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しおりを挟む世間でのイメージが好印象であればスポンサー側の企業も使ってくれる。
「とにかく、マリオが晶さんを気に入ってくれたお陰で何かとこっちに仕事を回してくれる。晶さんに感謝だな」
「………」
楠木さんは軽く笑って語るとシャワーを浴びに行った。
何かと気にくわない点は大いにある。
要はマリオが晶さんを指名したってことは、ブライダルスーツを着たマリオが晶さんの横に並ぶわけで、それはなんともし難い複雑な心境に苛まれる。
晶さんにはじっとしてて欲しいのに周りがそれを許さない──
こうなるから、俺は晶さんが業界の仕事をやることを恐れていたのに……
一人になって考え込むと、少し不満が顔に浮かぶ。
前にふざけながらケータイで撮った、パンツを被った可愛い晶さんの画像を俺は眺める。
晶さんは何をやっても可愛い。
テレビなんかに出て目を付けられたらあっという間にこの世界でむしゃぶり尽くされる。
売れるものは売れる時に売ってしまえ──
これが業界側の鉄則だ。
シャワーの音を遠くで聞きながら、俺の口からは長い溜め息が漏れていた。
・
◇◇◇
「ただいまっ」
仕事から戻るとバイトから先に帰ってきていた晶さんを見つけて早速、ウキウキ気分で抱き締めた。
二日振りの抱擁と、電話で聞いた晶さんの可愛いおねだりの声を思い出し、尚更抱き締める腕に熱が籠る。
「俺が居なくて淋しかった?」
セコい手段に打ってでる。
またあの言葉を言わせるつもりで抱き締めていた晶さんの顔を覗き、そう口にした。
上目使いの晶さんはやっぱり可愛い。
何か言いたげな晶さんの拗ねた目が“淋しかった”そう伝えてくる。
深いことは考えず、自分好みに勝手に解釈して俺はもう一度晶さんを抱き締めた。
帰る途中で立ち寄ったジュエリーショップ。そこで手に入れ、上着のポケットに忍ばせた小さな箱。
俺はそれを然り気無く避けながら抱き締める腕に気持ちを込めた。
「髭から聞いた?」
「ブライダルの話?」
「うん、やる?」
「バイトがあるからって断ったけど…」
迷った風の晶さんをまた覗きこんだ。
「店に直接来てマスターに貸してくれって直談判してた。一週間くらいなら休みくれるって」
「……やっぱやるんだ…」
晶さんは上目遣いで頷いた。
・
シャワーを済ませてベッドに横になる晶さんと語らう時間。
一緒に住むようになってから俺はそれを堪能する。
別々に暮らしていた時よりも気持ちに余裕が出てきたのか、焦って体を重ねなくても晶さんはずっとここにいる。
そんな気持ちが俺の心にゆとりを持たせてくれるのか、晶さんの顔を見つめながら頬を撫で、そっと抱き締めては言葉をつむぐ。
その日一日の出来事を晶さんに話しては離れていた時間をも共有しようとする俺がいた。
「撮影順調にいった?」
「うん、ベテランばっかりだったから取り直しほとんどナシ!」
「よかったね」
「うん、たまにそういうことあるよ。で時間があまり過ぎてどうしようか…とか笑い話になったり」
ロケなんて時間を食って当たり前。だから逆にスムーズに終わっても出演者は戸惑うこともある。
「余った時間に何したの?」
頬をなぞる俺の手を上から握って晶さんは聞き返した。
「少し街中見て回った」
そしてスタイリストさんに教えてもらったジュエリー専門店に寄った。
・
まだちゃんとした物ってわけではないけれど、俺なりの意思表示。
やっぱり口で言うだけじゃなくてしっかりと形にした物も大事だと思うから……
そう思って前に晶さんの指にはめてサイズを計ったアルミホイルの指輪をショップの店員に渡した。
エンゲージリングだとはっきり口にした俺にショップの店員は驚いた顔をまともに見せる。
そりゃそうだ。芸能人で二十歳そこそこ。そんな藤沢 聖夜がエンゲージリングを買いにくる。
舞花との噂がやっと収まった頃にこのネタは立派な芸能スクープになりうる。
ただ…
週刊誌に載ろうが別に構わない。
堂々としている俺にショップの店員は今年の新作だという指輪を並べて奨めていた。
買った指輪は取り合えずクローゼットにしまったままだ。
いつ渡すかは一応考えてはいる。
それまではまだ晶さんに見つからないように……
「なに笑ってるの? 街中見て楽しいことあった?」
「あったよ」
色々企てて含み笑う俺を怪しむ晶さんにそう答える。
「何があったの?」
「ひみつ!」
「なにそれっ、怪しい!教えなさいっ」
「だめ。言わないっ」
俺は笑いながら晶さんを思いきり抱き締めた。
・
待ってて、晶さん──
取り合えず人生一度きりのイベントだから俺なりに特別に演じたい。
ささやかでありながら最高の思い出になるように。。。
晶さんと知り合ったあの日から、一つ一つゴールまで駒を進めていく──
山あり谷ありの道のりをしっかりクリアして行きながら、俺は必ずその先にある到着地点に晶さんを連れていくから──
クスクスと笑いながら胸に抱え込んだ晶さんを覗き込む。
「ねえ、晶さん」
晶さんは胸に押さえ込まれていた顔を向けて俺を見上げた。
「今からエッチする気ある?」
「………」
「どう?」
晶さんは言った俺を暫し見つめてポソリ呟いた。
「夏希ちゃんの腕次第……」
言われて腕が鳴らないわけはない。
その気になるようお前が頑張れって明らかな焚き付けの言葉に俺は俄然ヤル気になるわけで。。。
「よしわかった!俺に任せて!!」
まるでひん剥くように晶さんの寝間着を脱がして遠くに放り投げる俺を晶さんは思いきり笑っている。
瞬く間に裸になっていく晶さんのパンツを最後に脱がし、俺はそれを頭に被った。
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