ラブプレイ~Hな二人の純愛ライフ~

中村 心響

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「はい。すっかり元気になり過ぎたので役を降ろされやしないかちょっと焦ってるところです」

逃亡犯が健康的過ぎるのはイタダケナイ。。。

俺の苦笑いに記者達も合わせて笑っていた。

「胃潰瘍との診断だったそうですが…役作り以外に何か理由でもあったのではと噂になっておりますが……」

お、きたな……


さりげなく話題を振ってきたその記者の首に下がる証明書を見れば、あの“事務所との軋轢”なんてネタを挙げた出版社だ。

「そうですね…」

俺は小さな声で伏し目がちに視線を落とした。

「……今までずっと、それこそオムツも取れない頃からお世話になった社長ですから……」

俺は語尾を震わせながらキッと上を見上げる。

「たとえどんなにコキ使われようとこの先も耐え抜くつもりで頑張ります!」

「こら!何を言うんだ!?打ち合わせと違うぞ!」

後ろに控えていた社長の慌てた声に会場から笑いが沸いていた。

あまりふざけてもいられない。

日頃から何かと晶さんをダシにして俺に有無を言わせてくれない社長への仕返しはこのくらいにして、俺は軽く肩を竦める。

改めてまた深くおじきをすると、感謝の言葉を伝えてちゃっかり番組の宣伝もさせてもらった。



「そろそろ時間になります」

楠木さんが会見終了の合図を伝える。
会場の出入口に促されて背を向けると、その背中に大きな声で問い掛けられた。

「藤沢さん!新しい恋人との噂はほんとうでしょうか!?同じ事務所だとの話も聞かれますが舞花さんとは破局ですかっ!」

一番聞きたかったであろう内容を、早口で言い切った記者に俺は足を止めた。

楠木さんは何も言わせまいと俺の肩を押す。

再び足を前に出すと、俺はそれと同時に振り返った。

「近いうちに報告します。それまで待っていてください文秋さん」

「──……」

社名を名指しされたその記者は眼を見開いて俺を見ていた。

口端で笑みを返すとその記者も何かを悟ったように頷いている。

晶さんと俺の関係に勘づいた特権。

その記者も俺の計画に巻き込んでやるつもり。

一人の記者と芸能人の意味深なやり取りを、他の記者達は小さなメモに急いで書き残す。

その会場を後にして、俺は歩きながら社長と楠木さんに小突かれていた。

「もう会見なんて開かんぞ!こっちはヒヤヒヤしっぱなしだっ」

「いいじゃん。これで一先ずは落ち着くだろうし」

「アホか!あんな意味深にネタを提供しやがって!またマスコミがマンション前に張り付くぞ!」

車に乗ると、社長はカリカリしながらそう怒鳴る。
そしてシートに背中を預け大きなため息を吐いた。



助手席に座った社長はバックミラーを弄り、後部座席に居た俺を映し込む。

目があった途端に社長はニヤリとした。

「まあ……晶が明日から居ない事がせめてもの救いだな」

「──……」

社長の言葉にびっくりし過ぎて声が出なかった……。

居ない?
なんで?

また髭の陰謀か!?

「なんでだよ!俺、今日帰るんじゃんっ…なんでっ…」

泣きそうな声で必死に抗議した。金の亡者は意地悪な笑みを浮かべたままだ。

ハンドルを握っていた楠木さんはそんな俺を笑って肩を揺らしていた。

「……っ…どこまで性悪なんだよクソジジイっ…」


「何を言う、全てお前が企んだ計画のためだ」

「どこがだよ!」

「色々準備を考えたら時間的に間に合わないから早めに向こうに発つことにしたんだよ!撮影陣とも話た結果だ!」

「………」

何もかも俺のせいにすんじゃねえ。社長はそう締め括って煙草に火を点けていた。

「え…発つ、って…マリオとのブライダルの撮影のやつ?あれって一週間後じゃなかった?」

「ああ、マリオとの撮影が一週間後。その前にお前の計画に必要なシーンをいくつか撮っておかないとな」

窓を開けると社長は煙を外に吐いて、な!。と後ろを軽く振り返った。

そして言う。

「劇的な思い出にしたいんだろ? やってやろうじゃないか。あいつが一生忘れられなくなるって言うようなやつを…」

「──……」

社長はそう言って、めちゃ似合わない爽やかな笑顔を向けていた……。


「お前の計画だなんて言われたらそりゃなんも言えないけどさっ……」

ブツブツと不満は駄々漏れだ。
帰りの車の中で、俺はずっと頬を膨らませる。

そんな俺を自宅マンションまで送り届けると社長は車のドア越しにニヤリとした。

「まあ、今日はゆっくり過ごせ!じゃあな」

「………」

近所に聞こえるっつーの!

大きな声で一言残して去った車を見送りながら、俺は呟く。

ゆっくり過ごせと?

そんなゆっくりも出来ないじゃん!明日から海外行っちゃうのにっ…

募る不満を抱えながら部屋のドアを開けた。

「──……あ、おかえり」
明るい部屋と暖かい空気。そしていい匂いと一緒に晶さんの声が聞こえる。

振り向いた晶さんは鍋を持っていた。

「え……何っ!?料理作って待っててくれたの!?てか……バイトは……?」

急いで靴を脱いで晶さんの傍まで行くと聞きたいことを一気に口にした。

「明日の準備もあるから今日はランチタイムだけ手伝って上がらせてもらった」

「……そ、うなんだ……で……料理作ってくれたわけだ……俺のために……」


ここ大事。“俺のために”この強調は俺なりにしっかりしておきたかったわけで。。。



テーブルには、なかなか豪華なオカズの数々が並んでいる。
ロールキャベツに照り焼きチキン。コロッケに唐揚げ……

「……すごい量だね…嬉しいけど……」

そう。これを愛情の量だと考えれば嬉しいに越したことはない。

以前、朝食に作ってくれた目玉焼きとウインナーとは雲泥の差がある。

でも呟いた俺に晶さんは何故か申し訳なさそうな顔を見せていた。

「……え…もしかしてお惣菜…とか…」

恐々尋ねたら晶さんは首を横に二回振る。

「……ちゃんとした手作りだよ」

「……そ…うだよね…」

「マスターのね」

「………」

ちょっとドキドキしながら晶さんの言葉に返したら、そんな返事が上乗せされた。

俺は晶さんを白い目で見る。

「……作ろうと思ったんだよ昨日はっ」

「“昨日”ね。いいよべつに……何も文句はないよ……」

言いながら思いきり肩を落としてテーブルに着く。

「いいじゃん!プロが作った料理なんだからっ!」

「だから何も言ってないじゃん……」

「口で言ってないけど背中で思いきり言ってるじゃんっ!」

「………」

「ほらあ!」

料理を見つめ、顔を上げた俺を指差して晶さんはそう叫んだ。

だって帰った瞬間、愛情を感じたのに……

俺の周りをピンクのお花がめちゃ飛んだのに……

今、なんだかすっごい侘しいんですけどっ…なんて思ったり。。。

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