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3章 誘惑の日々
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「聖夜、社長が呼んでる」
「んー…?」
宝石専門店のCM撮りを済ませた午後、事務所に向かってすぐに社長に呼ばれた。
「おう聖夜、ちょっと頼まれてくれないか?」
「──?」
子役時代から世話になってる事務所の社長は何やら意味あり気に切り出した。
話を聞けばどうやら事務所の後輩タレントを売り出すのに一役かってくれと。
「ちょっとしたスキャンダルでっち上げないと売り出す決め手がないんだよ」
「売り出す決め手?…ふーん…別に構わないけどそんなやり方だと返って芸能生命危ぶまれる確率高くない?潰れる方がオチだと思うけど…」
「その時はその時だ──」
「そんな適当ならあんまり協力したくないけど?」
椅子に深々と座って社長と話し込む。
力を入れたいってタレントなら別だが捨て駒なら力を貸す意味がない。
スキャンダルによっては俺の名前にも大なり小なりキズが付くわけだから。
・
正直、売れないタレントの恋愛沙汰は世間ではまったく相手にされない確率が高い。
それをバネに上がってきたタレントは一人も居ないのが現状だ。
「本人もこれに賭けてるから」
「なる──…堕ちるの覚悟なわけだ?だったら芸能界最後の思い出作りに一役かうかな…」
「ああ、もともとお前のファンでもあるから頼むよ」
「了ー解しましたよ…」
ソファのひじ掛けを押して立ち上がる。
社長に背中を向けて手を振ると事務所を後にした。
事務所の後輩
グラビア出身の女優志望──
藍原 舞花
アイハラ マイカ
24歳──
グラビアでも日の目を見ず…か──
カワイイから短期の恋人役くらい喜んでなってあげるけどね。
芸能界は奇怪な世界だ。ただ可愛い カッコイイ 歌が上手いってだけでは売れない。
それなりに独特なオーラがないと──
売れ続けるのは容易じゃない。
「4、5回彼女のマンションに通えばマスコミが嗅ぎ付けてくれるだろ…」
人気タレント藤沢 聖夜
連日グラビア女優宅にお泊まりデート──
デカデカと載るのは俺の名前。
たぶん彼女の名前は小さく隅にしか週刊誌に出ない。
話題もあっという間に風化するな……
まあいいさ…
ファンだっていうなら大事に遊んでやるよ──
・
そうやって睨んだ通り、マスコミは俺の描いたシナリオを具現化させて記事に仕上げた。
売名行為だと端からバレバレのネタに結局マスコミが追うのは彼女じゃない。
人気タレントの藤沢 聖夜
そっちになるわけで、マンションに押し寄せるマスコミからほとぼり冷めるまで俺は身を眩ます運びとなった──
契約中の仕事は解消済み。
海外にでもバカンスに行って来い、なんて長期休暇くれた社長は言ってくれるけど海外はこの間CM撮りで行ったばかりだし──
俺的には日本でのんびり昼寝して過ごしたい。
どっか隠れ里なんてねえかな~なんて呟いたら
「うちに隠れとくか?」
「社長ん家?」
「ああ、うちならマスコミもそう寄り付かんだろ?」
「なんの圧力掛けようとしてんの?」
「……人聞きの悪い──そうそう権力は無駄に使わん俺は…」
「使うときはガッツリ使うじゃん?」
「………」
確か俺より二つ上の親戚の子が居候してるって言ったよな?
子役からずっと入り浸りだった芸能界。普段、一般人と関わることのなかった俺は年の近いその親戚の奴に興味が沸いた。
・
そう考えると答えは決まったようなもので、マスコミが彷徨けばホテル住まいは何となく気を使うし、社長んとこが一番楽チンかと思い直して俺は社長から聞いた住所を手掛かりにその自宅に向かった。
社長に乗せられて居候を決めたのが運の尽きなのか…
それとも出逢えたことは運のツキなのか──
倉田 晶 ──22歳
一般人と密に接触するのは初めてだな?
何気にワクワクしながら
マンションに向かった訳で…
ただ…
ワクワクと同時にあんなに驚くことになろうとは──
向かった社長宅でドアを開けた途端、親戚の甥っ子は俺の足先から頭の先まで眺める。
黒髪のサラサラなショートヘアー。見開いた大きな瞳がヤケに印象的なそいつは中性的な美少年?
だと思ったのに俺の目に止まったのは男にしてはいやに膨らんだ乳首の存在……。
ノーブラ!?──
甥っ子じゃないじゃんっ!?
思わず指差して聞いちゃったじゃんよ?
「晶さんって、おんな!?」
なんてさ──
夏希なんて名前で人のことは言えない立場だけど
“倉田 晶” なんてどうかいても男としか思わないだろ?
あり得ない不意討ちのノーブラに俺の下半身が反応したっつーの!!
玄関に入れてもらい勃起した下半身を誤魔化す為に、勝手に家に上がりソファに座って足組んだ俺はその場をなんとかやり過ごした──
社長から掛かってきたらしい電話にでて明らかに躊躇いを見せ、いきなり現れた俺に戸惑った様子の彼女。
なんだか拒否されそうな雰囲気を感じてせっかく出逢えたのにそれは勘弁して、なんて思う俺が居たわけで……
勃起した下半身と供にこの美少年のような女をなんとかしたいと思う下心満々の俺が居て──
一目惚れってのを初めて経験して焦った俺なりに、ありったけの言い訳を並べてなんとかこの居候を認めてもらおうとあの時は必死だった──
あなたと一緒にいれるなら、手を出さないなんて大嘘の演技──…俺にはちょろい話だよ…
勝手に上がり込みソファで足組む俺をみる目は少し辛かったけど……。
そこんとこ、いったいいつになったらこの人に教えようか──
毎朝シャワーを浴びて半乾きの髪でソファで二度寝する姿。
鳴り続ける目覚まし時計を止めて、好きになった女性(ひと)の寝顔を暫し眺める至福の時──
…と、むやみに露出された薄着の眠り姫に下半身が猛る日々。
「なにやってんの!?」
「足のムクミ取り」
「………」
思いきり半ケツしてますけどっ!?
吸い付きたくなるほどケツ見えそうな短パンでナマ足持ち上げて自転車漕ぐポーズなんてやられた日にはどうしていいか……
ソファの上でストレッチなんて目の前でされる身にもなってよ、ほんとに…
そんな毎日なんだから手を出さないなんて約束…
守れないよ俺は──
もとい──
守る気なんてさらさらないし…
好きって感情でドキドキする日々は意外に新鮮で、
年頃の男と同居してるのにも関わらずリビングでうたた寝する度胸に毎回度肝を抜かれるけど…
あんまり無防備過ぎるとどうなっても知らないよ──
ねえ、晶さん
どうやって一線を越えようか企む奴がすぐ傍にいるんだから気を付けてくれなきゃね……
そう想いを巡らせながら、ソファで寝息を立てる晶さんをまた少しの間、
眺めていた……
~あの日までの
夏希の苦悶~
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