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35章 予測不能のシナリオ
しおりを挟む「──お、陽が出てきたな。もう少し風送ってっ!」
晴天の下でシャッターが連続で切られ続ける──
カメラマンの指示が撮影スタッフに飛ぶなか、レンズを向けられる舞花はさすがは元グラビアガールだ。
送風機に煽られたベールを上手に操りながら、自分のいい角度で表情を作り、自由にポーズを取っていく。
ポージングを決めての撮影に関しては、俺よりも舞花の方が上手だ。
先輩としては言うことが何一つ浮かんでこない。
色んなドレスを着て青空をバックに、またはプールをバックに──
式場ホテルの様々な場所で撮影が行われていた。
ウエディングのPR撮影なんて男はほとんど出番がないに均しい。ましてや今日は新作ドレスのカタログ撮りだ。
俺の出番はほんの数着のスーツを撮ってとうに終った……
それでもまだ居座るのは──
「………」
俺は椅子に座って一人、頬杖つくと舞花の仕事を眺めながら離れた場所でスタッフと打ち合わせをするもう一組のモデルにちらりと目を向けた。
・
地味婚が主流なんて言われる今──
結婚式自体をしない人も増えている。
そういった客層をどう引き込むか──
企業側もあの手この手で策を練る。
昔みたいになにがなんでも式を挙げさせるように客を勧誘するのではなく、
“無理をしない程度で楽しく思い出作り”
離婚率の高い今だからこそ──
バツイチ、バツニの人でも気軽に挙げられる海外旅行気分の結婚式。
企業はそれをテーマに二組のモデルを採用した。
“ちょっと温泉旅行価格で挙げちゃいました”
そんなお手軽なプランともうひとつ。今、急増中のプチセレブ向けに
“ちょっと海外旅行ついでにお城で挙げちゃいました”
そんなコンセプト。。。
・
アダルトの枠で選ばれた晶さんは目の前にいる舞花のフワフワとしたドレスより、シンプルなマーメイド風のデザインのドレスを身に着けている……
ロングのドレス姿は初めて見る。。。
てか、ドレス姿自体が初めてなんだけど……
隣にいるマリオがキザなせいか、晶さんもなんだか御高く止まって見える──
……気がしてならなかった。。。
「何、不貞腐れた顔してる?」
「別に不貞腐れてなんて居ませんよ」
パイプ椅子に腰かけていた俺を覗き込むようにして楠木さんは笑いながらちゃかしてきた。
仕事だから──
確かに気分は好くないけど仕事となればべつだから……
俺は自分に言い聞かせながら大人な装いの二人から視線を足元に移していた。
「舞花は心配なさそうだな」
他の仕事を片付けてから遅れて現場に現れた楠木さんは、撮影する舞花を見てそう洩らしていた。
モデルもこなしていただけに、可愛いドレスに見合った表情を舞花は上手に作る。
晶さんはどうなんだろう──
今までの仕事は殆どが顔出しNGだ。
まともに写される撮影は、あの北海道での素のままの姿が初めてのはず。
晶さんに表情なんてつくれるんだろうか──
「……なんか心配…」
「……大丈夫だろ、マリオがフォローするらしい。無理させないような撮り方をそれとなく打ち出したみたいだし」
ポソリと呟いた俺に楠木さんが要らぬ事を口にしてくれた。。。
・
フォローするって一体何様気取り?
仕事に厳しい外タレで評判じゃなかったっけ?
「へーへー…実に可愛がられていらっしゃることでっ…」
両腕を頭の後ろに回して思いきりふんぞり反ってやった。
できなきゃ他のモデルに変えてくれればいいんですけど!?
そうなりゃ俺が晶さんをじっくり慰めてやるだけですからっ?
散々胸の内で吐き出しながら、何気に口が尖ってくる……
「まだムクれてるのか?」
椅子を揺らす俺を見て、楠木さんが呆れを含みながら笑っていた……。
俺はそんな楠木さんを下からジトッと睨む。
俺の恨めしい視線に腕組みしながら気付くと楠木さんは前を向いてボソッと口にした。
「ベテランのプロだろ…」
「………」
ええ、確かにプロですけどね……
ですけどね──
向こうも何気に私情挟んでくれてるから……
そう思いながらまたマリオに目を向ける。
撮影の流れを晶さんに説明しているのだろうか?
背を向け密着して話をするマリオの手が晶さんの腰に回っている──
恋人だとはっきり宣言した俺の視線はまるで眼中にないって仕草に余計に腹が立ってきた。。。
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