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しおりを挟む「…で、なんで“二十分も”待ってたんだ?」
英二はネクタイを緩めシャツのボタンを外しながらメイドに退室を促した。
「話があるからに決まってるじゃんっ!!」
「話? 誰がだ?…」
「僕がだよ!!」
「………」
なんだ、結局何時もの八つ当たりか…
呆れついでに小さな溜め息が漏れた。
「そうか…」
英二はカウンターテーブルに用意されていた珈琲を口に含む。
「じゃあお前が好きで待ってたんだ…俺が怒鳴られる筋合いはない。わかったな…」
「──…!っ」
我が侭な王子様の額を指差し牽制すると、英二はソファに腰を下ろし隣で膝を抱え込む不機嫌な王子様の顔を覗き込んだ。
「で、何の話だ?」
「──…っ」
「ん?…どうした?
明後日までの仕事はキャンセルか?」
「もういい…」
「………」
「英二に僕の気持ちはわからない!!…」
「……理央…」
膝を抱き締め、目に涙を滲ませながら理央は一点を見つめたまま肩に掛った英二の手を邪険に振り払う。
英二は払われた手で眉を掻いた。
ふてくされた理央を眺め溜め息が漏れる…
こうなったらほっとくしかない…
長年の付き合いだ。理央の扱いは熟知している。
・
男子高の一年後輩だった理央は少年というにはあまりにも綺麗過ぎた。
キメの細かい白い肌。
華奢な躰のラインは今でも理央の中性的な美しさを補っている。
欲しいと思った理央を英二は手に入れることができた。
二十歳を過ぎているとは思えぬ童顔も手伝い、いまや世界で人気のトップモデルとして活躍している理央。
ただ…
美しい華には棘がある…
ヒステリックで泣き虫で意地っ張り。我が侭で素直じゃなくて、タカビーで…
未だかつて、『ごめん』と言う言葉を口にしたことが、ないとかあるとかないとか…
そんな卑屈な性格になってしまったのは、理央の生い立ちが関係していたのだ…
理央は英二と目を合わさず唇を堅く結び涙を堪える。
我が侭をいいながらも、英二に否定されると理央は直ぐに泣く。
甘えたくても甘えられなかった辛い幼少時代の反動が今になって現れていた…
英二だけは自分の味方でいて欲しい。
優しくして欲しい。
理央は我が侭だなんだと言いながらも、自分に尽くしてくれる英二に安心感を覚えていたのだから。
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