ラブプレイ~Hな二人の純愛ライフ~

中村 心響

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「なんでって……」

「喧嘩を止めるなら他にいくらでもあるだろ方法が」

「他にって、取っ組み合いは楠木さんと二人で止めたけど…」

「けど。なんだ?」

「口が……」

あの口から吐かれる猛毒を止めたかったわけで……

「口?……口ならお前、簡単じゃないか止めるのは」

「………」

「お前、晶の恋人だろうが。口ぐらいビシッと唇で塞いでやりゃあよかった……」

「………」

「あ、違うか?」

「ごもっともです」

「だろ?」

「………」
その通りだわ。。。

あそこにはメイクさんしか居なかったわけで、二人の関係がバレたって何に構うわけでもない。

てことは、やっぱり……

「たは、……ドジった……」

結局、俺の行いのミスに変わりはなかった。。。

「ああーっ…どうしようっ…帰るのめちゃ怖いっ」

ソファで蹲って身悶える。
一人で思い悩む俺を社長は鼻で笑ってまた、煙草を口に含んだ。

「土下座だ。それでひたすら詫び入れ」

「ああーそんなんで許してくれるかなあの人がぁ…」

悶えながら泣きが入ってくる。

「泣いてる暇があるなら早く行ってこい」

もう帰りたいのか髭はやたらに事務所を追い出そうとしてくる。

「じゃあな、懺悔してお前も水を被ってこい。ハハハっ」

「……っ…」

仕方なくソファから立ち上がった俺を、髭は楽しそうに見送ってくれていた。


マンションに帰る途中のタクシーの中、晶さんを送った楠木さんから連絡が入る。

晶さんの様子を訊ねると楠木さんは受話器口でも長い溜め息を返してきた。

「何を言っても終始無言。ものすごい思い詰めた顔してたぞ……」

「……っ…」

恐ろしい言葉を聞かされた気がした……。

「とにかく、次の撮影に支障がないように──…」

「………」

「なんとか上手くやってくれよ」

「…っ…わかりました…」

言葉を溜めて口にした楠木さんに、俺も畏まった返事しか返せなかった。

通話を済ませた携帯電話を見つめる。

「──……っ…すごく思い詰めた…って…」

いったい何を思い詰めたんだよっ!?

やっぱり恐いっ…

家に戻るのに気が退けるっ
いっそのこと今夜はカプセルホテルに泊まっちゃうか?

いやいや、それじゃまるで鬼嫁に隠し事がバレた腰抜け旦那みたいじゃんっ…

ああーっ…どうすっかなぁっ……

後部座席で尚も頭を抱えて悶絶する俺を、タクシーの運ちゃんがミラーでチラチラ覗き見る。

「何か仕事で問題でも?」

「いやっ…仕事の問題なら簡単に解決するんだけどっ…」

悩む客に気休めの会話を投げ掛けてくる。どうにもならない表情を見せた俺にタクシーの運ちゃんはその後、無言を貫き通した……。

マンションに着いて恐る恐るドアノブに手を掛ける。

そうしたまま動きを止めて、ドアに耳を当てながら中の様子を伺った。

覗き穴を何度も確認する姿はもう怪しい変質者そのものだ。

その動きを繰り返し、中々ドアを開けるまでに至ることができない俺はかなりビビりまくっていることこの上ない。

それでも仕方なく、俺はふうーっと深く呼吸をして思いきってドアを開けた──

「──…っ…」

明かりが付いている室内。入った瞬間に違和感が俺を襲う。

やけにこざっぱりとした空間。

部屋に上がって見渡せば、パンパンに膨らんだ大きなバックに私物を詰め込む晶さんを見つけた。

「……っ…」

やっぱり…っ…

急な目眩に襲われて、なんとか持ちこたえる。まさにそんな感じだ。

楠木さんの言った“思い詰めた…”って言葉で何となく覚悟はしてたけど、実際に目の前にしたらそりゃあショックなんてもんじゃない──

「晶さん!…っ…お願いだからそれは勘弁してっ…」

どうみてもチャックが閉まりそうもない。そんなバックに尚も荷物を詰め込もうとする晶さんからそれを強引に取り上げた。

「──…っ…返してっ…」

「だめだって…っ…頼むからこれだけはやめてっ…」

肩で息を切らしながら睨みつけてくる晶さんに必死で懇願した。



「さっきのことなら謝るからっ…水掛けたことも謝るっ…だからここ出てくのだけはやめてっ…」

「……っ…」

「晶さんっ…頼むからっ…」

どんなに泣きそうな顔を見せても晶さんの表情は変わらない。

一歩も引く様子が窺えず、単純に恐いなんて思っていたことに強い後悔が沸いていた……。

「晶さん…ほんとにっ…さっきのことなら謝るから…」

「触らないでっ…」

「…っ……」

懇願する俺から晶さんは顔を背ける。そんな晶さんの肩に手を置こうとしたら、また冷たく手をはたかれた。

控え室での時とまったく同じだ──

晶さんは明らかに俺を拒絶している。

目の前の晶さんを見つめ、どうしたもんかと俺の口から大きなため息が漏れていた。

「ねえ…晶さん……」

「………」

「ほんとにごめん……」

「謝るならバック返してっ」

「それはムリ……」


目を合わせることのない晶さんは唇を噛んでは何かを堪える表情を覗かせる。

そして取り上げたバックに視線を落とすとチャックを開けたままのそこからは、無理に詰めた晶さんの歯ブラシが覗いていた。

前に晶さんと買ったアニマル柄の歯ブラシセット。

キリンの模様が入ったそれは、まるでペアの片割れと引き離されたことを悲しんでいるようだった。


俺を見ないように背を向けた晶さんの後ろ姿を見つめ、俺の唇が不意に歪む。

しくじった──

本気でそう思う。

胸に言い様のない不安が迫るのは、怒ってしまったのが俺ではなくて晶さんの方だから……

いつもなら俺が勝手に妬き持ちやいて、挑むように喧嘩ふっかけて──

毎回俺から折れて許してたから……

仲直りも何も、はっきりいって俺の一人芝居のようなものだった。

だからこそ今回はどう振る舞っていいかがわからない。

“女が別れを口にした時は腹、括った時だって思った方がいいぞ”

何かを思い詰めてしまった晶さんを見て、何故か昔、風間さんがボヤいた一言が今になって脳裏に甦った。

確か離婚直後の撮影の時に物思いに耽った風間さんが突然放った言葉だ……

離婚……

「……っ…」

嫌なことを思い出した俺の顔色が青を通り越して白くなる。
それと同時に晶さんから奪ったバックをその場でひっくり返して中身を床に落とした。

「ちょっと…なにすっ…」

「元に戻すだけだから大丈夫──」

「……っ!?…」

「あ、晶さんは気にしないで座ってていいよ。俺やっとくし」

にっこり笑って散れた服をまとめてクローゼットに押し込む。

そんな俺の振る舞いはもう無謀も承知の上だった──

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