、ドンッと重くなるのを、俺は覚悟したが、ほら、ラピ×タの、あのシーンですよ!パズ×が、空から落っこちて来たシ×タを受け止めて、おっとっと~ってなるシーン!!――けど、ちっとも、重たくなんなかった。まさに羽の軽さ。

 俺は美少女を抱えて、とりあえず、開けたままの窓から、サンダル脱いで、部屋に入って、お行儀悪いけど、足で掛け布団を上げて、ベッドに寝かした。


 美少女は、目を開けない。


 一瞬、「死んでる?」って思っちゃったけど、ふんわりしたワンピースみたいな白い服の胸は、すうすう、上下してた。

 ラピ×タのシ×タも、意識がない状態で、落ちてきたんだっけか。…よく覚えてねえ~。


 閉じ合わせたまつげ、長~い。
 切りすぎじゃね?って思うくらいのショートヘアの、つやつや黒髪。
 美しいアーチを描く眉。すうっと高い鼻。紅い唇。
 細いな~、ちっちゃいな~って、180cmの俺と比べれば、何でも、ちっちゃいが。
 この子って、天使だよね。この真っ白な羽――でも、服の羽飾りって可能性もあるか?


「んぅぅ」
 天使様が微かな声を上げて、眉根を寄せて、紅い唇を歪めて、美しい顔をしかめた。俺は大慌てする。
「どっか、ケガしてる?!痛い?!」

 天使様は、俺が大声出しても、瞳を閉じたままで、寝返りを打つと、うつ伏せになって、枕の上、顔は横向きで、すやすや、寝続ける。

 俺は体を低くして、背中と羽の接合部を観察する。
 羽は、服に付いてるような気もするし、背中から生えてるような気もする…


 俺は立ち上がると、開けたままの窓から手を伸ばして、エアコンの室外機の上に置いてたiPhoneを取り上げた。窓を閉める。


 動画投稿したら、バズるだろうなぁ…という考えが、俺の頭の中、ぐるんぐるんする。

 でも、フェイク動画って、思われんだろうなぁ…
 そもそも、俺、SNS、やってまへん。
 Xするようなことも、えるようなことも、なんもない、大学生です。


 掛け布団、かけてあげた方が、いいかなぁ?――でも、リアル羽布団、かけてるようなもんか、これ。


 長いスカートの裾から出てる、真っ白な裸足。細い足首。


 寒そうで、足だけは、ちゃんと折りたたんだ掛け布団の中に入れてあげた。

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