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しおりを挟む中に入ってカウンターに座りあたしは直ぐに注文した。
「激辛みその担々麺」
「………」
「もう、食べたくて食べたくて!嫌いですか?」
「──…いや、嫌いじゃないけど…」
「ここの餃子、すごいおすすめ」
「じゃあ、餃子と…僕も激辛みそ…チャーシュー麺…」
府に落ちない表情のまま、マリオはラーメンと餃子を注文している。
「………」
「どうしました?」
「いや…ちょっと初めてのパターンなんでね…この後の流れをどうしたものか考え中なんだけど……」
マリオはそう呟いた後、ゆっくりと肩を揺らし始めていた。
小さな笑い声が隣から聞こえてくる──
カウンター前の小さな厨房の中をお爺ちゃんが行き来しながら一人で店を切り盛りしている。
マリオはその姿を眺めながら口を開いた。
「ここは君の行き着けか?」
「はい、お気にいり」
多恵ちゃんと飲んだ後に良く来たお店だ。普段は夫婦で切り盛りしている中、今夜はお爺ちゃん一人しか見当たらない。
「おばちゃんは居ないの?」
「入院しちゃって…はいよ。もやし多めにしたからね」
お爺ちゃんは困ったように眉尻を下げてラーメンを置いた。
目の前に出されたラーメンに手を付ける。
激辛の赤い汁を飛ばしながら麺を啜ると横からの視線に気がついた。
・
「次はラーメンのCMくるんじゃない?」
「なんでです?」
「そのくらい旨そうに食べてるから…“俺のラーメン!”って感じがする」
マリオはそう言って笑いながらあたしの口元を見る。
「んん、いいねえワイルドで。赤い汁が生肉貪った獣みたいだ」
「……獣?…」
「嬢ちゃんの喰いっプリは見てて気持ちいいからなぁ!こっちもついスープ多目に入れちまって赤字だ!」
マリオの発言にラーメン屋のお爺ちゃんも笑っていた。
丼を抱えてスープを飲み干すと満足気な溜め息が吐かれる。
マリオはそんなあたしを見る。
「なるほど…女性喜ばせるにはこういった場所も押さえて置くべきだな。今日は参考になったよ」
「参考?」
「そ、デート先のね」
マリオは何気にウインクした。
「家はどこ?」
車に乗り込むとマリオは聞いてくる。
「今夜は真っ直ぐ送るよ、スッカリ君のテンションに撒かれた──…作戦練り直し」
マリオは肩を竦めて笑いながら言う。
「俺から誘ったのは初めてなんだけどこうもはぐらかされると…」
「え?」
「なんでもない」
独り呟いたマリオはあたしの説明した通りに車を走らせてマンションまで送ってくれた。
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