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ライトが一段とアップされてセットが眩しいくらいだ。

そして指示されるまま、あたしは白い砂浜に足を伸ばして座り、片膝を立てる。

カメラアングルを合わせるように動き回る撮影人。もちろん台詞はないからあたしはただ座ってるだけ…。
オマケ、映るのはウエストから下になるから表情を作る必要もない。

確かに楽と言えば楽なんだけど──

「よし、オケ! じゃあマリオもお願いします」

カメラテストが終わり撮影本番に入るようだ。

後ろからは大型の送風機で涼しげな風が送られてくる。

ボブに緩めのウェービースタイルの髪型を、緩く後ろで結んだマリオのこぼれ髪がその風に煽られて微かに靡いていた──

スーツの袖も足の裾も捲り上げた着崩し方は暖かい気候のラフさをイメージさせる。

裸足で砂浜に上がったマリオは白いスーツで上品さを気取りながらもやっぱりワイルドだ。

マリオは今度売り出す商品を手にしてあたしの足元に座り込んでいた。

今回のCMのコンセプト。
浜辺で恋人同士が戯れながら、男が女にクリームを塗ってあげるシーンを撮るらしい。

ベタつきを嫌う男でも気にならない肌触り。それがこの“塗るストッキング”のウリなんだそうで、春の乾燥時期から肌を守りもちろん夏の紫外線シャットアウト。

毛穴の目立ちを防いでデオドランド効果と加えて極めつけがこれ──

パールの粒子が細かい為に美脚効果抜群なんだとか。

究極の脚メイクブランドとして売り出すらしい。



「はい、じゃあスタンバイ!」

スタッフの声と同時にカチンコが鳴り響く。

撮影が始まったとしても“ただ座ってて。”そう言われたあたしは座ってるしかないわけで……

そう思ってるとマリオはクリームを手に取り伸ばすとあたしの脚に塗り広げてきた──

「───…っ…」

あれっ!?
待って……っ

なんだか厭らしくない?その塗り方っ…

ピクリとしたあたしの動きを察知して、あたしの脚に触れながらマリオはほくそ笑む。

どうやらあたしの顔を見て言いたいことがわかっているらしい。

そんなマリオはあたしに構わずに尚更大胆な動きをし始めていた。

ふくらはぎから膝裏へと両手を上下に撫でるように動かしては妖しげな視線を投げ掛けて口角を緩める。

セクシーとワイルドが売りなのはわかるけど…

「……ちょっ…」

マリオの這い回る指先に思わず小さな声がでた。
太ももの裏に伸びた指が脚の付け根まで微かになぞる。

それがほんの一瞬だけ繰り返される為に待ったが掛けられない。

マリオは確実に確信犯だ──

赤い顔して睨むあたしを見つめるマリオの目は、確かに笑っていた。



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